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果汁と黒目、色の

 扉が開くのをずっと待っている。それが開くはずがない時間だとしても、パチンコを模した機械と猿の実験のように、食い入るように扉を見ている。その扉から外に出ることは容易いはずなのに、そうしようと思うことは決してない。この八畳のワンルームが世界のすべてであると思うし、同時にそうであったらいいと思う。
 私は引きこもりだから、東京をこの部屋とこの部屋から見える数戸の家屋しか知らない。姉が実家から私を連れて

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