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日本には「ホルモン文化」がこんなにあった!気になる「ご当地ホルモン」24選

ホルモン文化は、日本各地で発展している。家畜の内臓を使ったホルモン料理は、その土地ならではの調理法で食べられていて、それぞれに特徴がある。

今回は「日本縦断ホルモン巡礼」のイメージで、ホルモンマニアの私が気になる「ホルモン文化」「ご当地ホルモン」をまとめてみた。

私の研究資料としてメモしていたものだが、気づけば、狂気の15,000文字となってしまった。目次を見て、気になるところを読んで活用してほしい。

それでは、ホルモン文化を探る旅に、出発だ!


<北海道>

1:北海道旭川市「塩ホルモン」と「ホルモンラーメン」

◎豚を使う(牛を使わない)

「塩ホルモン」は、北海道旭川市発祥のホルモン焼きで、炭火七輪で焼いて食べられる。ホルモンは、塩味の調味料に漬け込んだ豚の内臓肉で、牛を使わないことが特徴だ。

◎養豚業から生まれた食文化

旭川市は「豚トロ」の発祥地でもある。昔から養豚業が盛んで、養豚団地もあったそうだ。新鮮な内臓肉が入手できたからこそ、素材そのものをごまかさない、シンプルな味付けの塩ホルモンが生まれたのだろう。

大きめのくし切りに切られた玉ねぎと一緒に焼くところも、北海道ならではだろうか。関東でも、同じような形の玉ねぎと一緒に炭火七輪で焼くホルモン店があるが、この流れなのかと思ってしまう。

◎「モルメン」と「ホルメン」

旭川市には、ホルモンをラーメンの上にトッピングした「モルメン」「ホルメン」などと呼ばれるメニューを提供する飲食店もある。

2:北海道室蘭市「室蘭やきとり」

「室蘭やきとり」「やきとり」という名であるが、鶏肉ではなく豚肉を使う。玉ねぎと豚肉を交互に刺した串焼きにし、甘口のタレ洋からしをつけて食べる。

出典:農林水産省『うちの郷土料理』
室蘭やきとり 北海道

「洋からし」は、室蘭やきとりの必須アイテム。「やきとり+洋からし」は、おでんやトンカツにつける文化から始まったとか。

◎「豚肩ロース」と「玉ねぎ」

室蘭やきとりは、長ねぎではなく「玉ねぎ」を使う。室蘭やきとりの「ねぎま」は「豚肉」と「玉ねぎ」のことだ。北海道で多く生産される玉ねぎは、長ねぎよりも安く、豚肉との相性が良いため、このスタイルが定着した。

埼玉県東松山市のやきとりは「豚カシラ」が使われるが、室蘭やきとりでは「肩ロース」を使う店が多いとか。ホルモンではなかったことが意外だった。

カシラもホルモンの仲間
食肉の分類では、首から上はすべて内臓肉の扱いとなるため「カシラ」もホルモンの仲間だ。

◎豚皮で軍靴をつくり、残りの肉が食用に

昭和初期、多くの屋台では野鳥を串焼きにして食べていたが、鳥肉よりも安かった豚肉に切り替わっていった。

豚肉が安かった理由は、昭和12年の日中戦争にある。食料増産のために農家が豚を飼うようになり、全国でも豚皮で軍靴をつくるために、養豚が奨励された。皮を取った後の豚肉は、安く流通していたので、地元の屋台では、豚肉が多く取り扱われるようになったそうだ。

鶏肉が広く普及したのは昭和30年代。戦後、大量生産に向くブロイラーが導入されてからだ。それまでは、ほとんどが豚肉の串焼きだった。

◎鉄の労働者を支えた

室蘭市は、日本製鉄や日本製鋼所の工場が並ぶ「鉄の街」としても有名だ。室蘭やきとりは、工場勤務で疲れた労働者を支える食文化として発展した。

■豚肉なのに「やきとり」と呼ぶ食文化

全国には、鶏を使わないのに「やきとり」と呼ぶ地域があり「日本やきとり7大都市」と呼ばれている。北から南、日本中に点在していることも気になる。

日本やきとり7大都市
北海道美唄市、北海道室蘭市、福島県福島市、埼玉県東松山市、愛媛県今治市、山口県長門市、福岡県久留米市

3:北海道美唄市「美唄やきとり」

美唄びばいやきとり」も、日本7大やきとりのひとつ。こちらは本当に「鶏」を使ったやきとりだ。

◎一串に「複数の鶏モツ」と「玉ねぎ」を刺す

「美唄やきとり」の特徴は、一串に、皮やレバー、ハツ、砂肝、内卵(産み出される前の卵)など、さまざまな部位が刺してある。「串元には皮、最後にモモ肉を刺す」という決まりがあるようだが、それ以外は、どんな組み合わせでも自由。お店によって、いろいろなバリエーションがあるようだ。

出典:農林水産省『うちの郷土料理』
美唄やきとり(びばいやきとり)

味付けは塩こしょう。北海道のほかの肉文化と共通して「玉ねぎ」を使う点も特徴的だ。農業が盛んな美唄市周辺は、玉ねぎの産地でもある。長ねぎよりも安く、質の良い玉ねぎが入手できることが理由のようだ。

