【マッチプレビュー】2023 J3 第4節 カターレ富山vsAC長野パルセイロ
2023 J3 第3節振り返り
試合結果
3月18日・19日に行われた2023シーズンJ3第3節、各会場の結果は上記の通りである。ホームチーム勝利試合が3試合、アウェイチーム勝利試合が7試合となった。ドロー決着の試合はなく、全ての会場で勝敗がついた。また、アウェイチームの勝利割合が非常に高い週末になったと言える。FC大阪、福島、鳥取、長野は、ホーム開幕戦であったが、地の利を活かしきれずに敗れた。ホーム開幕戦で勝利したのは、富山だけという結果になった。入場者数で比較すると、ホーム開幕戦の会場の数値が比較的高くなっていることがわかる。富山以外のホーム開幕クラブは、敗戦を見せてしまったわけだが、今後の入場人数にも影響してくるだろうか。
そして、各会場のスコアも俯瞰してみると、かなり得点が動いた節になったのではないだろうか。良くも悪くもJ3らしさが前面に出た興味深い週末になった。
順位表
開幕3試合を終えて首位に立ったのは松本。そして、同勝点で琉球が2位につけている。特筆するべき成績はやはり松本だろう。攻撃が持ち味と言われる霜田監督体制でも、持ち味の堅守を継続している。そして、昨季は課題に上がっていた攻撃面も1試合平均2得点と克服傾向にある。アウェイ3連戦を終えて、最高の状態でホームに戻る松本に他クラブはついて行くことができるだろうか。
一方、厳しい開幕スタートとなっているのは、YS横浜と福島。3連敗を喫し、J3オリジナルクラブとして厳しい戦いを強いられている。加えて、今季のJ3下位には、J退会という大きな問題が付き纏う。前半戦を調整期間に使って後半戦で…という戦い方では、手遅れになる可能性が高い。まずは、両クラブとも、勝点3をいち早く掴むことが必要になってくるだろう。
雨降って地固まるか
今週末は第4節が行われる。おそらく、この4節の結果次第で今季のJ3の様相はだいたい把握できるはずだ。特に、注目試合は、松本vs宮崎と琉球vs福島だろう。ここまで2勝1分と好調な滑り出しを見せた松本と琉球。第4節の対戦相手は、開幕から厳しい戦いを強いられている宮崎と福島。ここで、3勝目を勝ち取れば、昇格争いを牽引する2クラブとして追い風が吹くはずだ。一方で、宮崎や福島が勝利すれば、一気に今季のJ3も混沌を極めることとなる。今季のJ3の様相を決定するかもしれない松本、琉球の戦いに注目したい。
そして、忘れてはならないのが我らがAC長野パルセイロ。前節は4,000人を超える観客がホーム開幕戦に詰めかけたが、0-3で昇格組の奈良に完敗。スコアほどの差はなかったことは、マッチレビューで確認したが、やはり3失点を喫してのホーム開幕敗戦は手痛い。ここで勝点3を掴んで持ち直すことができるかが非常に重要になる。
それでは、早くも序盤の正念場となった富山vs長野をプレビューしていく。
マッチプレビュー
通算対戦成績
長野は富山に対して、J3通算7勝4分6敗を記録している。数字だけ見れば、五分の成績になっていると言えるだろう。過去の対戦成績は以下の通り。
同対戦カードは通算成績が拮抗しているということもあり、やられたら当該シーズン中にやり返す流れが鉄板になっている。いずれかのクラブがシーズンダブルを達成したのは1度のみ。また、スコアもほとんどの試合で似たような数字が並んでいる。2015シーズンから気づけば9年目のJ3での対戦。9年間共に昇格争いに加わったこともあれば、共に昇格争いからは早めに脱落したシーズンもある。今季の対戦はどちらが先手を取るだろうか。
富山のホームゲームに限った戦績を確認すると、長野は富山に対して2勝3分3敗を記録しており、負け越している。更に、直近2シーズンは4試合続けてホームチームが、アウェイチームを完封して勝利している。データ的に考えると、やや富山が優勢に見えるが、順当に富山が連勝を掴むのだろうか。はたまた、長野がリバウンドメンタリティを見せ、アウェイで勝利を掴むのか。非常に楽しみな対戦カードである。
