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春分龍神詣で旅 急転お天気は琵琶湖畔に春招く

春分の竹生島参拝旅になるはずが、数々の番狂わせに翻弄された不思議旅の記録。

きっかけは、仕事上の相談を知人とするために京都での待ち合わせを約束したことから。ちょうど翌日は春分、足を延ばして琵琶湖レイライン参りもいいかも、と思いつく。

が、約束の2時間前に、相手からのキャンセル連絡が入る。仕方なく予定を繰り上げて、旅友さんとの出町柳駅での待ち合わせを早め、さてどこに行こう?となった。

その近辺に何処か良い場所は?と観光案内所に行くと、たまたま旧三井家下鴨別邸のチラシが目に入る。こうして思ってもみない京都観光が始まる。

駅から歩いて程なく、下鴨神社のすぐそばに、その建物は在った。

 明治に建てられた部分は釘が使われていないので分解して此処へ移築したそうな

この日は割合に暖かく、開け放してある住宅の内部もそこから眺めるお庭の見学もゆったりと楽しめた。スタッフの方との会話で詳しい説明を受け、充実のスタディタイムを過ごす。

その後、入邸時に購入したカフェチケットで、抹茶ゼリィとほうじ茶の和風ティータイム。大正に作られた絨毯敷のレトロ空間で、市内の喧騒はどこ吹く風のまったり時間。予定変更がくれた至福のひととき。

滑らかな百日紅の大樹の幹が、お庭の水辺にマッチ

この日の夕方、京都駅から近江八幡の宿へ旅友コンビは向かい、無事チェックイン。明日はレイラインの竹生島だと意気揚々で就寝した。

が、一夜明ければ、テレビで竜巻注意報などの日本全国荒れ模様の一日とお天気予報。それでもまだお気楽な二人に、竹生島行きのフェリーは強風のために欠航というトドメの連絡が入った。これで春分のレイライン参拝計画は潰えたのである。

本日のメイン目的も、またもや直前強制変更(ドタキャン)。気を取り直し、三人目の旅友とのお昼の合流時間まで、彦根城近辺の散策に切り替える。有り難いことに、戸外では穏やかな天候で、屋内に入った途端に雷雨が降る不思議お天気。大して傘もささず城下町の風情を満喫し、お買い得お土産もゲットできた。

その後無事に近江八幡駅でもう一人の旅友さんと合流し、(1本ずれると、ダイヤが乱れていた)タクシーで、藤ヶ崎龍神へ出発する。

乗車したタクシーさんは、ベテランドライバーだった。地理や歴史も織り交ぜたお話も大変楽しい移動となった。その中で「実は私、十年来毎月龍神さんにお参りに通っているんですよ」そんな方に運んでいただけるとは、奇遇すぎるご縁に三人おみなは嬉しがって大いに盛り上がる。「龍神タクシーってこと?」

30分ほどで駐車場に着くと、「砂地だから、足元に気を付けてね。こんな天気は龍神さんが喜んでくださっているんですよ。」との励ましのお言葉で送り出してくださる。一層はしゃいだ気分で龍神さんの元に向かう旅友トリオ。

新しい掲示物をふむふむと拝読

琵琶湖の畔に在る龍神の祀り場では、かなり強めの寒風が吹いていた。
参拝者は、他にあと一組の女性グループだけで、先に祠前に着いたわたくしたちは順番に御挨拶をさせていただく。

龍神祝詞をあげて御朱印を授けていただく
横殴りの風が冷たい
磐座の先には琵琶湖と長命寺山
参拝後は急に晴れてきて、風が凪いできた
おさまってきた小さな雨粒がオーブのようにきらめく、晴れ間が現れる

みるみるうちに湖面も明るい青に変わり、遠くの島や山影もくっきりと見て取れるようになった。対岸に低く長く雲が伸びて、旅友は「龍雲だわ」と喜んだ。神秘的な光景に「龍神祝詞が喜ばれたのよ。」などと手前勝手な解釈をする三人。

