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来年も一緒に行こうね

「にいちゃんの学校、楽しみ!」

先月、三男を連れて長男の高校の文化祭へ行ってきた。「軽音部に入りたい!」「制服が嫌!」「自由な学校がいい!」と言い続け、受かるかどうかは当日点次第、もうほとんど博打やんけという状態で受験したこの高校に入学して一年半。やたらと行事が多く、七夕には浴衣で登校し、ハロウィンでは仮装する生徒が多数いる学校の文化祭というものを、私は見たくて見たくて仕方なかったのだけど、去年は例のアイツが落ち着かず一般公開は中止。しかし今年は家族2名まで入場可能の決定に「じゃあ、三男と行くわ!」と夫の存在をガン無視して、数ヶ月前からとても楽しみにしていた。

ちなみに文化祭当日は学校見学会も兼ねているので、未だにどこの高校見学にも行っていない、そもそも高校自体に興味があるのかどうかも分からない中3次男に、超ハイテンションで「一緒に行こうや!」と誘ってみたが、「僕はそういうの好きじゃないと思う」と秒で断られ撃沈した。ですよね。お母さんもそう思ってた。



当日、天気は快晴。

受付を済ませて校内に入ると、入ってすぐのホールではバザーが開催され、壁にはたくさんのポスターが貼られていた。中庭でダンスをする子達を横目に廊下を進むと、多くの生徒がプラカードを持って自分のクラスを宣伝しながら練り歩き、様々なイベントが行われている教室の飾り付けが見える。

「すごいね!」

初めて訪れる文化祭に三男は目を輝かせていた。私も高校生達の熱量に目を細める。

あちこち目移りしながらも「お化け屋敷に入りたい!」という三男と1年生のクラスに並ぶと、どうやらそこは怖くて人気のクラスだったようで、中からは「ギャー!!」とか「うわー!!」とか叫び声が絶えず聞こえてくる。

「怖そうやけど、大丈夫?」
「大丈夫だよ」

余裕ぶってる三男を「泣かんでよ」と茶化しながら、だいぶん待ってようやく中に入った。後ろに並んでいた女子中学生2人と一緒にストーリー映像を見た後、暗い室内を進みながら、途中にある4つのロッカーのどれかに入っている呪いのメガネを回収するという内容(だったと思う)に、三男を先頭に4人で進む。

すぐに1つ目のロッカーに辿り着き、「あったね、開けてみ」と言うと、三男は手を伸ばすどころが足をぐっと踏ん張って「ムリ」と言った。

え?ムリ??

「開けへんの?お母さん開けるよ?ええの?」と何度も確認したけれど、「お母さんが開けて」と言うので、左手で三男の肩を抱いたまま右手を伸ばして勢いよくロッカーの扉を開く。

シーン。

あれ?何も起きない。

ついでにメガネもないことを確認して、「何もなかったやん」と言いながら次に進む。左に曲がってすぐに2つ目のロッカーがあり、「今度は開けてみなよ」と押し出すと、一歩前に出た三男はすぐに一歩後ろに戻ってきて「イヤ」と言った。

え?イヤ??

これは全部お母さんが開けるパターン?それってどうなん?おばちゃんが全部開けてギャーギャー叫びまくる展開って、企画した高校生達からしたらどうなん!?

3秒くらいあれこれ考えて、私はくるりと後ろを向いた。

「ちょっとこの子が怖くて開けれないみたいだから、お願いしていい?」

同じグループで進んでいた後ろの女子中学生に声を掛けると、何も起きなかったロッカーでも「怖い!怖い!」と叫んでいた女の子達は、一瞬「え?」と真顔になったものの、

「あっ…と、えっと、はい、頑張ります!!!」

と前後を代わってくれた。

2人で抱き合ったまま、ひとりの子が震える手を伸ばして「開けるよ!開けるよ!!」とまるで押すな押すなのダチョウ状態でそっと扉を開けると、その瞬間にガタガタガタ!!!とロッカーが激しく揺れ、女子中学生は「ギャー!!!」と叫んで逃げて行った。

「ほら、お姉ちゃん達に置いていかれるで」と三男を押して後を追うと、恐怖のあまり3つ目のロッカーを走った勢いでバーン!と開けるという暴挙に及んだ女子中学生は、ロッカーの後ろから「うわー!」と現れたお化けにまた「ギャー!!!」と叫んで転げんばかりに後ずさりをする。

そんな2人の反応に『これぞお化け屋敷!!』と感じていた私だったが、女子中学生の叫び声とお化けの出現で怖さが絶頂に達した三男は、完全に固まって石のように動かなくなり、おまけに声も出せずに立ちすくんでいたものだから、定位置に戻ろうとしていたお化けから小声で「ごめんね…ごめんね…」と謝られた。こっちこそ、なんかごめん。

さらに最後のロッカーは、開けると中に入っているお化けが追いかけてくる設定にも関わらず、三男が辿り着いたのはお化けが女子中学生を追いかけ終わった後で、一仕事を終えて振り返った瞬間に私達と鉢合わせたお化けが「うお!!」と驚く逆展開に、私はこれまた『なんかごめん』と心の中で謝った。

まぁそんなこんなで「お化け屋敷は二度と行かない…」と天に向かって呟いていた三男だったけれど、その他の射的や人生ゲームなどのクラスは楽しそうに何度もチャレンジして時間いっぱい遊び尽くし、私は途中で始まった軽音部のライブの裏方として働く高2長男の姿を遠目から見て、あぁなんか先輩してるなぁと妙に胸が熱くなったりなんかして、親子で大満足の時間を過ごした。


帰り道、ニコニコしながら「来年も行こうね!」と繰り返す三男に、私も「行こうね!」と繰り返し、来年は長男と次男の両方の高校の文化祭に行けるといいなぁ、そして再来年もその次も、三男が私と一緒に「にいちゃんの文化祭に行こうね!」と言ってくれるといいなぁと思った。




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