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マイクロノベル集 124

891
いつの私だったかわからない写真が増えていく。家族が撮影したものだ。私は写真に撮られると増えるので、家族も増える。撮影されてどんどん増える。はて。この写真の私はどこの誰だっけ?


892
祖母を撮った写真に僕の指が写り込んでいる。どこまでも広がる空と雲。大きな虹。きらめく湖。天国で楽しそうに笑っている。


893
キッチンにブラックボックスがあった。昨夜までは白い冷蔵庫だったのだが、今朝起きたら真っ黒になっていたのだ。手で触るのは危険か? 買い置きのジュースでつついたら、スッと吸い込まれて、中から賞味期限がわからない牛乳が出てきた。飲むか?


894
あれ、そろそろ食べたかなあ? 人類のために作ったんだけど。食べた様子がないんだよな。頭が良くなるから、すぐにでも食べてほしいんだけど。海の底に作ったのがよくなかったかな。ちょっと地上に追い出すか。「怪獣です! 海から怪獣が現れました!!」


895
ぼくはおにぎりマシン。ぎゅっぎゅと握るよ。あつあつご飯も平気。メンテナンスもいらないよ。手についたご飯は食べちゃう。そしてまた握るよ。「食べた米粒をおにぎりに再利用するな」ちゃんと消毒してるよ。「印象の問題なの」じゃあ三秒ルール。「やめろ」

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