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音楽視点の世界旅行 | キューバ編🇨🇺 | 多彩なリズム、シンコペーション、文化の融合、キューバの音楽家について。圧倒のドラムレッスンに出会う🌎✨

皆さん、リズム音楽世界旅紀行 へようこそ。
今回は、カリブ海に浮かぶ島国、キューバの音楽事情についてご案内いたします。

キューバと聞いて皆さんはまず何を思い浮かべるでしょうか?野球、カストロ政権、そしてクラシックカー。
大半の日本人にとっては、名前は聞いたことはあっても、あまりなじみのない国だと思います。

しかし、実はキューバは高度に洗練された音楽の宝庫としても知られています。

この記事では、キューバでの体験談をもとに音楽事情について深堀りしてみたいと思います。

キューバ音楽の入門に!〈 Ruy López-Nussa y La Academia / Versiones de La Academia 〉
▶︎配信リンク: https://lnk.to/9tAPyv1m


リズム考察について詳しくは、前回の記事を確認してみてくださいね!


キューバってどんな国?

キューバはカリブ海に浮かぶ島国で、アメリカからわずか約166kmの距離に位置しています。

2013年にはこの海峡を泳ぎ切った64歳の女性がいるというから驚き!

この近さにもかかわらず、社会的・経済的には「遠く離れている」という特異な状況が存在します。


キューバの歴史は古く、1492年にコロンブスが到達して以来、欧州世界にとっては全くの未知の場所でした。

スペイン人の入植に伴い、先住民であるインディオの人口は激減。

代わりにアフリカから黒人奴隷が連れてこられ、約400年間スペインの植民地となりました。リズム音楽的には重要ポイントですね。


1898年にはスペインから独立し、アメリカの支援を受けて国家として成立しました。

しかし、多くのキューバ国民は貧困に苦しむ半植民地の状態でした。


1959年にフィデル・カストロやチェ・ゲバラなどの革命家によるキューバ革命が勃発し、

キューバは社会主義国家としての道を歩むこととなります。

一方で個人の自由は制限され、多くの知識層がアメリカに亡命しました。


キューバってどんなところ?

キューバの気候は亜熱帯で一年中温暖です。

住民はスペイン系の白人、黒人系、混血、東洋系等多様な人種が混在し、独特の雰囲気を醸し出しています。

社会主義国家として、ほとんどの企業は国営であり、学校や病院も国営です。

そのため、職種によりますがキューバ人の給与は平均して3500円 程度と言われています。(2023年現在は物価が急上昇、これについては次回作で!)


物価が異常に安いのかというとそうでもなく、まず配給制度があります。

米、小豆、砂糖、コーヒー、卵、食用油、鶏肉、ひき肉、パンなど毎月決まった量ですが超格安料金で購入することができます。

配給所があちこちにあり、政府の高官や、高名なお医者さん、弁護士もこの列に並んで配給を受け取るのです。

それと住居については、これも国から格安で借りることができます。しかも、光熱費もほとんどタダ同然。

教育費と医療費は無料です。

もちろんこれらの特権はキューバ国民に限られています。


キューバ人の穏やかで明るい性格からか、治安が非常に良く、基本的に夜間、街を出歩いても全く問題ありません。


長年憧れ続けた国、キューバで運命のドラムレッスンに出会う!

長年の夢、キューバの首都ハバナに2018年、無事到着。

空港から市内に移動するタクシーの中で親切な運転手がライブ鑑賞できる場所を教えてくれます。キューバを含めラテン諸国の人達は基本親切で嬉しいです(気は引き締めていかないとですが)。

「ここが僕の来たかった場所だ!」と実感しました。

早速ですが憧れのドラマー、ルイ・ロペス・ヌッサ氏レッスンを受けに、ご自宅にお伺いすることになりました。


ドラムのレッスンは非常に厳しいもので、とてつもない4way インディペンデンス(四肢バラバラのリズム)の技術です。

難し過ぎて逃げていた 2:3 Rumba Clave

Claveを左足、右足は頭抜きベースライン、右手カスカラ、左手はコンピングです。


ぜんっぜんできない!!!