◎炭坑労働者に人気

美唄やきとりの発祥は、昭和30年頃。やきとり屋台を営んでいた人物が、当時廃棄されていた精肉以外の内臓や皮を、もったいないと思って「モツ串」にした。これが、炭坑労働者をはじめとした地元の人から人気を博し「美唄やきとり」として広まった。

私は、この話の「炭坑労働者」というところに何かを感じる。ホルモン文化を調べていると、何かと「炭坑(炭鉱)労働者」の話が出てくるのだ。ホルモン文化を学ぶ上で、とても重要な要素のような気がする。

<東北>

【番外編】岩手県奥州市「牛の博物館」

東北エリアで立ち寄りたいのが『牛の博物館』だ。注目は「ウシの胃袋標本」。牛の胃袋の内部構造を立体的に観察できる。牛にある「4つの胃」のつながり方や、家庭の浴槽ほどあるといわれる大きさを、この目で確かめたい。

お土産の「牛の胃袋Tシャツ」も気になる。

心ときめく講座なども開催されていて、過去には「豚足で骨格標本を作ろう!」というワークショップもあったようだ。いつも食べている豚足が右か左か、前足か後足なのか、すぐに見分けられるようになりたい。

4:宮城県気仙沼市「気仙沼ホルモン」

「気仙沼ホルモン」は、宮城県気仙沼市で食べられてきた豚のホルモン焼き。宮城県といえば牛タンのイメージが強いが、これは豚ホルモンの文化だ。

◎ニンニク味噌の豚ホルモン

気仙沼ホルモンの特徴は、
・生の豚内臓を使う(ボイルしない)
・白もつ(小腸・大腸・ガツ)だけでなく、赤もつ(ハツやレバー)も使う
・ニンニク味噌だれに「白もつ」「赤もつ」を一緒に漬け込む

◎ホルモンのお供は「千切りキャベツ」

ホルモンのお供は「千切りキャベツ」。ニンニクたっぷりの味噌だれに漬け込んだ豚ホルモンを炭火七輪で焼き、千切りキャベツと一緒に食べる。お好みで、キャベツにはウスターソースをかけるスタイルだ。

◎港町の漁船員から人気に

気仙沼は港町だが、かつて食肉処理場もあった。気仙沼ホルモンの原型は、市内にある精肉店の社長が、韓国出身の人から教えてもらったニンニク味噌で味付けをしたホルモン焼きだという説もある。この味に感動して店を開く人が現れ、漁船員らに広まり人気となった。

漁船員らの長期にわたる船上生活での野菜不足を考えて、ホルモン焼きに千切りキャベツを添えて出していたことから、このスタイルとなったようだ。

5:宮城県岩沼市「岩沼とんちゃん」

「岩沼とんちゃん」は、宮城県岩沼市を中心とした地域で食べられている豚のホルモン焼きだ。2000年に岩沼市営食肉処理場が廃止されたことに加え、経営者の高齢化もあって「とんちゃん」を扱う店は減少しているらしい。

◎生の豚モツをジンギスカン鍋で焼く

生の豚のモツを用いたホルモン焼きを「とんちゃん」と呼び、ジンギスカン鍋で焼く。タレは店によって、醤油系、味噌系に分かれるようだ。

◎戦後は「豚タン」が主流だった

宮城県仙台市の東一番町商店街では、第二次世界大戦後に、豚のホルモン焼きを出す「とんちゃん屋」が数多くあり人気だった。現在の仙台名物は「牛タン」だが、当初は「豚タン」が主流だったようだ。

以前、宮城県在住の人に「牛のホルモンはめずらしい。あまり出てこない」と言われてびっくりしたことがあるが、やっと理解できた。前項の「気仙沼ホルモン」に加え「岩沼とんちゃん」も豚ホルモンだ。北海道から順にホルモン文化を追ってきたが、北のエリアは、圧倒的に豚ホルモンの文化が強いのだ。

参考:Wikipedia『岩沼とんちゃん

<関東>

6:埼玉県東松山市「やきとり」

埼玉県東松山市の「やきとり」は、日本7大やきとりのひとつ。「やきとり」と呼ばれるが、鶏肉ではなく豚のカシラ肉を使うことが特徴だ。

◎「豚カシラ」と「長ねぎ」

東松山市の「やきとり」は、豚のコメカミから頬にかけてのカシラ肉を使う。交互に刺すのは「長ねぎ」だ。炭火でじっくりと焼き、塩味で提供される。好みでつける「味噌だれ(ニンニク唐辛子味噌)」は、店によって、個性があるようだ。

◎食糧難の終戦後に誕生

東松山市の「やきとり」は、食糧難の昭和20年代に誕生。市内にあった食肉処理場の仕事を手伝っていた韓国出身の人たちが、捨てていた豚の頭をもらい受けて肉をこそぎ落とし、串に刺して炭火で焼き始めたのが始まりだ。頭肉は肉を取り出すのが面倒で、味が良いのに、昔は捨てられていたようだ。