昨季対戦の振り返り
前半戦は、富山のホームに乗り込んでの一戦。当時富山はクラブ記録に並ぶ5連勝を継続中。最高の波に乗った状態で長野を迎え撃った。長野は、富山戦直前で八戸に勝利。1ヶ月程度遠ざかっていた勝利をホームで掴み、上向きになりかけた状態での対戦だった。
前半の主導権を握ったのは富山。5連勝の勢いそのままに前線から圧力をかけ、長野のビルドアップのミスを回収する。セカンドボール回収は富山が非常に優れていた印象だ。13分にカウンターで富山が先制し、流れは富山に傾いた。しかし、20分頃から雷雨によって試合中断となる。物理的に流れを切ることができた長野が、中断明け以降は主導権を握る。
後半は、基本的に長野が富山陣内でブロックを崩すべく、左右に振り続ける試合展開に。長野は何度も決定機を作ったが、1-0勝利を重ねて絶好調だった富山DFに穴を開けることはできず。1-0で富山の勝利となった。
後半戦は、長野のホームに富山を迎えての一戦。長野は、第14節で富山に敗れて以降、怒涛の追い上げを見せた。富山戦の直前に行われたアウェイ讃岐戦で劇的勝利を飾り、シーズン初の3連勝を達成した。3連勝かつ5戦負けなしと調子は完全に上向きな長野。対する富山も、第14節ホーム長野戦に勝利し、クラブ記録の6連勝を達成。その後は上位対決で勝ちきれなかった試合があったものの、下位相手に確実に勝点を積み、昇格レースの第2グループにつけていた。
長野は、コロナ感染者によりスカッドから6名が離脱するアクシデントが発生。対照的に富山は、直前までコロナ感染で離脱していた選手が全員復帰しての試合だった。前半戦の対決では、長野がボールを握る時間帯が長かったが、この試合の長野は良い守備からの攻撃を重視。富山の3バックにボールを握らせ、中盤に差し込んだボールを刈り取って素早いカウンターに移すことが目的だった。狙い通りの形から山本がスーペルゴラッソを突き刺して、1-0で長野が勝利。見事に前半戦の借りを返す結果となった。
前節の振り返り
富山は前節、ホームに北九州を迎えての一戦。第2節で沼津に敗れ、連敗だけは避けたい状態。スタメンを6人入れ替え、撃ち合いを制し、見事に勝点3を掴んだ。
両クラブ共に右サイドの攻撃を軸に相手陣内に進入しようという意図が見られた。しかし、お互いに決定的場面を創出することができずに、硬い試合展開が進む。そんな攻防の中で先手を奪ったのは、富山だった。末木(富山)からのスルーパスに吉平(富山)が抜け出し、追走する北九州DFをいなして冷静にゴールに流し込んだ。そして、前半終了間際に本村(北九州)に対して、前線からプレッシャーをかけて高い位置でボール奪取。PA内でシュートモーションに入った安藤(富山)を本村(北九州)が倒してPK判定。このPKを吉平が落ち着いて決めて、前半のうちにリードを2点に広げた。
しかし、後半に入ると北九州が反撃に出る。野瀬と岡田という昨季のJ3で実績十分なサイドアタッカーを活かして富山陣内に進入していく。48分、坂本(北九州)からのクロスが流れ、ファーサイドで詰めた乾(北九州)が得点を奪う。そして、66分には、岡田(北九州)&野瀬(北九州)のコンビネーションで右サイドを崩してクロスを上げる。ファーサイドで待ち受けていた乾(北九州)が頭で合わせて同点に追いつく。同点決着濃厚となった試合終盤、田川(富山)のロングフィードからPA内に進入し、髙橋(富山)が倒されPK獲得。このPKをアルトゥールシルバ(富山)が冷静に決めて、試合終盤に富山が勝ち越しに成功した。そして、3-2で試合終了を迎えた。
長野は、前節、ホームに奈良を迎えての一戦。2023シーズンのホーム開幕戦だったが、0-3と結果は完敗。負けなしのホームチームと未勝利のアウェイチームという対戦だったが、アウェイチームが今季初勝利を完勝の形で掴むことになった。
