第3章 メッセージ その1 「物語こそが、最高のマーケティングツール」

クロージングへとつなげる展開方法とは?

顧客はどういう心理で、ものを買うのだろうか?

 人がメッセージを伝えるうえで、いちばん効果的な方法とは何でしょうか? その方法とは、ずばり、物語にすることです。
 例えば、人類史上、いちばん多く読まれている物語は「聖書」です。私は残念ながらキリスト教徒でなく、どちらかというと宗教への興味が薄い国で育ったせいか、聖書について詳しくは知りません。しかし、キリストがどのようにして、十字架にかけられ、それがどういう意味を持っているのかは知っています。
 もしも、「聖書」という物語なしに、信者の人たちにキリストへの尊敬を集めるには? 言葉を変えれば、キリストという人物をブランディングするとしたら、どうすればいいと思いますか? 「聖書」という物語なしでは、ちょっと、その方法は考えつかないでしょう。
千年以上昔では、どの国でも識字率は低かったでしょうし、「聖書」が読めなくても、その物語は絵画と聖職者の語りによって、一般の人たちに広めることができました。そういうことを考えても、やはり「物語」こそが、ブランディングするうえで最適なツールであったことは間違いありません。
 実は、マーケティングの世界でも、物語こそが、最強のマーケティングツールだということは知られています。特に企業なりブランドの価値を構築するブランディングの際には、「物語」が強力な武器になりえるのです。
 もしも、Apple社にスティーブ・ジョブスというカリスマが存在してなく、創業から今日に至るまでの逸話がなかったとしたら? それを効果的にブランディングの材料として使わなかったら、Appleの製品に対する顧客の愛情はこれほどではなかったでしょう。新製品のiPhoneを買うために泊りがけでショップに並ぶという光景も見られなかったのではないでしょうか。
 ここから本題のDMに戻りたいと思います。
さて、DMにおいての物語とは何でしょうか?
 冒頭でも語ってきたのは、DMには一貫したストーリーが必要だということでした。このストーリーが物語ということですね。そして、その物語は、当然のことながら「封筒」からスタートするわけです。例えば、自動車メーカーが「車中泊のメーカー用品」をアピールするため、対象車の既存オーナーに向けたDMを送るとしましょう。封筒では、「冒険旅行へ出かけませんか?」というメッセージで、さらに、何のDMかを知らせるためにサブキャッチで「車中泊キット・ラインアップ」としましょうか。対象車がファミリーカーであるなら、封筒には「自然の中で遊ぶ子供の写真」などを入れれば、「そういえば家族で連休にどこか行きたいと思っていた」などと、顧客の心理にすっと嵌るかもしれません。
 封筒で顧客の感情をくすぐったとしても、封入物の小冊子ではいきなり「当社の車中泊キットの紹介」として、商品がカタログのように並んでいるとしたら、どうでしょうか? 何か「売り売り感」が強いように思われないでしょうか?

 ではここで、マーケティングの専門的な話に脱線したいと思います。語りたいことは、ずばり、「顧客はどのような心理でものを買うか」です。
マーケティングでは「販売における3大原則」というものがあります。それは、「①顧客は、売りつけられることを嫌う ②顧客は、感情的な理由でものを買いたくなる ③顧客は、買うことを決めて(または、買った後に) 自分の意思決定を理性で正当化する」というものです。
 あなたがものを買うときのプロセスに当てはめて考えてみてください。例えば、洋品店に何げなく立ち寄ったとします。とりあえず必要なものは何もないので、時間つぶしという感じです。そこに店員がやってきて、この夏のお勧めといって紺のジャケットを勧めてきたとします。あなたは内心、「うるさいな」と思いつつ、相槌を打って話を聞いていると、さらに店員がクロージングに来たとします。あなたは、「ごめんなさい、ちょっと考えてまた寄ります」などと言って立ち去るでしょう。これが、[①顧客は、売りつけられることを嫌う]です。
 店を出ようとしたときに、黒い光沢感のあるジャケットが目に留まりました。あなたは黒い服が大好きで、同じような服を持っているのですが、そのジャケットをひとめ惚れしてしまいます。これが、[②顧客は、感情的な理由でものを買いたくなる]です。
 思わず、ジャケットを手に取り羽織って、鏡に映る自分を見ながら、「いいな」とつぶやいたりします。その時、あなたは一瞬、奥さんが「また、同じような服を買ってきて」などと、嫌味を言うかもしれないと、頭を悩ませます。しかし、襟元のちょっとしたデザインの違いや、ボタンの材質、スタイルの違いなどを見つけて、「これは自分の持っているジャケットとは違う」と、奥さんへの言い訳を考えつつ、結局、レジへと向かうのです。これが、[③顧客は、買うことを決めて(または、買った後に) 自分の意思決定を理性で正当化する]です。
 いかがでしょうか? あなたにも思い当たることがあるのではないでしょうか?