味噌だれは、韓国でよく使われる「コチュジャン」を参考にしているらしい。

■ 埼玉県は豚肉文化が強い

埼玉県北部から群馬県にかけては、豚肉の生産が盛んな地域だといわれる。北海道、東北と続いて、埼玉県も豚肉文化が強いエリアだ。

7:埼玉県秩父市「豚ホルモン」

埼玉県秩父市も、豚ホルモンが有名だ。
昭和30年頃の高度成長期に、大阪から来た工事関係者がホルモン文化を持ち込んだそうで、秩父にはたくさんのホルモン焼き店が集まっている。

関東の水瓶でもある市内の二瀬ダムの建設により昭和30年頃に、大阪から来た工事関係者が秩父市の押堀先にホルモン焼き屋を開業したのが『秩父ホルモン焼き』の始まりです。

秩父ホルモン・マップ「元祖秩父ホルモンの由来」

単にホルモン文化を持ち込むといっても、新鮮な内臓肉がなければ、この文化は発展しない。埼玉は豚肉の生産が盛んだということも大きなポイントだ。

さいたまの食肉市場は、1日に処理する豚の頭数も多い。

東京食肉市場(品川):牛600頭/日、豚900頭/日
さいたま市食肉中央卸売市場:牛250頭/日、豚1,000頭/日

東京食肉市場「お肉の情報館」
さいたま市食肉中央卸売市場

8:東京都「食肉市場跡地に残る肉食文化」

東京には、これ!といった「ご当地ホルモン」はないが、昭和以前にあった食肉市場跡地には、肉食文化の名残がある。

日本の北側は、豚の話が多かったが、東京から牛や馬の話も出てくる。東京のホルモン文化については、以下の記事で考察してみた。

9:神奈川県厚木市「シロコロホルモン」

「シロコロホルモン」は、神奈川県厚木市のご当地料理だ。
B級グルメの大会「B-1グランプリ(2008年)」で優勝したことにより、広く知られるようになった。

◎切り開かない腸を使う

一般的なホルモンは、腸を切り開いて平たくしたものが主流だが、厚木の精肉店で売られているものや、焼肉店でホルモンとして提供されるものは、切り開かない筒状の腸だ。豚のやわらかい大腸だけを、筒状のまま、脂身を適度につけた状態で使われる。

◎シロがコロコロしている

「シロ」とは、豚の大腸のこと。やわらかな歯応えがある外側の部分と、内側のぶ厚く脂がついている部分があり、一口大に切ったものを網焼きにすると、外側の皮が収縮して「コロコロ」の状態になる。だから「シロコロ」なのだ。

◎「シロコロ」は、戦後からのスタイル

本厚木駅周辺では、戦後まもなくからこのスタイルのホルモン店が軒を連ねていたそうだ。「シロコロ」は、厚木の伝統的なホルモン焼きの食べ方でもある。

<中部>

10:山梨県甲府市「甲府鳥もつ煮」

「甲府鳥もつ煮」は、鳥の砂肝・ハツ・レバー・きんかん(産み出される前の卵)・ヒモ(小腸)などを、甘辛く濃厚な醤油だれで照り煮にした、ご当地グルメだ。

出典:農林水産省『うちの郷土料理』
山梨県 鳥もつ煮

◎調味料は「砂糖」と「醤油」だけ

大量の砂糖と醤油だけを使って照り煮にし、旨味を閉じ込めている。焼き鳥のタレに近い甘じょっぱい味付けが、お酒にも白ご飯も合うと人気だ。

◎昭和25年頃、甲府市内のそば店で考案

発祥は、1950年(昭和25年)頃。「鳥のもつが捨てられていてもったいない」と、甲府市の蕎麦店で考案されたといわれている。

■鳥の内臓を煮込む料理

鳥の内臓を煮込む料理は、山梨県甲府市の「甲府鳥もつ煮」以外にもある。
山形県新庄市では、古くから「鳥のもつ煮込み」が食べられていて、鳥もつをラーメンに乗せた「とりもつラーメン」が、ご当地グルメだ。

11:長野県飯田市「おたぐり」

長野県の郷土料理「おたぐり」は、馬の腸をじっくり煮込んだ「もつ煮込み」だ。

◎腸をたぐり寄せるから「おたぐり」

草食動物の馬は腸が長く、20〜30mもあるらしい。下ごしらえでは、腸の内容物を取り出して、塩水できれいに洗う。そのときに、腸をたぐり寄せて洗うことから「おたぐり」と呼ばれているようだ。

■馬の内臓を食べるのは「日本で6県だけ」?

馬の内臓を食べるのは「日本で6県だけ」という話もある。

馬肉料理は、長野県と熊本県が有名ですが、馬の内臓を食べるのは長野・熊本・滋賀・奈良・山梨・北海道の一部だけだそうです。

JA長野県『おたぐりは信州伊那谷のローカルフード

とは言え、東京下町にある上野大統領では、創業当時の1950(昭和25)年から、馬の内臓を使ったもつ煮込みが出されている。

これは上野のご近所、浅草・吉原の馬肉文化の流れかな?と思ってしまう。
吉原は、馬肉を使った「桜鍋」が有名だ。むかし遊郭に来る人たちが、乗ってきた馬を売りさばいて遊び代を工面していた。そこで、馬を持て余した商人が「これを食べてはどうだろう」と始まった食文化だ。