前半から長野はプラン通り、"賢守"から流れを引き寄せて行くスタイル。奈良は、ボールを握ることに長けたチームなので、長野のブロックの外を難なく動かして行く。しかし、長野は、奈良の攻撃起点となる縦パスを綺麗に収めさせることを許さなかった。良い流れで試合を進めていたが、ロングボールの処理を誤り、奈良に先制点を献上する。ビルドアップで焦りが見られ、精細さを欠いた長野は、良い形でシュートまで運ぶことができずに得点を奪えない。反対に、長野のミスを突く戦いにシフトした奈良が、ショートカウンターから長野ゴールを襲う。終わってみれば0-3。自分たちのミスでリズムを崩しての大敗を喫した。
予想スタメン
富山は4-4-2の基本システムを予想。GKは田川。4バックは右から大山・林堂・下堂・安光。ダブルボランチに末木・坪川。SHに松岡・M.レイリア。2トップに吉平・川西を予想。沼津戦の敗北から6名入れ替え、北九州戦では勝利を掴んだ。このことから大きな変更は行われないはずである。しかし、長野がある程度守備ブロックを固めるチームであるため、セットプレーで相手の脅威になれる林堂や狭いスペースでも仕事のできる川西を起用してくると予想した。
長野は3-5-1-1の基本システムを予想。GKは矢田貝。3バックは右から秋山・大野・佐古。アンカーに西村。WBに船橋・杉井。IHに佐藤・三田。トップ下に進。1トップに山本を予想。前節の敗戦を事故と捉えるのであれば大きな変更は行わない可能性が高いが、敢えて強気の予想をした。まず、池ヶ谷が前節の退場処分でベンチ入りできないため、その代わりに佐古がスタメン起用されるはず。そして、富山の武器は強力なサイドアタッカー。松岡とM.レイリアはカットインを得意としており、今まで以上にアンカー脇の守備が重要になる。そのため、IHに運動量と球際の強度に特徴を持つ佐藤・三田を予想。こぼれ球を西村の長いリーチで拾うという狙いだ。連敗するわけにはいかない長野側の方が、スタメン変更の可能性が高いと予想。
注目ポイント
富山vs長野の試合で注目したいのは以上2点。第一にロングカウンターは、長野が注意しなければならないポイント。末木や坪川、碓井といった富山のボランチは、守備の隙があれば吉平の動き出しをどんどん活用してくる。長野は、3バックのボールサイド側に高い位置を取らせることで、攻撃に厚みを生み出す。その反面、大野の走力頼りな最終ラインになる瞬間がある。常に警戒していないと、一瞬の動きだしで手遅れな状況を作り出される可能性がある。前節、課題として浮き彫りになったGKとDFラインのコミュニケーションも試される試合になるだろう。
第二にサイドの攻防。おそらく、この試合でも長野は守備時に5-3-1-1の守備ブロックを構える。この時に富山のSBに対するアプローチが遅れる。長野は開幕から3試合続けて、この点を許容しながら"賢守"を構築しようとしている。前線からの制限が確実にかかっている時は問題ないが、IHがアプローチに出た背後のスペースは、相手にとって絶好の狙い所。確実にサイドで圧縮しきって、ボール奪取ができるのかが重要な鍵になるだろう。
まとめ
富山は前節、スタメンを半分以上入れ替えて、沼津戦の敗戦を払拭する勝利をホームで掴んだ。今節もホームゲームになり、貴重なホームゲーム2連戦の機会で連勝を掴みたいところだ。また、非常に選手層が厚く、クオリティの高い選手が揃っている。組織としての完成度は、まだまだ向上の余地があるかもしれないが、個人による打開能力で相手守備に風穴を開けられる選手は揃っている。松本や琉球に食らいつくためには、第4節時点での連勝を達成したい。
長野は前節、ホーム開幕戦で衝撃の大敗を喫した。スコアに表れているほどの差はなかったように思えたが、どれだけ持ち直すことができるか。先日、近藤の負傷離脱リリースもあり、厳しい台所事情も察することができるようになってきた。しかし、誰が出ても"強いパルセイロ"を構成することは変わらない。勝てなかった試合の後こそ、非常に重要な戦いになる。現地に乗り込んで、DAZNの画面越しに、それぞれの形で我らが長野を応援しよう。チームには"賢守猛攻"の姿勢を、特に前節無得点で終えた鬱憤を"猛攻"としてピッチ上で表現してほしい。
獅子よ、千尋の谷を駆け上がれ。