基本エクササイズができないと全く先に進んでくれません。

しかし、この厳しい練習を乗り越えることが音楽の成長につながると理解し、熱心に取り組みました。

せめて真剣な姿勢だけは伝わらないと・・・。


結局たいして進まずに宿題に。

いま目の前にドラムがなかろうが、太ももを叩いて必死に練習するしかないです!

物資が乏しく欲しいものが手に入らない国で「ドラムがないから練習できない」なんて贅沢、単なるワガママと言い訳にしかならないですからね。


ーーあの有名な曲「コーヒールンバ」は実はルンバじゃありません

よく日本で生徒さんに質問される事なのですが、「ドラムどう練習すればいいですか?家に置けません」と。

今ならハッキリと言えます。

叩けるようになりたかったら

どんなやり方でも、いつでもどこでも練習できます!!

それがリズム楽器の特徴と利点でもあります。

翌日も夕方からルイ先生のレッスンを受け、2日目で何とか形になってきましたが、課題ができないとどうにもならないですね…。

しかし話はとても興味深く、ものすごくタメになります。


その帰りはあり得ないほどの大雨で(日本のゲリラ豪雨に近い感じ)外に出られず、

なんとルイ先生、家にいなよと言ってくれてお茶も出してくれて2時間ほどいさせていただきました。本当に尊敬すべき大先生です♪


前述の通り、キューバでは月収が3500円 程度。

猛烈な物価の上昇でキューバ人には危機的状況らしく、生活はジリ貧。(病院や学校は全部タダですが)

アメリカと国交は少し正常化したとは言えまだまだ経済制裁があり、また自国には資本がないので、

外国人旅行者から収入を得て生活の足しにしているのが現状です。


レッスン代、ライブ鑑賞代、宿代、交通費合わせると一日当たり1万円程度は掛かってしまいますが、

ここは楽しんで乗りこなした方が勝ち。

帰ってから働けばなんとかなる!


リハーサルを見学、キューバ音楽界のトップクラスに触れる喜びと感動

ある日、レッスンが朝ではなく夕方に。なぜかと言うと朝から土曜日にあるでかいコンサートのリハーサルがあるのです。

厚かましくもお願いしてリハにお邪魔できる事になりました♪


着くなり、すさまじいリズムのツインドラムが聴こえます。

ルイ先生はドラマーでもありますが、コンポーザー(作曲家)でもありディレクター(音楽監督)でもあります。

キューバでは音楽の仕事をしている人は音楽教育を幼少から受け、他の子供が外で遊んでいる間もひたすら練習と音楽の知識をつけ、音楽家となります

そのため、ドラマーであっても楽器演奏、楽譜の読み書き、ソルフェージュ、作曲など多岐にわたるスキルを持っています。ルイ先生はその中でも輝く存在で、今演奏されている曲の中にも彼が作曲した曲があります。


ツインドラムのリズムはこれまで知っているのものとは比べものにならないほど凄まじいもので、

ビッシリと書き込まれた譜面を見つつ、淀みないリズムのメロディーが奏でられています。

これを見ているだけで、自分の演奏技術の未熟さを痛感します。

砂場の山とエベレストほどのレベルの差を感じざるを得ません。



しばらくツインドラムの演奏が続いた後、バンドの練習が始まりました。

音楽そのものが素晴らしいだけでなく、

リハーサルそのものも素晴らしいものです。


皆が笑顔で楽しみながら高度な演奏を行い、音符の読み間違えやリズムのタイミングの誤差に注意を払います。

全員が全員の音をしっかり聴けている状況です

しかもすさまじいハイレベルで。


リハーサルが終わった後、ルイ先生に

「素晴らしいリハーサルでしたね!真剣でありながらも笑顔が絶えない、まさに理想的なリハーサルですね。」と話しかけると、

彼は「音楽だから、楽しまなくちゃね。当たり前のことだよ。」と答えました。

うーん、大先生、尊敬します!!


プロのレコーディングスタジオで体験した音楽の奇跡!

別の日には、キューバのレコーディングスタジオを訪れました。

ルイ先生のレコーディングで、これまた図々しくお願いして立ち合いさせていただける事になりました(笑)

ここはプロのレコーディングスタジオで、広々としています!

複数のレコーディングスタジオとマスタリングスタジオがあり、ロビーにはカフェも併設されており、お酒も楽しめます。


緊張感や焦りは一切感じられず、リラックスした雰囲気に包まれています。

セッティングサウンドチェックを終えて、ついに録音が始まりました。


ヤバ過ぎです!!