馬の取引をしていた場所には、独自の馬肉文化がありそうだ。

「おたぐり」の発祥地、長野県の伊那谷も、かつて大和朝廷へ馬を献上していた産地であり、馬の飼育や、馬による輸送(中馬など)が盛んだった。そこから馬の内臓を食べるようになり「おたぐり」が誕生したようだ。

■馬の腸を煮込む鍋

「おたぐり」に似たものでは、馬の腸を味噌で煮込んだ「なんこ鍋」もある。「なんこ」とは「馬の腸」という意味の方言。北海道空知地方や、秋田県の郷土料理だ。

「なんこ鍋」には、こんな背景がある

・北海道の炭鉱の鉱夫にビタミンB2欠乏症が発生した際、空知地方に広まった
・秋田県荒川鉱山では、ホタテの貝殻を鍋に使う「かやき」という形で、労働者たちが食べていた

Wikipedia『なんこ鍋

「鉱山・炭鉱で働く人たちが食べていた」という点が、とても気になる。
ホルモン文化を調べていると、鉱山で働く人たちのスタミナ源になっていた話が、よく出てくるのだ。

12:静岡県富士宮市「富士宮焼きそば」

「富士宮やきそば」は、静岡県富士宮市のご当地グルメ。実はこれにも、ホルモン文化が絡んでいた。

◎「油かす」を使う

富士宮やきそばの特徴は「油かす」を使うことだ。
「油かす」とは、牛の小腸などを低温の油で揚げたもので、ホルモンから油脂をしぼりとった残りかすだから「油かす」と呼ばれる。富士宮では「肉かす」と呼ばれている。

■静岡のホルモン文化

静岡には、ホルモンのイメージがなかったが、調べてみると、いろいろなホルモン文化が出てきた。

◎「おもろ」と「おもろカレー」

浜松市や磐田市、掛川市などの静岡県西部では「おもろ」と呼ばれる豚足料理がある。沖縄風に砂糖と醤油で甘辛く煮込んだもので、名前も琉球方言に由来するという説もある。磐田市のご当地グルメ「磐田おもろカレー」でも親しまれている。

掛川市の一部の地区では、昭和後半から店頭で生の豚足が販売されていたようだ。これは、朝鮮半島から来た人が調理をし、商いをしていたことから根付いた食文化ともいわれている。(参考:Wikipedia『豚足』)

◎「もつカレー」

静岡市清水区には「清水のもつカレー」もある。
「もつのカレー煮込み」のようなもので、もともとは、豚もつを串刺しにしたものをカレーで煮込んだものだった。現在では、もつを具材としたカレーライスとしても食べられている。

<関西>

13:大阪市西成区「ホルモン焼き」

大阪のディープスポット西成は、ホルモンマニアの憧れ「ホルモンの聖地」だ。立ち飲みホルモンをはじめ、激安ホルモン店が多くあり、朝8時から酒とホルモンを楽しむ労働者で賑わっている。

◎原点仕込みの素材のチョイス

西成では、鉄板でタレ焼きにするホルモンが有名だ。
しかも、一般的なホルモン店にはない「アブラ」と呼ばれる部位も食べられる。

「アブラ」とは、豚の小腸の周りについている脂のこと。ゆでると脂のヒダが、菊のように開くから菊脂キクアブラとも呼ばれる。すべてが脂なのに、なぜかしつこくない。甘みがあってコクがあり、タレ焼きにすると最高だ。

これぞホルモンともいえる、原点仕込みの素材のチョイスと調理法。魂がこもった本物のホルモンが残る街、西成ならではのメニューだろう。

◎「ちりとり鍋」

大阪鶴橋発祥の「ちりとり鍋」も、ご当地ホルモン料理のひとつ。
ちりとりに似た正方形の浅く平らな鍋を使うことが名前の由来だが、この独特の形の鍋は、ホルモンの鉄板焼きから発展したともいわれている。

14:大阪府「かすうどん」

「かすうどん」とは、牛のホルモン(小腸)を、じっくり脂が抜けるまでカリカリに揚げた「かす」をトッピングしたうどんのこと。

◎「油かす」

油かすは、牛小腸から油脂をしぼりとった残りかすだから「かす」「油かす」と呼ばれる。大阪府南部の松原市、羽曳野市、藤井寺市などで食べられてきたご当地食材だ。

うどんのトッピングのほか、お好み焼きや、おでんに入れるなど、料理の隠し味として使われる。牛の濃厚な旨味と香りで、どんな料理もおいしくなる。まさに、魔法の隠し味だ。

◎「かすたこ焼き」

羽曳野市の名物「かすたこ焼き」は、生地に砕いた「かす」が入っている

「かす」から最強のうまみが出て、主役のタコそっちのけでウマイのだ。羽曳野には「かすたこ焼き」の元祖と呼ばれるチェーン店もある。死ぬまでに一度、いや何度でも食べておきたい一品だ。

◎「ホルモンうどん」

大阪市の新今宮駅周辺では「ホルモンうどん」と呼ばれる名物もある。これは、牛のフワ(肺)を使ったホルモン煮込みがトッピングされていて、かすうどんとはまた別のものだ。(参考:Wikipedia『うどん』)

