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マイクロノベル集 149 「時間の秘密」

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「一時間後にまた来い」そう言われたので、ぼくは腕時計をセットする。時間とは天体の運行なのだ。時計を操作すれば、逆に宇宙が動くのだ。地球が回転し、月が移動し、太陽すら動く。「俺の作業時間を減らすな」ちぇっ、戻されちゃった。


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「悪魔にも才能ってものがあるんだよ。俺にはないんだけどさ。たとえばここに時間を操る腕時計があるけど、俺にはうまく使えなかった。だからあんたにやるよ」先輩からもらったデジタル時計は僕にも使えなかった。ボタンが多すぎるんだよ。説明書もくれよな。


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スピーカーがひとりでに喋ってうるさいから見てほしい。奇妙な依頼だ。俺は探偵なのに。しかし、問題のスピーカーの声を聞いて俄然興味がわいた。「サブスク契約で予言が聞き放題」ほうほう。では、次に殺人事件が起こる場所はどこだ? 「ここ」犯人は俺。


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冷蔵庫には神様が住んでいて、その姿は若く美しい。「保存が利いているからね。出したらどうなるかって? 消費期限が減るよ」40年前にばあちゃんから聞いた話。料理がとてもうまい人で、じいちゃんとずっと仲良しだった。

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