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喋らない呪いをかけた

これは40年前私が5歳のときのお話し。
あの日、私は自分で自分に呪いをかけたんだ。。。

ここは幼稚園の教室。
クラスのボス的な存在の男の子が女の子を一列に並ぶように命令していた。

「なぎちゃん、行ってみよう」

一緒に折り紙で遊んでいた友だちは
テーブルの上に作りかけの鶴を置いて私の手を引っ張った。

その男の子は列の一番前に並んでいたみほちゃんに
「みほは可愛いから、こっち」と右側を指差した。
みほちゃんは後ろを振り返って勝ち誇ったようにニコッと笑い
男の子が指差した方へ移動してお絵描きを始めた。

みほちゃんの後ろに並んでいた女の子には
「お前はブスだから、あっちだ」と左を指差した。

そして、並ばせた女の子を次々に
「可愛い子」と「ブスな子」に分けている。

女の子は可愛い子とブスな女の子に分けられるらしい・・・
生まれて初めて知った。
ショックだった。
じゃあ、私はどちらなんだろう?
今まで、自分のことをそんな風に考えたこと、ない。。。
しかも、決めるのはこの男の子。

これっていいことなの?
先生は「そんなことしちゃ、いけません」と止めに入らないの?
気付いていないの?気付かない振りをしているの?

先生は部屋の隅で連絡帳に何かを書き込んでいる。
その男の子がしていることを気にする素振りも無い。

私の手を引っ張った友だちは「お前は可愛いからこっち」と
可愛い女の子の輪の中に、やったー、という顔で入っていった。

次は、私の番だ。。。

「何だ?お前?」

男の子は吐き捨てるように言い、チッと舌打ちをした。
どういうことなの?
門前払い、その列に並ぶことすら許されなかったんだ。

その男の子に「酷いことしないで!!」と怒ったり
先生に「〇〇くんが私のことをブスって言った!!」
と訴えれば良かったの?

だけど、私には言い返せるほどのパワーが無い。
その場から動けなくなって黙って俯いていると
「お前、あっち行けよ」
まるで汚いものを摘まみ出すような言葉を投げつけられた。
自分がすごく惨めで今直ぐ家に帰りたいと思った。
でも家に帰っても、苛められたなんて恥ずかしくて誰にも言えない。

その日以来、その男の子は
私がお友達とおしゃべりしたり笑ったりすると
「うるさい!ブスは騒ぐな!大人しくしてろ!」
折り紙で鶴を折っていると「ボロい鶴だな」と鶴を踏んづけた。
その子が怖くて仕方なくなった。

だから、私は次第に喋らないように目立たないように過ごすようになった。

そうしたら、その男の子の目に付かなくなり
罵声を浴びせられたり意地悪をされることは少なくなっていった。

友だちは急に喋らなくなった私を最初の頃は
「なぎちゃん、のど痛いの?声が出ないの?」と心配したけれど
だんだんと私から離れて行った。
そりゃそうだ、喋らない子と一緒に居たって楽しくない。。。

でも、私は苛められないのなら、それで良いと思っていた。

「私はブスだから喋ってはいけない、喋ると苛められる。
私なんか、私なんか、、、喋っちゃいけない。喋らない!!」

そうなんだ、、、5歳のとき、私は自分自身に喋らない呪いをかけた。
場面寡黙症でも自閉症でも発達障害でも何でもない。
私は自分の意志で喋らなかったんだ。。。

そして、その呪いが、大人になった私をずっと苦しめ続けて来たんだ。




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