15:大阪府「さいぼし」

「さいぼし」は、馬肉を燻製にしたもの。一部の地域でしか食べられていなかった文化で、保存食としてつくられていた。大阪の河内地方、大阪府羽曳野市の特産品といわれている。

◎大阪は馬、岡山は牛の「さいぼし」

岡山にも「さいぼし」があるが、牛肉を使っている。岡山県津山市では古くから肉食文化があり、農耕用の牛を食肉処理したものを購入した後、食べきれなかった部分を干して保存食として加工していたようだ。

◎さおで干したから「さいぼし」

さいぼしの語源は、さおで干した「竿干し」「裂き干し」が転訛したという説がある。

わかった語源が、大阪ではなく岡山の話になってしまうが、岡山では、干し肉を天日干しするのが伝統的な方法だ。庭先に「さお竹」を立てて、縄に肉をぶら下げて干していたのだとか。この、さおを使って干した「さおぼし」がなまって「さいぼし」になったといわれている。

■大阪のホルモン文化を体験しよう!

大阪に行けなくても、本場のホルモン文化がお手軽に体験できるのが、関東を中心に展開する串カツチェーン「串カツ田中」だ。ここでも紹介した、大阪のホルモンメニューについては、以下の記事にまとめている。

<中国>

16:岡山県津山市「ホルモンうどん」

岡山県のB級グルメ「津山ホルモンうどん」は、新鮮なミックスホルモンをたっぷり使った、鉄板焼きの焼うどんだ。津山市内の鉄板焼き店では、ほとんどの店がホルモン焼きうどんを提供していて、タレも味噌や醤油にソース、たくさんの野菜と合わせた物などさまざまだ。

出典:農林水産省『うちの郷土料理』
ホルモンうどん 岡山県

◎兵庫県佐用郡佐用町のご当地グルメでもある

「ホルモン焼きうどん」は、岡山県津山市から近い、兵庫県佐用郡佐用町のご当地グルメでもある。津山と同様、鉄板でホルモンと野菜を炒め、うどんを加えてタレで焼き上げる調理法だが、佐用町のホルモンうどんは、さらに「つけ汁」で食べることが特徴だ。

つけ汁で食べるようになったのは、力仕事を終えた後の男性たちが、酒のつまみとして好んで食べていて、濃い味が求められていたからなのだとか。

兵庫県の佐用町から岡山県の北部にかけての山間部地域は、古くから畜産業が盛んだった。津山市には食肉処理センターもあり、新鮮な内臓肉が安く入手できる。それで、このホルモン文化があるようだ。

◎津山の食肉処理技術はすごいらしい

津山の食肉処理技術は、全国的に見ても、すごいらしい。
牛が処理ラインに入って10分以内にはホルモンの洗浄処理が終了し、食用に適した状態になる。これが「津山のホルモンは臭みがなく、おいしいと言われる」理由のようだ。

「津山の食肉処理技術は優れており、牛が処理ラインに入って10分以内にはホルモンの洗浄処理が終了し、食用に適した状態になる。この技術は全国的に見ても特筆すべきもので、津山のホルモンは臭みがなく、おいしいと言われる」

引用:農林水産省『うちの郷土料理』ホルモンうどん 岡山県

◎津山地域は古くから牛馬の流通拠点

津山地域は古くから牛馬の流通拠点で、肉食が禁止されていた明治以前も、津山は滋賀県彦根市と並んで、全国でもまれな「養生喰い(薬食い)」の本場だったらしい。

「薬食い」とは
肉食が禁止されていた時代、近江の彦根藩では生牛と畜が黙認され、牛肉の味噌漬けや干し肉による「薬食い」が考案された。鳥獣の肉は、病人の養生や健康回復を目的として、薬代わりに食べられていたのだ。

参考:全国食肉検定委員会「お肉検定 講習会1級テキスト 2018」

津山では「さいぼし」も、戦前から食べられていたようだし、古くから肉食文化が根付いていたようだ。

17:広島県広島市「ホルモンの天ぷら」

「ホルモン天ぷら」は、広島市のごく一部のエリアでしか食べられていない、ご当地グルメだ。牛ホルモン(センマイ、ミノ、ハチノス、チレ、ギアラ、大腸など)に衣をつけて「天ぷら」にしている。

◎食べ方が独特なホルモン料理

できあがった天ぷらは、食べやすく包丁で切って出す。多くの店では、セルフカット方式で提供され、まな板・トング・はさみが置かれているようだ。天つゆや、酢醤油と粉唐辛子を混ぜたものにつけて食べる。

◎局所的なご当地グルメ

もともとは、広島市内でも福島町と近隣の都町・小河内町といった限られた地域でのみ食べられていたそうだ。その後、B級グルメブームもあって徐々に普及し、広島市民のソウルフードと呼ばれるようになった。

かつて広島市の福島町には、食肉処理場があり、廃棄されていた内臓の肉を活用するためにホルモン料理店が軒を連ねるようになったのだとか。これらの店では、さまざまなホルモン料理が提供されていたが、徐々に、お客さんから好評だった「天ぷら」が主流になっていったそうだ。

