マスター最後にもう一杯
私には、唯一の行きつけのお店がある。
昔住んでいた家の帰り道にあった「焼き鳥屋さん」だ。
今は私が引っ越してしまって、片道40分と行きつけにしては行きにくい場所である。
焼き鳥屋さんは60代の夫婦が切り盛りしていて、私は「マスター」と「お母さん」といつも呼んでいる。
2020年、コロナという世界を変えてしまう出来事が起き
感染予防の観点から焼き鳥屋さんにはより行きにくくなってしまった。
マスターは毎年ホノルルマラソンに出場していて、今年も出場するのを楽しみにしていた。私自身もマスターから感想を聞くのを毎年楽しみにしているが、今年のホノルルマラソンは中止、その話も来年に持ち越しのようだ。
コロナの感染者数が落ち着いてきた時期に、一年ぶりにお店を訪れた。
毎回名前は覚えてもらえないが、第一声は「よくきたね」がお決まりだ。
そしてお気に入りの座敷に案内してもらい「キリンクラシックラガー」と「牛すじ煮込み」と「野沢菜」そして気になったお惣菜を一品注文する。今回は白菜の漬物を頼んだ。
頼んだものが届くとまずはじめにビールを飲む。
一杯目が最高なのは言うまでもない。
三つのおつまみをローテーションしながらビールを飲み進めていると
あっという間に飲み切ってしまうので、もう一本注文する。
そのタイミングで、ポテトサラダと焼き鳥も追加する。
焼き鳥は炭火でじっくり焼くので早目の注文がポイントだ。
一緒に来た妻とやっとここで会話が始まる。
お店に入ってからは全てが待ち遠しく、食べることに夢中になってしまう。
会話と言っても大した話ではなく、店内に流れている音楽を口ずさむだけである。
そんなことより 幸せになろう
毎回決まって、小田和正が流れている。
そんな穏やかな時間から少しして、注文したポテトサラダが届く。
毎回思うのだがこれはポテトサラダではなく、フルーツの盛り合わせでなのでは・・・?
その日仕入れたフルーツをポテトサラダに盛り付けて提供してくれるのだ。
私が今の妻と同棲したのが3年前になるのだが、引っ越しを伝えた後から来店するたびに花束をもらうようになった。
理由は聞かないようにしている。
花束をもらうことが分かっているため、私達もマスターとお母さんが好きな甘いもの買ってからお店に行くようにしている。
人のためにものを選ぶのは楽しく、来店前からドキドキやワクワクが止まらない。
そうこうしている内に焼き鳥が届く。
基本的には塩を注文する。
「とり軟骨」と「自家製つくね」がおすすめだが、シイタケに醤油と七味をかけて食べるのがお酒にすごく合う。
この時点で、腹八分目で酔いもちょうど良い。
いつもの飲み会であればこのタイミングで会計を行うが
少しでもお店に貢献したい気持ちから、一杯多く頼む
マスター最後にもう一杯
決まって日本酒が並々注がれて席に届く。
お店から出ないといけないという寂しさとマスターの暖かさを感じる。
これが私にとっての最高の一杯なのだ。
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