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若プロダクションのオーディションを受けた話

「テレビ、CMタレントオーディション」
浅野温子さん、内山信二くんを育てました!
信頼と実績で設立24年。新人発掘スカウト。今、デビューのチャンス。

平成初期の新聞のテレビ欄右下によく見かけた芸能事務所の広告。
「若プロダクション」
(でも、10数年前に倒産してしまったらしい)

11歳の世間知らずの子どもの私は
そこに書類を送ればタレントになれると思い
すぐにスナップ写真と簡単な履歴書を送った。

生徒が作ったクラス新聞の美人ランキング1位。
親戚のおばさんの「なぎちゃんは美人だね」「こりゃ、悪い虫がつくよ」
子どもの私には悪い虫ってなあに?意味が分からなかったけれど・・・
友だちの「なぎちゃん、観月ありさに似てるね」
そんな言葉を本気で信じていた。

それに、、私を馬鹿にしていた奴らを見返したいと思っていたから。

私の家は貧乏だった。
大きい新築の家に石造りの蔵からはぱっと見は貧乏に見えない。
どちらもローン嫌いの父が現金で建てたものだけど
貯蓄を使い切ってしまったから現金が無く毎月カツカツの状態。
おまけに両親ともに私が中学生になるまでパート社員だった。

学校の給食費や教材費の集金がいつも締め切りぎりぎりになるから
先生にみんなの前で
「払っていないのは、なぎさんだけですよ」と催促されたり
靴以外の服、下着に至るまで全て5歳年上の従姉のお下がりで
初めてのブラがサイズの合っていない黄色く黄ばんだものと
型崩れした水色の2枚しかなくて買って貰えないから
それを高校2年までずっと使っていて、プールの授業がとても憂鬱だった。

そうだよ!仕方ないよ!私の家は貧乏なんだから!
笑い飛ばす強いメンタルでもなかったから
貧乏だということをずっとひた隠しして来たけれど
そんなの直ぐに見破られる。
子どもって大人以上に敏感で残酷なところあるよね。

「なんでそんなカッパみたいなジャンパー着てんだよ」

「お前いっつも同じ服着てるな」

「そのブラ何年使ってんだよ?」

どれもこれもお金があれば言われなかったこと。
子どもの私にはお金が無いのはどうすることもできない。
だから、聞こえない見ないふりをした。

学校での出来事は私の身に起こったことではない。
そう、ランドセルを置いたら学校と家とは別人格。
帰ったら学校の出来事は頭から切り離した。
だからなのか、忘れ物が異常に多い子どもだった。

あまり友だちと遊ぶことも無い私はテレビを観て過ごした。
そして可愛い服を着てテレビに出ている
タレントや女優さんに自分を重ねて見ていた。
私もタレントになりたいといつしか夢見るようになっていた。
私が芸能人になれば馬鹿にした奴らを見返せる。

送った書類は一次審査を通り、次の面接会場に行った。
私は何だか場違いな気がした。
たぶん、ここに来る人はお金持ち。
だって、本人も付き添いの親も小綺麗で高そうな服を着ている。

それに比べて私はくたびれた普段着で
如何にも田舎から出てきましたの恰好。
披露する特技もタップダンスやバレエなど・・・
私は渡された台本で演技のテストを受けた。
特技なんて、、考えたこともなかった。
終始、周りの目を気にしてずっとオドオドしていた。
これは、落ちたな。。。自信喪失で帰った。

なのに!オーディションに受かっていた。
どうして??
届いた分厚い封筒の中には契約書と
登録料とレッスン代の振り込み用紙が入っていた。
合計30万。。。

両親に見せたらこっぴどく叱られた。
お金を払って所属するなんて本当に才能があったら向こうから
ぜひ、うちに来てくださいとスカウトされるはずだ、ないなら才能はない。
芸能界なんて水商売と同じだ。
自惚れているんじゃない、お前の容姿は10人並だ。

そして、今後オーディションに応募するのは禁止された。

芸能界はお金持ちの坊ちゃんが親の事業を引き継いだり
お嬢様がどこかの御曹司と結婚するまでの
腰掛程度と捉えられる人がいるところ。

中島みゆきの父親は開業医
椎名林檎の父親は外資系石油大手企業勤務
DAIGOの祖父は竹下登首相

もし芸能界でコケたとしても
その後の人生が十分にやり直し可能な後ろ盾がある人ばかり。

もちろん、2万人の中からオーディションで選ばれてとか
街中を歩けば一日に何十人にもスカウトされて、、、そんな人もいるけれど才能も後ろ盾も無い私が挑戦するところではないのだ。

それなら、私は何で馬鹿にしてきた奴らを見返せるのだろう。
どうしたら、この貧乏から抜け出せるのだろう。

『一番の復讐とは自分が幸せになることです』

今なら、その意味が理解できるよ。
でもね、そのとき子どもの私には分からなかった。

勉強して、良い大学に入って、大企業に入れば
社会的地位もお金も手に入るに違いない。
だから、勉強を頑張った、頑張るしかなかった。
だって、私は何の特徴も特技もない人間だから。。。

このお話しの続きは、また、後ほど。。。


















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