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~偉大な素人~ 川喜田半泥子氏



芸術とは本来遊びである。

権勢に媚びるための手段でも
生活の糧を得るための手段でも

あるべきではない。

ー川喜田半泥子



小代焼中平窯の西川です(^^)
今回は陶芸家(趣味人)である川喜田半泥子(かわきた はんでいし)氏について書いていきます。

陶芸家という表現は実は正確ではなく、
半泥子氏自身は「あくまで趣味であること」に拘り、生涯作品を売る事は無かったそうです。

しかし、昭和の陶芸界へ大きな足跡を残した人物です。


変わった雅号ですが
「半ば泥みて(なずみて)半ば泥まず(なずまず)」
という言葉から半泥子とされました。

「そのことに心がとらわれ、こだわりながらも、同時に客観的な目線を持つように」
という意味だそうです。



当時、
『東の
魯山人、西の半泥子』
『昭和の光悦』

とも称されました。



半泥子氏が中心となって結成された『乾比根(からひね)会』は作家同盟であり、メンバーの
荒川豊蔵氏
・三輪休和氏
・金重陶陽氏

全員が後の人間国宝になるという、前代未聞の作家同盟と言えます。



また、昭和の伝説的陶芸家・加藤唐九郎氏とも親交があり、加藤氏から技術面での指導を受けたようです。
(※後にお2人は疎遠になってしまいますが…)




川喜田半泥子展の感想


以下、2021年に行橋市増田美術館で開催された『川喜田半泥子展』の感想です。
文章は当時書いたものをベースにしております。


‐‐‐‐‐


何年も前から本やテレビ(日曜美術館の録画)を見返していましたので、
実物を見れて感激しております!


銀行頭取や電力会社社長などの要職を務めた財界人で、
陶芸はあくまで趣味であった半泥子。
作品は売ることなく 友人達へ分け与えていたそうです。



アマチュアという特殊な立ち位置ですが、
陶芸界へ多大な影響を与えた(今も与え続けている)人物の一人です。



私は仕事・商売として焼き物をしていますので同じことはできませんが、
大変勉強になりました。



個人的な感想ですと、
伝統的な器形や技法を駆使して制作しながらも
(中には かなり独創的な作品もありますが‥!)
特定の産地を背負っていないという、良い意味での軽やかさが素晴らしかったです(^^)


古典に迫るほどの力がある作品なのに、変な気負いが全くない感じ‥。

人生の中でこんな焼き物が作れれば 幸せだろうなと思えます。


展示会の図録




随筆『泥仏堂日録』


裕福な家に生まれ、財界人であり、趣味人である。
生涯作品を売ることが無かったという情報から、上品な人物像を想像していました。

しかし、半泥子氏の随筆を読み いい意味で期待を裏切られました。


半泥子氏、
とんでもない毒舌家だったのです 笑


昭和の
陶芸関係の毒舌家といえば柳宗悦氏・北大路魯山人氏のイメージが強かったのですが、半泥子氏も負けず劣らず。

ユーモアを込めた皮肉と言う面では、ダブルスコアで半泥子氏の圧勝です 笑



↓ 下のセリフ、私が言ったんじゃないですからね! 怒らないでくださいね。 ↓



柳宗悦氏へ

「「民芸品」などと、大層テイのイイ名前をつけて、
柳や桜がありがたがっているゲテモノとかいうものも、元来が台所使いの安物実用品であるだけに、
野心の無い陶工の手で無心に作られているから親しみがあるのだ。」



北大路魯山人氏

「噂によると口は八丁、手は五六丁という事だ。
先祖が山伏の親方で、子供の時から鞍馬山に育ったのだか、どうだか、其処迄は聞き及ばぬが、
僧正坊はだしの大天狗だそうだ。」



ちなみに加藤氏のことは敬意を込めて「唐九郎さん」と呼ばれていて、
当時のお2人の関係性が見えてほっこりしました(^^)


唐津にて、加藤唐九郎氏とムツゴロウについて

「容姿は頗る魁偉で、一見ハゼと鯰の合いの子といったようなもの。
~(中略)~
これを天麩羅と蒲焼にして食べたが、蒲焼は容姿が不気味で食慾を減じ、
流石の唐九郎さんも二ノ足をふんだからおかしい。」

※魁偉→怪異の意か?



これだけ書くと失礼極まりない人物ですが、ユーモアのある文章や
清々しいまでの陶芸への情熱を感じ、晴れやかな気分になれる随筆でした。

 ※ある程度、陶芸への知識がないと難しい文章かもしれません。
どうぞ、ググりながら読んでください(^^; 


半泥子氏の随筆




さいごに






嬉しいと言えば、

幾月もかかって作ったものを、いよいよ窯詰めして、
窯の神様にお神酒を供え、ポンポンと手を打って

「ドウカ、イイモノが焼けますよう、モシ焼けなかったらタタキ壊しますぞッ」

というなり、マッチの火をつける時の嬉しさは、

何といってイイか分からない。


ー川喜田半泥子




2023年7月20日(木) 西川智成


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