18:広島県広島市「でんがく」

広島市にある「ホルモン天ぷら」の店では「でんがく」「ホルモンおでん」と呼ばれるホルモン料理が提供されているようだ。

◎「でんがく」と「でんがくうどん」

「でんがく」とは、ホルモンを塩ベースのスープで煮込んだ「ホルモン汁」のこと。透明なスープで、ホルモンのお吸い物のようだ。

具は、小腸やチレ、肺、センマイなど、数種類の牛ホルモンと、葉物野菜が入っている。ホルモンのいろいろな部位を入れて煮込むことで、旨味やコクが凝縮された味わい深い汁になるようだ。

この「でんがく」に、うどんを入れた「でんがくうどん」という料理もある。

◎「ホルモンおでん」

ホルモンを煮た料理では、串刺しにしたホルモンを、大鍋で煮込む「ホルモンおでん」もある。こちらは「でんがく」とは異なり、濃くて黒い汁が特徴だ。

【考察】ホルモン汁は、副産物か?

焼肉で食べる「ハチノス(牛第二胃)」は、そのままでは、とても硬い。そのため仕込みでは、何時間も煮込んでやわらかくする。このときの「ゆで汁」は、捨ててはもったいない、良い味の出汁となる。まさに「ホルモンのお吸い物」だ。

ホルモン店のなかには、この汁をスープとして活用することもあるようだが、これが「でんがく」の原点ではないかと思ってしまう。ホルモンのスープをつくるためにホルモンを煮込んだわけではなく、ホルモンをゆでて煮込んだ際に出た副産物(だし汁)をスープとして使った。という考えだ。

私の勝手な想像にすぎないが、この辺は、今後の研究課題としたい。

19:広島県広島市「せんじがら(せんじ揚げ)」

「せんじがら」は、広島市西区のソウルフード。
その名の通り、豚の胃袋から油脂を取るため「煎じた殻」のこと。煎じ揚げるので「せんじ揚げ」などとも呼ばれる。

豚の胃袋を、水分がなくなるまでカラカラに揚げてあるので、素材本来の旨みが凝縮。噛めば噛むほど味が出る、酒のつまみとしても人気だ。

◎「油かす」にも通じるものがある

せんじがらは、ホルモンから油脂を取った後、本来なら捨ててしまう「殻」を、食べていたことから発展した食文化だ。大阪の「油かす」にも通じるところがある。

戦後の昭和20〜30年代頃に、広島市西区の食堂やお肉屋さんによってつくられ、食料が不足していた時代の貴重な食べ物だったと考えられている。

20:山口県下関市「とんちゃん鍋」

「とんちゃん鍋」は、韓国系の店が並び「リトルプサン」とも呼ばれる下関の商店街「グリーンモール」発祥の鍋料理だ。

1905年から1945年にかけて下関から朝鮮半島南端の釜山の間を運航していた「関釜連絡船」で、韓国から多くの人が渡り、下関での韓国コミュニティが誕生した。そこから発展していった食文化だ。

◎「とんちゃん」の「チャン」は、韓国語で「腸」の意味

宮城県岩沼市にも「岩沼とんちゃん」という豚のホルモン焼きがあるが、下関の「とんちゃん鍋」は「牛の腸」が多く使われているようだ。

◎野菜から出る水分のみで煮る

平たいステンレス製の鍋に、甘辛い味噌ベースのたれに漬け込んだ牛ホルモンを、山盛りのキャベツやモヤシ、ネギなどと一緒に火にかけて蒸し煮にする。出汁や水は一切使わず、野菜から出る水分だけで煮るのが特徴だ。

◎鉄板がくぼんだような「平たい鍋」を使う

平たい鍋は、生活が苦しかった時代に、廃材の鉄板を叩いて簡易的な鍋を作ったことが始まりだそう。韓国での生活や食文化を活かすための工夫から生まれたホルモン料理だ。

<九州>

21:福岡県久留米市「やきとり」

全国には、鶏を使わないのに「やきとり」と呼ぶ地域があり「日本やきとり7大都市」と呼ばれている。そのひとつが、福岡県久留米市だ。

「日本やきとり7大都市」を、もう一度、おさらいしておこう。

日本やきとり7大都市
北海道美唄市、北海道室蘭市、福島県福島市、埼玉県東松山市、愛媛県今治市、山口県長門市、福岡県久留米市

◎鶏、牛、豚、内臓まで混在したスタイル

久留米市の「やきとり」は、一般的な鶏の身を使った焼き鳥だけでなく、牛や豚の内臓も串焼きにして提供される。鶏、牛、豚、内臓まで混在したスタイルだ。

戦後、ほぼ無料で手に入れられた鶏、牛、豚の内臓を「やきとり」として提供し、高度経済成長期の労働者を支えたことから根付いた食文化だ。

◎久留米やきとりも「玉ねぎ」を刺す

一般的な焼き鳥は、長ネギを使うが、久留米やきとりでは「玉ねぎ」を使う。

日本7大やきとりを振り返ると「室蘭やきとり」「美唄やきとり」でも同様に、長ネギではなく「玉ねぎ」が使われていた。これは、北海道共通の肉文化として「玉ねぎの産地であること」や「長ねぎより安く、質の良い玉ねぎが入手できる」ことが理由だった。