 それでは、先ほどの「車中泊DM」に話を戻しましょう。
 封筒「冒険旅行へ」を受けて、小冊子ではいきなり「車中泊キットの紹介」として、カタログのように商品が並んでいたら、「売り売り感」が強いように思われませんか? ということでしたね。
せっかく、車中泊に対して興味を持って読んでもらえそうなのに、「売りつけられる紙面」が急に現れたら、気持ちがなえてしまいます。では、どうすべきか? その答えは、見る人の感情を動かすことです。
ひとつの鍵は、ビジュアル(写真)にあります。この場合の写真とは、商品写真ではなく、封筒の「冒険旅行へ」と言われて期待を高めている人へ、さらにその気持ちを高めるようなイメージ写真のことです。例えば、広大な星空の下で、子供と一緒に望遠鏡を覗いているとか、河でさかなを釣り上げて興奮しているシーンとかです。こういう写真を見せられたら、「やっぱり自然の中はいいな。子供にも経験させたいな」と感情を揺さぶることができるわけです。その写真の世界観をさらに広げるようにして、コピーでは「行きたいとき、行きたい場所へ、あなたの冒険に予約なんかいらない」という感じで、「車中泊=宿泊施設の予約がいらない」というメリットを訴求し、車中泊をアピールするという寸法です。つまり、[②顧客は、感情的な理由でものを買いたくなる]を後押しするような紙面をつくるのです。
 読者が「車中泊っていいな!」という期待感を高めたところで、「自社の車中泊キットならこんなに快適」ということをメッセージしていきます。例えば、「すべての車中泊キットはあなたのクルマ専用に設計されているから、使い勝手や快適さがまったく違う」と言って、市販の類似品や、自分で工作して作るよりもクオリティが高ことを納得してもらいます。つまり、[③顧客は、買うことを決めて(または、買った後に) 自分の意思決定を理性で正当化する」を後押しするのです。
 この後は、DMにとっていちばん大事なこと。それは、読者(見込み客)にどのようなアクションをしてもらうかです。この場合で言えば、既存クルマオーナーなのですから、購入した販売店への集客が妥当でしょう。よって、DMに封入する挨拶状は販売店からという形にして、できれば担当セールスマンの手書きメッセージなどを入れるとさらに効果があるでしょう。そして、購入への背中を後押しする意味で、「期間限定の割引クーポン」や、購入者特典として、「無料のオイル交換サービス」を付けるといったことも考えられます。
 この章で、なぜ「物語」の話を冒頭でしたのかというと、[②顧客は、感情的な理由でものを買いたくなる]の「感情的にさせる」ことが、ずばりマーケティング(集客)の核であり、それによって人を購買へと繋げることができると言いたかったからです。
 私は、脚本は書いているので、物語の中で、人を感情的にさせることがいかに難しいか、同時にいかに面白いかを実感としてわかっています。DMを作るのも、テレビドラマを作るのも、人の感情を揺さぶるという点では同じだし、そこがいちばんやりがいのあることともいえるのです。ぜひ、楽しみながら、物語を考えてみてください。

