マイクロノベル集 259「去る2月を追う」
No.1453
聞いていたとおりだ。二月は逃げる。「ぬくもりが残っている。探せ、まだ近くにいるはずだ!」でも、どうやって逃げたんだ。空を飛ぶのか?「走ってだ。手引きした奴がいる。なにか知っているだろう、靴屋さん?」な、NIKEのシューズが一足なくなりました。
No.1454
うるう年だったおかげで、今年は長く訓練できた。いい感じに仕上がってるぜ。早咲きの梅の匂いをバッチリ嗅ぎ分ける。行けっ、二月探知犬! ワンワン!! さっそく捕まえたか!? 「ふええ。陽気に誘われて遊びに来ただけなのにぃ」違う、これは四月だ!
No.1455
ありがとう、僕をかくまってくれて。でも、もう出て行くよ。君に迷惑がかかってしまう。「いいのよ、二月さん。ずっとここにいてもいいの」どうしてそんなに優しいんだい? 「愛しているの」その領収書の山はなに? 「会社勤めの人間には関係ないのよ」
No.1456
俺たちは二月を痛めつけるつもりはないんだ。ほら、追われる恋より追いかける恋の方が楽しいだろう? 「なら、あなたの背中にべったり抱き付いている四月でもいいじゃないですか」四月は新しいスタートを切るイベントが多くて疲れるんだよ。「ひどーい」
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