次にドライバーさんがお参りを強く勧めてくださった、龍宮に向かう。

奥には一人だけ入れる拝所がある祠

此方で、参拝を済ませるとほぼ同時に、まるで閉店とばかりに、空は暗転し、強風とともに大きな雨粒が降ってきた。こんな悪天候の中、大勢の人が次々と参拝くるのが見え、駐車場は満車状態だった。

思うに、本日は竹生島ではなく此処をメインにお参りしなくちゃいけなかったということか。タイミングの妙に車中で話し合う。

ところで、此処の伝承から察するに、湖畔は龍神、祠は巫女神ではなかろうか?と妄想する。祠の形式が沖縄のノロ(巫女)さんが大切にする斎場御嶽の拝所と似た感じがするから、という心許ない理由だけれど。

巡合せバッチリの龍神詣に、やる気を得た参拝トリオは、昼食後にまた激しさを増した雨霰にも負けず、別のドライバーさんのタクシーで、次なる天之御中主尊神社を目指した。

https://www.qkamura.or.jp/sp/ohmi/blog/detail.asp?id=72792

またしても、鳥居前に到着すれば雨風はぱったりと止まった。「ほらね」と他に誰も聞いてくれる人もいない社前で、自慢めいたセリフを吐く、わたくし。

社のあらゆるものに〆られている縄が目を引く

境内はきれいに整い、気持ち良さなどを三人で褒めちぎっていると、「どこから来はった?」と突然一人の男性が背後から現れた。わたくしたちの後に車でおいでになったらしい。アレコレお話しているうちに、図書館で調べた由緒やこの地域の古代の地形など様々に教えてくださる。そばに寄って来られたタクシーさんも、詳しいガイドに聞き入って感服の様子。

遠方からの参拝者によく知ってもらえたら神様も喜ばれると、ボランティアガイド氏。ジャストタイムで派遣下さる神様のお手配には、いつもながら脱帽である。

氏子の方々のご尽力で流れる手水だとか
拝殿前の四角い場所は決して踏んではいけないそうな

ひとしきりレクチャーいただき、思わぬオプショナルガイドに大満足の三人とタクシーさん。車中に戻って「こんなことってあるんですねえ」と感じ入ったタクシーさんに、「結構よくありますよ、突如出現するガイドさんや道案内。」と口を揃える三人。そんなもんですかねえと不思議がる。

本来は、このあと駅に直帰の予定だったが、先ほどこの付近はかつて「島」であったから、奥津島や大嶋という神社もあると聞いたタクシーさんは、其処へ回りましょうか?と提案くださる。折角なので行ってみましょうか、と三度目の予定変更となる。


もうすっかりと雨上がりに
またしても貸切の境内
閑かで厳かな拝殿
目を引いた三本の木
曇り空の夕刻近くなのに光っている祠

三人は、拝殿に進んでご挨拶をした後、鳥居そばの小さな祠に参ることで、本日の参拝完了と実感した。

春分のこの日、雨風、雷、霰、晴れ間をいったい何度繰り返したのだろう?目まぐるしい変化と変更のおかげで人払いや行き先の修正が生じたのかもしれず、楽しい出会いがある一日になった。そんなことどもを三人で振り返る直会ティータイムを駅前で過ごして、解散した。

明けて翌朝には、車窓に青空の雪景色があった。

帰りの車窓から近江の名残雪

これからやってくる新しい時代は、屹度想像を超える変化をもたらすのだろう。それは自分たちの望みとは全く異なる形をとるのかもしれない。けれども、何とかなるものではないかと、この旅で感じたのだ。

季節外れの雪景色の美しさが、僥倖の着地点を示してくれているような。一見思い通りにならぬようであっても、結局は自分の対処次第では福に転じるのも可能だ、そう思えたのは、晴れやかな空と潔白な名残雪のおかげかもしれなかった。

降りしきる雪に似た真白 馬酔木の鈴花

最後までお読みくださり、ありがとうございます。和風慶雲。

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