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寝だめに意味がないというのは本当か?

1)理屈で考えると寝だめは不可能

休みの日になると、普段よりも眠ってしまいがちで「目が覚めたらお昼近くだった・・・」という経験のある人は多いと思います。

ですが「寝だめには意味がない」という話は聞いたことがありますよね?それどころか、リズムが崩れてしまうため、健康に悪いという説まであります。

確かに「明日からの仕事(もしくは勉強)のために、休日はたくさん眠って睡眠を貯蓄しておこう」としても無駄でしょう。なぜなら、脳や身体が充分な睡眠で満たされていれば眠くなりません。

それを、明日のために無理やり眠ったところで、確実に睡眠の質は悪くなります。未来のために睡眠を貯蓄しておくことは、理論上不可能です。

とはいえ「休みの日にたくさん眠ったら、水曜日くらいまで調子は良いよ?」という方もいらっしゃるでしょう。

それは睡眠を蓄えられたからではなく、不足していた睡眠を返済したことで体力が回復し、その結果として調子が良くなっただけなのです。

2)休日にたくさん寝てしまう理由

それでは、休みになるとなぜ普段より長く眠ってしまうのか考えてみると、日常における睡眠時間が慢性的に不足しているからに他なりません。

1日だけの休みであれば、長時間眠ってしまうことがあっても、まとまった連休だとどうでしょう?

平日よりは長くても、1日だけの休みとは異なり、そこまで長い時間を継続して眠り続ける事態にはならないのです。

例えば、平日の睡眠が6時間だと仮定し、休みは10時間程度眠るとします。ところが、お盆や年末年始のまとまった休みになれば、7~8時間程度に落ち着きますよね?

これは、睡眠時間が6時間だと不足しているため、休みになると不足分を補うべく10時間眠ってしまいますが、いったん充分な睡眠時間を確保できると、その後、必要な睡眠時間は減少するためです。

つまり、連休中の睡眠時間こそが、その人にとって適量という事になります。

3)寝だめという言葉は不適切

そう考えると、休みの日に長時間眠ることは、決して寝だめしているわけではなく、不足していた睡眠を補って身体の疲労を回復させていると考えるべきでしょう。

自律神経失調症やパニック障害にクライアントさんに施術をすると、翌日はびっくりするくらい長い時間眠ってしまう事があるのですが、2~3日後には普段通りの睡眠に戻ります。

これは、緊張が解けることにより、疲労の回復に必要なだけ眠れるようになったためですが、数日後には妥当な睡眠時間に落ち着くのです。

「溜める」とは、本来ゼロの状態からプラスの方向に加算していくことを意味します。

ところが、長時間眠ってしまう現象は、睡眠が不足している、つまりマイナスの状態ですよね。そこから、ゼロに戻そうとしているわけですので、そもそも「寝だめ」という言葉自体が不適切でしょう。

未来のための貯蓄として、休日にたくさん眠るわけではなく、「既に積み重なった睡眠負債を返済するために長時間眠ってしまう」と考えた方がしっくりきます。

4)生活リズムが崩れる理由

さて「休みの日に寝すぎると生活リズムが崩れ、むしろ体調を崩す」という説ですが、睡眠ホルモンの分泌メカニズムが根拠になっているのでしょう。

ヒトは、目が覚めて光刺激を受けると、その時点から、おおよそ14時間後くらいに眠気を誘うメラトニンが分泌されます。

休日にお昼(12時)まで寝てしまうと、再び眠りに就くためにメラトニンが分泌されるのは、深夜2時前後ですね。

つまり、深夜2時まで眠気が起こらず「昼間に寝すぎた・・・」と後悔する事になります。

ちなみに、夜になってコンビニ等の明る過ぎる場所へ行くと生活リズムが崩れるという話も、睡眠に必要なホルモン分泌が不具合を起すためです。

5)睡眠負債は返済するべき

そうは言っても、休みの日にお昼近くまで寝てしまうということは、慢性的に睡眠が不足しているということです。

そもそもの生活リズムに無理があるのですから、そのリズムを固持して、普段通りの時間に起床しても健康に良いはずがありませんよね?

病気を患わずに、健康的に過ごすためには、相応の睡眠時間を確保する必要があります。身体に蓄積された疲労は、いつの間にか勝手に解消されたりはしません。

睡眠不足を放置すれば、いずれ自律神経のバランスが崩れ、休日のたびに体調を崩して寝込んでしまう事になります。

残念ながら、睡眠負債は睡眠で返済する以外に方法がありません。

平日は忙しくて、どうしても充分な睡眠時間を確保できないなら、休日は不足した睡眠を補うためにも、たくさん眠るのが正解です。

6)不足した睡眠を補うために

それならリズムが崩れてしまうのは無視して良いのかと言えば、そうもいきません。どうするべきか?

眠らなくてはならない時間を想定し、そこから14時間逆算して起きる時間を決めれば睡眠ホルモンの問題は解決します。

翌日の出勤に備え日付が変わる頃には眠りたいとすると、休日の朝は10時くらいに起きれば、睡眠ホルモンによる生活リズムの崩壊を回避できますね。

「休みの日は10時までの睡眠だと足りない・・・」という場合は、休日前夜の夜更かしを止めて普段より早く就寝し不足分の睡眠時間を確保しましょう。

休日前になると嬉しくなって、早々に眠ってしまうのは惜しい気がしますが、そこは我慢が必要です。

なお「目が覚めたけどダルイからもう一度寝よう」という場合は、充分な睡眠を摂っていながら、さらに眠ることを意味します。

それこそ本格的に生活リズムを崩すことになりかねません。身体に必要な睡眠を摂る事と惰眠を貪ることは、似て非なるものです。くれぐれもお間違えのないように留意しつつ、睡眠を堪能してください。



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