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クラシック音楽の歴史 #005「アルス・ノヴァと作曲家としての自我を持ったギヨーム・ド・マショー」

こんばんわ。名古屋クラシック音楽堂(@nagoyaclassicca)です。先日から始まったクラシック音楽の歴史シリーズ。

中世西洋音楽と言えば、グレゴリオ聖歌を代表とする宗教音楽ということで、3回にわたってグレゴリオ聖歌関連でお届けしました。中世西洋音楽のもう一つの流れ世俗音楽のトルバドゥールやトルヴェール、ミンネゼンガーといった吟遊詩人も取り上げました。

第1回:信仰統一のためのグレゴリオ聖歌
第2回:バチカンの枢機卿もその存在に驚いた長崎のオラショとグレゴリオ聖歌の関係
第3回:グレゴリオ聖歌だけが中世西洋音楽じゃない!吟遊詩人という系譜
第4回:グレゴリオ聖歌がオルガヌムの登場で進化し、より神の響きに近づく?オルガンも登場!

前回までの復習「単旋律・無伴奏からオルガヌムへ」

当初、単旋律・無伴奏を基本だったグレゴリオ聖歌が、オルガヌムにより2声から3声・4声と多声(ポリフォニー)化し、荘厳な響きを獲得していきました。

また複数の旋律に加え、音符の長さやリズムというクラシック音楽を形作る基本的な構造も出来上がっていきます。

そしてそのオルガヌムの発展と時を同じくして鍵盤楽器のオルガンも発展していったというお話を前回しました。

中世西洋音楽の最終形態「アルス・ノヴァ」

13世紀のオルガヌムなどサン・マルシャル楽派やノートルダム楽派のラテン語を主体とした多声音楽が生み出された時代のことを「アルス・アンティカ」と呼んだと前回お話ししました。

これは、1320年に作曲家兼理論家フィリップ・ド・ヴィトリ(1291-1361)によって書かれたリズムの分割法とその記譜法を著した理論書「アルス・ノヴァ」に対比させるための作られた言葉でした。以降は「アルス・ノヴァ」を理論書としてではなく14世紀~15世紀にかけて発達していった音楽形式についてご紹介していきます。

アルス・ノヴァの特徴としては、シンコペーション(強拍と弱拍の通常の位置関係を変え、音楽のリズムに緊張感を生み出す手法)などを用いた高度なリズム技法が発達し13世紀より複雑・精巧になり、従来のキリスト教の影響を受けた3拍子ではなく、2拍子中心の音楽が多くなっていきます。

そして、音楽そのものや、歌詞や旋律的に世俗的な流れが多くなってきたのも特徴です。

また、この時代の作曲家は作品を書くときにポリフォニーの技法を用いました。この時期の代表的な作曲家であるギョーム・ド・マショー(1300頃-1377)は、そのミサ曲全体をポリフォニーの技法によって書いています

代表的作曲家ギヨーム・ド・マショーの登場

ギョーム・ド・マショーは14世紀フランスのランス生まれの作曲家、詩人。

代表作の『ノートルダム・ミサ曲(聖母マリアのミサ曲)』をまずご紹介しました。6章のミサ通常文が一人の作曲家によって作曲された最初の作品とされる点で歴史的に重要です。

オルガヌムが即興の要素を持っていたのに対して、彼のミサ曲はすべての声部を予め楽譜に示したのも、アルス・ノヴァ様式での特徴です。

マショーは聖職者であったにも関わらず、80年近い生涯に残した音楽作品は典礼のための宗教曲よりも、宮廷風の愛や、世相を歌った世俗曲に比重が占められていました。

それまで積極的に作曲家自身が自分の作った曲に自分の名前を残さなかったのに対して、彼は自分の作品集を書物に纏めるなど芸術家としての自分の存在価値を世の中に示した最初の作曲家とも言えます。

次回からは中世西洋音楽がルネサンス音楽へ変遷した様子をご紹介して行こうと思います。

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