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【解説】OpenAI発表[生成AIの進化5段階]とは?-未来がUtopiaかDystopiaかは"最終ステップ"にかかっている

 OpenAIが、生成AIの進化段階の定義をしたことが話題になっています。

 本稿では、その内容の解説に加えて、最終段階の「レベル5」の定義に対して僕が持った疑問(危機感)と理由、そして解決策のさわり、まで述べます(次回に続いていきます)。



Chat-GPT4oはレベル1

 OpenAIは、生成AIの進化段階は、具体的には、生成AIの”頭の良さ”を5段階に分けて、徐々に進化していきます……と説明していて、Chat-GPT4oは一番下のレベル1であり、レベル2に向かって進歩中であるとしています。

 OpenAIは汎用人工知能(AGI)の開発に取り組んでおり、CEOのSam Altman(サム・アルトマン)氏は「2030年代までにAGIが実現する可能性がある」と予測しています。 

 これによって、OpenAIの5段階評価システムの定義によってOpenAIが考える「AGI」とは何か、つまりどんなAIを目指した開発をしようとしているかがわかるため、大変興味深いです。


OpenAIが設定した5段階

 OpenAIが設定した5段階は次のとおりです:

 レベル1:チャットボット:会話型AI ←現在のレベルはここ
 レベル2:推論者:人間レベルの問題解決能力を持つAI
 レベル3:エージェント:自ら行動を起こせるシステム
 レベル4:革新者:発明を支援できるAI
 レベル5:組織マネージメント:組織の業務を遂行できるAI

 直訳だけだとわかりづらいので、僕なりの解釈をふまえて説明しますね。


レベル1:チャットボット

 レベル1のチャットボットとは、今のChat-GPTのようなものです。一定レベルの会話が人とできるレベル。知識は凄いけど、気の利いた話ができるほど頭がいいわけではないのがレベル1です。

 今のChat-GPTは、質問者の質問の意図まで考慮して回答はできないし、数学とかの数字を扱うのも苦手だったりします。あと、ハルシネーションを起こすのも困りものですよね。


レベル2:推論者

 レベル2になると、考える能力が相当高くなります。OpenAIでは、それを「特別なツールを使わずに、博士号レベルの教育を受けた人間と同等の問題解決能力を持つ」と定義しています。

 もっとも、博士号の知識を持つだけでは人間と同等の解決能力は得られませんので、「博士号を取るぐらいの人が持つであろう豊富な知識を持ち、かつ、推論能力が相当進歩したChat-GPT」と考えて頂ければいいと思います。

 推論能力が高いわけですから、当然、数学も解けるようになります。向こうから追加質問してくれて、それにに答えるだけで、いい感じの回答が返ってくるようになりますので、プロンプトの工夫する必要もありません

 レベル2になると、今流行りのプロンプト・エンジニアリングと呼ばれている技法は、ほとんど不要になります。プロンプトのテンプレートもいらなくなると思います。


レベル3:エージェント

 レベル3になると、レベル2が、人に言われたことに対して「単一の」回答をするだけだったのが、「1言えば10わかる」感じになります。

 例えば、「最近、体調いまいちなんだよねぇ」とAIに言えば、

 ①僕のAppleWatchのバイタルデータを分析して
 ②僕の体調をおおまかに把握して
 ③そこから医療データーベースを検索して
 ④該当しそうな体調不良の原因をいくつか特定して
 ⑤行ったほうがいいお医者さん(例えば循環器科)を特定し
 ⑥評判のいい、近くにある病院の候補をいくつか検索し
 ⑦ネットで病院の口コミ情報を収集して行くべき病院を決めて
 ⑧僕の症状の説明を入れたうえで病院の予約入れて
 ⑨「XX月XX日のXX時からXX病院を予約しましたよ」と教えてくれる

といったことを、自分で考えて「自律的に」してくれるAIです。

 以前説明した、自律型AIエージェントの発展形です。

 もっと進歩すると、人が何も言わなくても自律的に行動します。僕の体調の悪さをAppleWatchのデーターや、顔色から把握したら、自らどうすべきか考えて上記のことをしていくれるようになります。

 つまり『攻殻機動隊』のタチコマ

 それをロボットと組み合わせると、まさに、アニメ『攻殻機動隊』のAI搭載戦車・タチコマですね(知らない人、ごめんなさい)。

アニメ『攻殻機動隊』の人気キャラクター「タチコマ」

 タチコマは、アニメ愛好家の中で人気のあるAIロボットです。並列化によって情報共有ができるところが強みで、集まって会議をしたり、哲学的なことを語りあったりします。

 そして、危機に瀕した際は、ヒロイン・草薙素子が率いる公安9課のメンバーを(ときには身を挺して)救うことはもちろん、命令されたことをあえて無視して、人類を救う決断までする。僕はそうしたシーンが大好きです。


レベル4:革新者

 ここまでのレベルになると、創造力を持ち始めます。

 生成AIは、世界中の情報を学習して、僕たちの質問文の入力に合わせて、回答に一番最適な回答を、情報の中から計算して取り出して回答する、と以前説明しました。

 つまり、今のChat-GPTには、「創造」という概念がないため、「創造」ができません(創造らしいものは作れますが、あくまで既存の知識の組み合わせにすぎません)。なぜなら、既存の、人間の知識や情報を元にその学習データを元に、話をしたり、物を作ったりするからです。