その演奏は言葉では表現しきれないほど素晴らしかったです。

ピアノ、ベース、ドラムのトリオ編成で、一発録りで行われましたが、非常に高度な演奏がズバッと繰り広げられていました。

録音が終わった後、演奏者たちは何もせずにお茶を楽しんでいました。

驚くべきことに、これが単なるサウンドチェックだったのです。


その日は4度の本番テイク録音が行われましたが、その都度完璧な演奏を披露していました。

  • テイク1=ちょっとBPM(テンポ)が遅いからボツ

  • テイク2=完璧に思えたのに、ディレクターがソロの雰囲気がもっと違うのが欲しいとの事でもう1回

  • テイク3=ベストテイク!と思われた所にルイ先生がピアノとの意図が少し違ってしまったのでもう1度やりたいと


誰も演奏に対する間違いなどの指摘はなく、演奏がガンガン突っ込んで行っているように聴こえてもクリック(メトロノーム)とほぼ完璧に同期していることに気づきました。

それはまるで魔法のようでした。

演奏の一部分が若干早いと感じられる場面もありましたが、誰もがそれに気に留めませんでした。

アンサンブルがあまりにも完璧で、微調整がほとんど不要だからです。


日本でレコーディングエンジニアの仕事はというと、現状では鬼のような修正がほとんどです。(旧○ャニーズの楽曲では、歌詞の1文字ずつ音程を直していくとか

それが全く必要ありません!

この状況は日本で考えられない!なんて楽なんだ!!


鳥肌が立つような経験を終えて、キューバのレコーディングスタジオを後にしました。


まとめ

キューバ音楽はその多彩なリズムシンコペーション、そして文化の融合から生まれる魅力があります。

西洋の要素とアフリカの音楽要素を融合させた独自の響きを持ち、その研究は人類学的にも、まだ新たな領域であると述べられています。


こうして実際にキューバを訪れて音楽を学び、地元のアーティストたちと交流した経験が、

皆さまの音楽の練習や成長に少しでも役立てたら幸いです。


新作アルバム、Versiones de La Academia

僕の愛するキューバについて語りましたが、キューバ発のアフロキューバンリズムとジャズが融合した楽曲を発信し続ける"ルイ・ロペス・ヌッサ & ラ・アカデミア(Ruy López-Nussa y La Academia)"が、カバーアルバム「Versiones de La Academia(ヴェルシオネス・デラ・アカデミア)」を2023年11月にリリースすることが決定しました。


このアルバムは、世界中の有名曲をアレンジしたもので、キューバ音楽への入り口として非常にオススメです。

  1. 「Human Nature」 - Michael Jackson

  2. 「No Woman, No Cry」 - Bob Marley

  3. 「Could You Be Loved」 - Bob Marley

  4. 「April in Paris」 - The Count Basie Orchestra

  5. 「Samurai」 - Djavan

  6. 「Nostalgias」- Juan Carlos Cobián

など、多彩な曲が収録されています。

皆さん、ぜひ「Versiones de La Academia」をチェックしてみてください!


▶︎配信リンク: https://lnk.to/9tAPyv1m

キューバのトップドラマー兼打楽器教師、ルイ・ロペス・ヌッサがリーダーを務めるキューバンジャズグループが、カバー曲を集めた4thアルバムを発売。アメリカンJazzの名曲も収録されているが、それ以外のチョイスもキューバンジャズとバツグンの相性!アレンジ担当のロベルト・ガルシア氏の独創性が凄すぎて、音の万華鏡を見るよう。新たな発見が待っている1枚!

品番 iota-044
配信開始日 2023.11.01
収録曲数 全6曲
収録時間 29分


Spotify
(クリックすると音楽が流れます)


ライター
Zin Atrevido Hitoshi

収録曲より【Human Nature】


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【studio iota label】

日本のレコード会社 studio iota label では音楽の制作・販売、輸入、WEBコンテンツの発信、企業のWebライティング、動画BGM製作、アーティストやお店などの写真撮影、作曲・編曲事業、レコーディング・ミックス事業などを行っています。

【ウェブサイト】http://studio-iota.com/
【note】https://note.mu/nagareruiota

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