久留米やきとりの場合は、玉ねぎは冷凍すると鮮度が落ちるため、串に玉ねぎが刺してあることは、その日に仕込んだ串である証明なのだとか。

「玉ねぎは冷凍すると鮮度が落ちるため、串の真ん中に玉ねぎがあることは、その日に仕込んだ串である証明という意味がある」

テレビ朝日系列「林修 今でしょ!講座」2018年8月7日放送分

◎医学用語が語源の内臓メニュー

福岡の焼鳥店のメニューも独特だ。
ホルモンの部位の呼び方も「ダルム(豚の小腸)」「ヘルツ(心臓・ハツ)」「タング(舌・タン)」「センポコ(牛の大動脈)」など、聞きなれない言葉ばかり。これらは医学用語が語源なのだとか。

この独自の文化「焼鳥店」が多く集まる久留米市や福岡市には、大学の医学部や医学専門学校がある。焼き鳥を食べに通っていた医学生が、医学でよく使われるドイツ語で注文したのが始まりなのだとか。

「福岡市東区や久留米市には、九州大医学部や九州医学専門学校(現久留米大)があり、焼鳥店に足しげく通っていた医学生が、医学でよく使われるドイツ語で注文したのが始まりだった。医学に関係する商品名では、豚の耳を「聴診器」と呼んでいる店もある」

NIKKEI STYLE「福岡の焼き鳥 柔らかな豚・牛の内臓をつまんで一杯

「ホルモン」という名前の語源には諸説あるが、明治維新の頃の西洋医学(主にドイツ)の影響を受け、栄養豊富で活力がつくとして名付けられた、医学用語のドイツ語「Hormon(ホルモン)」説が有力であるといわれている。

串焼きで呼ばれている部位の名前も同様に、医学用語が語源になっているところにも注目したい。

22:福岡県福岡市「博多もつ鍋」

「博多もつ鍋」は、終戦直後の昭和初期ごろ、朝鮮半島から福岡の炭鉱に働きに来ていた人たちの間で誕生したといわれる。

◎当初は「すき焼き風」だった

博多もつ鍋の起源は、炭鉱で働く人たちが、仕事の後に食べていた「すき焼き風」のもつ鍋だ。アルミ鍋に「ごま油」を入れて「唐辛子」を炒め、「もつ」と「ニラ」を醤油のタレで煮込んだものだった。

◎近年の「博多もつ鍋」

近年のスタイルは、かつおや昆布、鶏がらなどでとった出汁に、醤油や味噌で味付けをする。その中に下処理をした「もつ」と、山盛りのニラとキャベツ、臭み消しのニンニクのほか、お好みで鷹の爪を入れる。これを火にかけて煮込んで食べる。具材を食べ終わった後は、残った汁に「ちゃんぽん麺」を入れて、締めにする場合も多い。

土鍋ではなく、両側に取っ手のついた、浅いステンレス鍋を使うことも特徴のひとつだ。

◎バブル崩壊後の「もつ鍋ブーム」

博多もつ鍋が有名になったのは、バブル崩壊後の1992年、東京に「博多風もつ鍋店」がオープンしたことだ。これにより大ブームが起こり、1992年の流行語大賞にも選ばれ、都内には、数多くの「もつ鍋店」が登場した。

23:福岡県「筑豊とんちゃん」

筑豊ちくほうとんちゃん」は、福岡県筑豊地域に伝わるホルモン料理だ。朝鮮半島から出稼ぎで炭鉱に働きに来ていた人たちがもたらしたホルモン文化といわれている。

◎牛の内臓を使った「とんちゃん」

「とんちゃん」「チャン」は、韓国語で「腸」の意味。
日本には、宮城県の「岩沼とんちゃん(豚内臓)」、下関の「とんちゃん鍋(主に牛内臓)」があるが、筑豊とんちゃんでは、牛の内臓が多く使われるようだ。

◎「セメント袋」のホルモン鍋

筑豊とんちゃんは、当初、七輪の上に「セメント紙」が使われていたそうだ。セメント袋に使われる紙は、厚手で防水加工が施されていて、無料同然で手に入ったため広く普及していたようだ。

◎「田川ホルモン鍋」

福岡県筑豊地方にある田川市では、とんちゃんを使った町おこしをしていて「田川ホルモン鍋」を、B級グルメとしてPRしている。

筑豊炭田の「炭都」として栄えた田川では、炭鉱夫たちが栄養のあるホルモンを好んで食べていた。ここでも「セメント袋」が登場する。

筑豊炭田の「炭都」として栄えた田川では、炭鉱夫たちが栄養のあるホルモンを好んで食べていたが、あるとき一人の炭坑夫が鍋の代わりに紙製のセメント袋を七輪に乗せ、ホルモンを焼いて食べてみたところ、セメント袋の紙が余分な水分を吸うことで、肉が柔らかくまろやかな味わいとなり美味であったことから、市内に広まったのが始まりと言われている。

Wikipedia『田川ホルモン鍋

■炭鉱・鉱山の労働者が食べていたホルモン文化

◎ホルモン文化は、朝鮮半島から伝わった

ホルモン文化は、朝鮮半島から伝わったといわれている。炭鉱で繁栄していた筑豊ちくほう地域では、当時、朝鮮半島からたくさんの人たちが働きに来ていたそうだ。筑豊のホルモン文化は、彼らによるものだといわれている。
(参考:Wikipedia『筑豊とんちゃん』)

ホルモン文化を調べていると、日本のいろいろな土地で「鉱山や炭鉱で働く人たちが食べていた」という話が出てくる。福岡から遠い、東北・北海道にも炭鉱があるが、この地域は、どのようにしてホルモン文化が伝わったのだろうか?