 つまり、現時点でのレベル1の生成AIが作れるものは、既に存在するものや人が話したことの組み合わせ、でしかないのです。

 レベル4でAIはイノベーターになる

 ところが、レベル4の段階になると、今まで人が考えたことないもの、作ったことがないものが、作れるようになります

 OpenAIいわく、「新製品の開発や研究プロジェクトの支援」ができるAIと言っていますが、要は、イノベーションを起こすことができるAIということですね。

 これは人を超える存在=AGI(汎用人工知能)という意味ではありません。なぜなら、人間でも創造力を持った人はいますからね。

 でも、改革者、創造性の高い人、は少ないのも事実。そういう意味では、平均的な人のレベルは超えるAIともいえます。

 ここに到達するには、今の生成AIの仕組みだけではできません。今の生成AIの仕組みの根幹は、深層学習と呼ばれる、人間の脳を模倣して動く、Transformerという仕組みです。

 このTransformerには、創造性を生み出す仕組みは備わっていません

 ですので、レベル4を実現するには、Transformerにかわる、あるいは、Transformerと組み合わせて使われる、新しい仕組みが必要になります。

 その「新しい仕組み」は、現在大学や企業で研究されていますので、やがて実用化されるでしょう。


レベル5:組織マネージメント

 レベル4までは何となくわかりました。しかし、レベル5、つまりOpenAIが考える究極の生成AI=AGIが「組織」という概念と定義したことは、少し意外でした。

 OpenAIの説明では、このように記載されています。

  • 最も高度なこの段階では、AIは組織全体の業務を遂行する能力を持ちます。企業の運営や管理業務を自動化し、全体的な効率を大幅に向上させることが可能です。

  • 企業運営の自動化や大規模なプロジェクト管理ができるようになります。

 こう説明されると、ピンときますね。

 つまり、OpenAIの考えるAGIは、人とコミュニケーションしたり、指示したり、マネージメントすることができるAIということです。

 わかりやすく人に例えると、会社の社長や部長の職務がこなせるAI、ということです。

 つまり、レベル5のAIができると、会社の経営をAIと一部の人間が行い、その下に「AI部長」がいて、その指揮下にAIロボットと人間の従業員が働くのが会社の形になるということです。

 これって、僕が以前記事に書いた世界そのものですね。


AI組織とベーシック・インカム

 同記事で、僕は会社の構成が将来このようになると書きました。

 ①マネージメント「経営陣」:数名
 ②ビジネスを組み立てる「クリエイティブ・ディレクター」:10%
 ③「クリエイティブ・ディレクター」に構想に従いAIを使いこなす
  「AIスーパーバイザー」:10%
 ④訓練されたAIシステム:60%(従業員に見立てた数)
 ⑤AI周辺の仕事をす非正規社員で構成される「AIサポーター」:20%

 まさに、OpenAIも同じことを言っているわけですね。

 OpenAIのCEOである、サム・アルトマンは、もともと、ベーシック・インカム論者として有名です。ベーシック・インカムとは、無条件で一定額の現金を定期的に支給する制度、いわば生活給付金のようなものです。

 彼が立ち上げた「Worldcoin」は、人の光彩(瞳)をデジタル証明書にするというプロジェクトですが、その目的は、将来、ベーシック・インカムをデジタル通貨で個人に配るために、本人確認を光彩認証でするためのものではないかと言われています。これも以前記事に書きました。


ステップ5の定義←僕は、そうは思わない

 OpenAIのステップ5は、いわゆる「AGI:汎用人工知能」のことです。

 彼らも「AGI」を作ることが企業のビジョンだと公言しています。

 このステップ5の表現を読み取るに、AGIとは、IQ(知的推論能力)がヒト同等かそれ以上のAIであると定義しています。

 もちろん、マネージメントをする機能と言ってるわけですから、組織の中にいる人間(いやAIかもしれませんが)とのコミュニケーション能力も高いので、IQだけでなく、ある程度の感情理解も入ってるとは思います。

 しかし、そのトーンは、最近のAIを図るベンチマークでも、大学受験問題が解ける、推論能力、数学問題、論理的思考...といった、IQを図るものばかりであると同様に、かなりIQ的な表現をしていると感じています。

しかし、未来のAIってIQだけでいいのでしょうか?AGIとはIQの高い、IQで人間をも上回る、そんなAIであるべきなのでしょうか?

 僕は、頭がいいだけのAIではダメだと、以前から思っています。それどころか、危機感さえあります。


IQだけが高いAI=ターミネーターの世界に

 それは、将来OpenAIかどこかが開発するであろうAGI(汎用人工知能)を、IQだけが高いAIとなるなら、「AIが人類を、地球破壊の元凶と認識し、攻撃し、結果、AIが人類を征服する」という「極論」が発生してしまう可能性がある、という点です。

 そう、ターミネーターやブレードランナーの世界を、です。

※先述のように、サム・アルトマンはベーシック・インカム論者としても有名であることから、彼自身やOpenAIが、決してディストピア的な未来をよしとしているわけではない、という点は、補足しておきます。


EQの高いAGIを創るのは日本人

 僕らの、日本人が考えるAGIってドラえもんとかですよね? ドラえもんってただ頭のいいだけのAIロボットでしたっけ? 違いますよね。

 ドラえもんは、のび太に寄り添い、のび太を勇気づけ、時には叱り、励ますことのできる、いわゆるEQ(EQ(Emotional Intelligence Quotient:感情知能指数)がとても高いAIロボットです。

 つまり、汎用人工知能は、IQだけが高いわけでなく、相手の感情を理解し、マネージする能力であるEQも、同時に高い存在でなると僕は思っています。

 そして、EQの高いAGIを世界で一番作れるのは、ドラえもんを知っていて、空気が読めることに関して、有数な民族たる日本人だと、僕は思っています。

 このAIとEQについては、今後のAGIを語る上で、大変重要なことですので、追って記事にしたいと思います。



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