見出し画像

45歳、もう一度恋をしてみました②

「ドラムは初めて?」と笑顔で尋ねた先生に「はい」と答えた。
教室備品とマジックで書かれたスティックを私に渡した。
椅子に座り「こうやって持つんです」と言う
先生の真似をしてスティックを握る。

「左上のがクラッシュシンバル、その下がハイハット
これがスネア、タムがあって、そのすぐ下にフロアタム
そして足元にあるのがバスドラね。順番に叩いてみる?」

最初にクラッシュシンバルを叩いた時、大きな音にビクッとなった。
大きな音、あまり得意じゃない。。。
左耳は何回も鼓膜を切開しているから少しだけ聞こえずらい。

先生はビクビクしながら叩いている私の姿を心配して
「大丈夫?」と聞いてくれたのに「大丈夫です」と笑った。
叩くだけで取り敢えず音がでるのは楽しい。

「この順番で叩いてみて」
見よう見まねで叩いていく。

先生は肩に掛けていた
スマホのストラップを外して画面のアイコンをタップした。
すると、壁に設置してあったモニタにあのMVが映し出された。

ちょっと、ちょっと、待って!!
体験レッスンの申し込みの時「好きな音楽とかバンドとかありますか?」に
あの彼のバンドのあの曲の名前を答えた・・・
けれども!突然大画面で映し出されたら、、
無性に恥ずかしくなり思わず冷や汗と苦笑いが出た。
どんな羞恥プレイなんだ。。。
お尻の辺りがこそばゆい。

「じゃぁ、これに合わせてやってみる?」

えっ?ほんとに、ちょっと待って・・・

先生は私と彼の関係性なんて知る由もない。
必死に先生に着いていった。
その曲が終わる頃には、何だか楽しくて堪らなくなってきた。
ドラムって楽しい。。。
ここ最近で一番笑った気がする。

「ありがとうございました」と満面の笑みでお礼を言って教室を後にした。
先生に会うのはこの体験教室一度だけなのは、ちょっと寂しいかな。。。

受付に戻るとお決まりの様に店員さんが
どうでしたー?と椅子を勧めてきた。
楽しかったです、と答えると
入会案内のパンフレットを広げて説明を始めた。
どうしよう、、、

その彼のところに通うにしても
新幹線とバスを乗り継いで5時間という長距離。
実際に日帰りは無理だったし、、
レッスン代より交通費の方が高い。
現実的に考えたら、そんなに頻繁に通えるはずがない。

「来月から通いたいです。西村先生にぜひお願いしたいです」

即決だった。
それに、先生にまた会いたい、そんな気持ちが芽生えていたから。。。







この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?