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うた 宇宙(そら)のまにまに⑫

桜花のたくらみ

撒き散らされるフェロモンに

それとは知らず 操られ

酒宴を開き 大騒ぎ

詩を詠んで 風雅をなぞり

かりそめの恋心を 高らかに謳う はらからたち

クローンの桜花に 操られ

せっせと植え育てて 数世紀

本邦は 今や 桜花の完全支配下

美しき傾城の 洗練された手管のようだと

こっそりと気づく 狂喜な春

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「桜があまり好きではない」と言うのは少数派だろう。春はロウバイ、梅花、雪柳がわたくしには好ましい。これらの香りや品の良さ、清冽さが、向かい合う時に響いてくるから。

正直なところ、花見も夜桜もそれほど心惹かれない。むしろ、日本中の人々がまるで虫たちが化学物質に呼び寄せられるように振舞う様子に、軽い違和感をおぼえてしまう。

それに、一斉に集団で咲くソメイヨシノではなく、山里の一本桜の方が個性と趣が深くて好きだ。

クローンの桜花から放たれている何かしらに、皆が操られているのではないか?桜は絶世の最高位の遊女、傾城のようだな、とも。

ふと思った妄想である。植物の生存戦略として見るならば、花王と呼ばれ、国を象徴するまで登り詰めるのは、大勝利に違いない。心身を虜にされた人間たちが、絶滅せぬようしっかりと世話を続けてくれるだろう。

夢見草とも名付けられる桜のみごとな悪巧みに舌を巻いて、平伏するほかない人の仔のわたくし。完敗しても、美しい春の夢なのだから、負けるが勝ちかと苦笑している。

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最後までお読みくださり、ありがとうございます。和風慶雲。




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