効果を上げるために自問自答して欲しい、
注意すべき「3つの問いかけ」

 さて、ここまで読んでいただいた方はDMの可能性を十分に理解されたのではないでしょうか。
ここでは、初心者の方が陥りやすい失敗について、「3つの問いかけ」として語っていこうと思います。

 問いかけ①は「カタログの見せ方と同じではないか?」ということです。
 特に雑誌DMではページ数が多いことから、「自社のカタログを抜粋して入れる」という方がいます。カタログを切り抜き、これをペタペタと貼り付け、印刷会社に発注して「はい終わり!」という感じのものです。このケース、意外と多く見受けられます。中には本当にチラシ状態で、値札のオンパレード。ページを開いた瞬間、すぐにごみ箱いりという感じのものまであります。
 先ほどの章の冒頭でも述べたように「①顧客は、売りつけられることを嫌う」を意識して欲しいのです。カタログを手に取っている人は、すでに「買いたい」「検討したい」という状態の人なので、DMを受けたばかりの人の状態とはかけ離れています。同じ見込み客でもロイヤリティが異なる、つまり、あなたの商品やサービスとの親密感が異なれば、コミュニケーションも変わるし、戦略も変わるはずなのです。

問いかけ②は「次のページをめくりたくなるか?」です。
それを実現させるためには、顧客からいかに共感を得られるかにかかっています。ひとつはストーリー性、物語として流れていくことが必要になってきます。この点は章の冒頭でも述べたとおりです。封筒で提示したテーマが最後のページまで貫かれていること。そして、読者を飽きさせない遊び心のある文章や写真など、エンターテイメントを考えたつくりをしていく必要があります。
 その中でも写真の役割は大きくなると思ってください。例えば、衣料品なら、それを着ているモデルさんによって、着ている商品のグレードまで変わってきます。素人のモデルよりもプロのモデル、さらに外人モデルならグレード感はアップするでしょう。また、素人が撮った写真よりも、プロがしっかりとライティングをし、画像修正をしたものの方が、当然見た目にも素晴らしいものになります。そのクオリティ感がページ全体の印象を大きく変えることになるのです。
前にも述べたように、予算がないからといって、下手に自分で撮るよりもフリー素材を使った方がページ全体のクオリティが上がります。しかし、自分のストーリーに合うものがないと諦めてしまう方も多いでしょう。その場合は考え方を変えて、逆にフリー素材を見つけたら、それを活かせるストーリーを考える、逆の発想をしてください。なぜなら、ストーリーを考えるのはタダですが、新規で写真を撮るとお金が掛かりますし、ストーリーに合ったフリー写真を探すのは手間がかかるからです。ピンとくるフリー写真を見つけたら、それに合ったストーリーを構築する方が簡単なのです。
 例えば、車中泊キットの話で、「広大な星空の下で、子供と一緒に望遠鏡を覗いている」というイメージを述べましたが、そのままのフリー素材を見つけるというのは難しいと思います。しかし、「星空」だけの写真を見つけるのは簡単でしょう。であれば、星空の写真を使って、コピーで「夜空を見上げて、子供と一緒に流れ星を見つけよう」みたいにすれば、望遠鏡がなくても、子供がいなくても、同じコンセプトが成立できます。逆に望遠鏡や子供が登場しない分、洗練されたページに見えるかもしれません。
 このように最初のページではエンターテイメント性というのを特に意識する。写真、イメージには最善の配慮をしてください。そうすれば、読者は期待感を持続させて次のページをめくってくれるのです。

問いかけ③は「売りに走り過ぎてないか?」です。
 「顧客は、売りつけられることを嫌う」という意識を常に持つことが必要です。商品説明に丁寧になり過ぎて情報過多になってしまうこともよくあります。カタログではなく、DMなので商品紹介はコンパクトで分かりやすく説明するようにしましょう。また、紹介したい商品がたくさんあっても、商品はなるべく絞るようにして、他の商品は自社のホームページで見てもらうように誘導するのも手です。
 商品を説明する際にも、売りつけられている感があるものと、ないものがあります。その点については次の項目のテーマになるので、そこで詳しくお話しします。

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