◎「セッキフェ」

私が信仰する東京下町の焼肉店は、かつて「セッキフェ」という料理を出していた。「セッキフェ」とは、豚の子袋のなかに入っている胎児を生のままタタキにして、酢醤油やコチュジャンなどをつけて食べる料理だ。昭和45年頃の話だと思うが、それが全盛期の人気メニューだったらしい。

何かの有名な小説にも、鉄を掘り出す過酷な労働をする男たちが、マッコリをがぶ飲みしながら「セッキフェ」を食べて英気を養うシーンが出てくると聞いた。それで、ホルモン文化に炭鉱や鉱山の話が出てくると、気になってしまうのだ。

<沖縄>

24:沖縄県「てびち」「中身汁」「アンダカシー」

豚を「鳴き声以外はすべて食べ尽くす」といわれる沖縄には、ホルモン文化がたくさんある。内臓はもちろん、頭から足先まで、血液もすべて使って食べる食文化があるようだ。

◎豚足「てびち(足ティビチ)」

「てびち(足ティビチ)」は、沖縄の言葉で豚足を煮込んだ料理のこと。豚足を骨ごと使い、やわらかくてとろける食感になるまで、長時間じっくりコトコト煮込んでいることが特徴だ。「煮付け」や「おでん」「沖縄そば」の具などで、日常的に食べられている。

なんと、コンビニの「おでん」でも、具材で「てびち」が選べるのだとか。

沖縄のおでんは、豚足のほか「青菜」が入っているところも関東にはない特徴だと感じた。

私もよく豚足を食べるので、いろいろなレシピを調べていると「豚毛がついている場合は、カミソリで剃るか、火であぶりながら焼き取る」という手順を見かける。「カミソリで剃る」とは、なんだか人間の除毛処理みたいで、他人事ではない感覚におそわれた。

◎豚足のひづめをスライスして食べる?

ソースを失念してしまったが「豚のひづめをスライスして食べる文化」もあった気がする。アーモンドのような味でおいしいと聞いたことがある。調べてもあまり出てこないが、とても気になるホルモン文化だ。

◎「中身汁」

「中身」とは、豚の内臓のこと。
つまり「中身汁」は「豚もつの汁物」だ。

出典:農林水産省『うちの郷土料理』
沖縄県 中身汁

豚の大腸や小腸、胃などの“中身”を具材にし、かつおだしのあっさりしたスープでシンプルに仕上げた郷土料理だ。具材には、豚もつのほか、コンニャクや椎茸なども入れる。

内臓を「すまし汁仕立て」にするだけに、下処理が重要なポイントだ。「おから」や「小麦粉」などを使ってもみ洗いした後、何度もゆでこぼし、脂と臭みを取り除く。臭み取りに「おから」も有効だったとは、これは真似してみたい。

沖縄には、名物の「沖縄そば」に「中身汁の具」を乗せた「中身そば」という料理を出す店もあるようだ。

◎沖縄のあぶらかす「アンダカシー」

「アンダカシー」とは、豚の皮を揚げた、沖縄の伝統的なおやつ。これは大阪でいう「油かす」に相当する。釜揚げにするのが昔ながらの製法で、じっくりと豚皮から油脂をしぼりとり、その「残りかす」を食品にしたものだ。

シンプルに塩を振って、サクサクと食べる。高タンパクの健康的なおやつとして県民に愛されているグルメだ。

■「あぶらかす」の文化がある土地まとめ

「あぶらかす」とは、油脂を抽出する目的で肉を揚げ、その「残りかす」を食品にしたもの。ホルモン文化に欠かせない「あぶらかす」の文化が、沖縄にあったことも驚きだ。

これまで日本全国ホルモン文化をたどってきたが、最後に「あぶらかす」の文化がある場所をまとめておこう。

あぶらかすの文化がある土地
・大阪「油かす(牛小腸)」
・広島「せんじがら(豚胃)」
・静岡「富士宮やきそばの油かす(牛小腸など)」
・沖縄「アンダカシー(豚皮)」

日本全国ホルモンの旅に出かけよう!

改めてまとめてみると、日本には、あまり知られていない「ホルモン文化」や「ご当地ホルモン」が、たくさんあった。調べれば調べるほど増えて、このまとめは「24選」の超大作となってしまった。

東は豚肉、西は牛肉といわれているが、東日本は圧倒的に豚ホルモンが多いことに驚いた。加えて、ホルモン文化を探っていると、鉱山や炭鉱で働く人たちが食べていたという話がよく出てくる。それが、日本のいろいろな地域にあったことも驚きだった。

今後、勉強していくうちに、もっとホルモン文化を見つけるかもしれない。都度アップデートして『最強の日本ホルモン縦断マップ』を完成させたい。

そして、日本全国ホルモン巡礼に、出かけるぞー!

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