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第45話 花嫁モデル決定

スウィートブライド代表中道諒物語。ウェディングプランナーに憧れ百貨店を退職し起業。でも40歳で全てを失う大きな挫折。そこから懸命に這い上がりブライダルプロデュースの理想にたどり着くまでの成長ストーリー。※この小説はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

2012年6月末。

ーーー スウィートブライド創業の少し前。

メイクアップアーティストの鷲尾響子からようやくブラージュ広告撮影用の花嫁モデル候補が送られてきた。

神戸のモデル事務所に所属する3名。

ひとりは、ハーフっぽく芸能人のスザンヌさんによく似た顔立ちでファッション誌にでてきそうな感じのAさん。もうひとりは、醤油顔のあっさり系で大人の落ち着いた感じのBさん。もうひとりは、目がパッチリしててちょっと若さも残る華やかな感じのCさん。

僕はまず鷲尾響子に電話した。

「僕がパッと見た感じはCさんかな。でもスウィートブライドが目指す大人婚だとAさんの方がいいかなと思うし、Bさんもプロっぽくて悪くないとも思うし・・・、鷲尾ちゃん自身はどう思う?」

「Aさんとは結構一緒に仕事してますよ。先週もある雑誌の撮影で一緒になりました。モデルらしい感じで何でもこなせる人かな。Cさんとはあんまり一緒に仕事をしてないけど、品があってキレイな感じで私はいいと思います。Bさんはどんな仕事も安定してはるし、メイク映えする顔なのでどんな感じでもいけるかなと思います」

「Bさんも悪くはないんだけど、絞るとしたら僕はAさんとCさんかなと思ってるんだけど・・・」

「中道さんがいい方で決めて下さい!」

僕は次に椎名凛子に3人の顔写真をメールで送ってから電話を入れた。

「しぃちゃんどう思う?」

「うーん・・・。スウィートブライドの方向性からいくとAさんかな。でもCさんの華やかさは捨てがたい」

「そうかぁ・・・。大人婚というキーワードでいくとCさんは可愛い感じになりすぎるのかな」

「いや、でも私はCさんがいいかな!やっぱり華やかさって大事ですよ。あとはヘアメイクの仕方でも変わると思うし」

「うん。確かに目をグッと惹かれるのはCさんなんだよね。わかった、ありがとう!」

椎名凛子に背中を押してもらい、僕は再び鷲尾響子に電話をした。

「鷲尾ちゃん、決めた!Cさんでいく。コンセプトに合うように大人婚らしくまとめれる?」

「OK!全然大丈夫ですよ!ヘアメイクでガラッと変わりますし。私に任せといてください」

「ありがとう。じゃ茜さん(Cさん)おさえといて!」

僕は初めて顔写真を見た時の直感を信じて、茜さんにブラージュの花嫁モデルをお願いする事に決めた。

それはこれから長くスウィートブライドの顔になる茜さんとの始まりであった。

2012年7月初旬。

この日、ドレス選びで椎名凛子を姫路に呼んだ。

ドレスショップ「ビバーチェ」にて今回の撮影シーンに合うウェディングドレスを2人でセレクト。

色々悩んだ結果、モダンなブラージュに映える生成りのスレンダーラインとチャペル会場を華やかに演出するプリンセスラインの2点に決まった。

まだ細々とした準備は残っているものの、今日納得のいくドレスを決めた事で今回の広告撮影の一応の大枠は整ったように思えた。

ーーー 翌日、僕は手塚春彦とブラージュにいた。

当日の撮影シーンの最終確認のためだ。
僕が欲しいカットを細かく手塚春彦に説明しながら、ひとつずつ潰していく。

「やっぱり撮影日2日に分けて正解やったな」

手塚春彦はそう言いながら、僕が希望した以外のカットも提案をしてくる。その発想はプロならではのもので、僕はワクワクとした気持ちでその提案を聞いていた。

その後、フォトスタジオに戻り、もう一度スケジュールの細かな調整をしていく。

広告写真というのはあくまでもチラシデザインとしてのひとつの部品にすぎない。

例えば、サイトのトップページに置く画像はパソコンだと横長になるし、スマホだと縦長になる。そしてそれぞれに僕が考えるキャッチコピーが入る訳だから、広告撮影はそういう部分を踏まえて撮る必要があるんだ。

今回、手塚春彦に依頼した理由はそこにある。

広告専門フォトグラファーとブライダル専門フォトグラファーには大きな違いがあるものだ。

手塚春彦の場合は、僕がここの余白にキャッチコピーを入れるだろうと予想してあえて余白を作って撮影したり、後で横長にも縦長にもトリミングできるように余裕のある画角で撮影したりしてくれる。

またそれに加え、手塚春彦はウェブデザイナーとしての僕の手癖を把握しているので、僕だったらこうトリミングしてこう使うだろうと予想した上で撮影をするという気配り心配りが特に優れているフォトグラファーであり、僕には欠かせない相棒のような存在なのである。

ーーー 手塚春彦のフォトスタジオを出た僕は、フラワーショップ「ブレスフローラ」へ向かった。

フローリストの本田さゆりと最終打合せ。
今回の撮影では、チャペル会場の設営はもちろん、披露宴会場での全装花の入れ替えなど当日の動きはおそらく全スタッフの中で最も大変なポジションだ。

特に今回は制作点数も多くかなり大掛かりだから、撮影日に向けて懸命に準備を進めてくれていた。

しかし、ここに来て大変な問題が持ち上がった。

当初ゲストテーブルのメインで考えていた茎の太いカラーがこの度の大きな台風の影響で入荷が困難になっているようなのだ。そもそもゲスト装花はそのカラーを中心に考えてデザインしていたので、肝心のカラーが入荷できないというのは大きな問題であった。

「ギリギリまで産地の状況を見ながら出来る限りの事やってみる・・・」そう言う本田さゆりに僕は全てを任せる事にした。

ここまでくれば、神のみぞ知る、なのである。

スウィートブライドの記念すべき初仕事は、スタッフ皆の想いを結集しながら期待と緊張の中その日を迎えようとしていた。

ブラージュの撮影日は、7月17日に決まった。


第46話につづく・・・

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