見出し画像

リモートマネジメント 10の悩みと対策(前編)

\マネジメントスクール&コミュニティ「Emo」受講生募集中/



はじめに

今回はリモートマネジメントで良く相談される10個の悩みについて、その対策を書きたいと思います。

リモートになると何が難しいのか

まず、リモートになるとどんなことがマネジメントの障壁になるのでしょうか

■見えない
・メンバーがデスク・オフィスで働いている様子や表情が見えない

■聞こえない
・メンバーがデスク・オフィスで話している声が聞こえない

■感じられない
・リアルで会うからこそ感じられるメンバーの感情の機微が感じられない

■伝わらない
・リアルだからこそ伝わる自分の表情・感情・声のトーンなど非言語情報が全ては伝わらない

■発生しない
・リアルだからこそ発生していた意図せぬ偶発的な会話・交流が発生しない

リアルの場ではこれらがあったからこそ、「何となく」「感覚で」マネジメントが成立していたこともあったかと思います。

では仮にフルリモートだとして、マネジメントにおいて上記が原因で不可能なことはあるのでしょうか?

マネジメントにおいては、無いと思います。

たしかに「何となく」「感覚で」できないことはたくさんあります。
より「ちゃんと」やらないとできないことはたくさんありそうです。
ですが、できないことはありません。

リモートだからこそ、感覚ではなく技術でマネジメント業務を行っていくことが求められていると考えています。

良くいただく10の悩みについてどのような技術をどう発揮すれば解決できるのか、ということについて書きたいと思います。

10の悩み

①メンバーの動きが把握しにくい
②メンバーのコンディションがわからない
③チームの熱量を上げにくい
④疑心暗鬼になる
⑤現メンバーとリモート入社メンバーの関係作りが難しい

⑥説明に対するリアクションがわからない
⑦会議のマナーの認識がバラバラで会議が非効率
⑧報告・相談が上がってこない
⑨指示がしにくい
⑩本音で話せてもらえている感じがしない

今回の前編では①~⑤までを解説します。

①メンバーの動きが把握しにくい

皆さんが把握したい「動き」とは何でしょうか?
メンバーの一挙手一投足=動作はたしかに把握しにくいと思いますが、それが把握したいわけではありませんよね?把握したいのは業務の取組状況だと思います。

メンバーの業務カテゴリ分け

画像1


メンバーの業務は上記の図のように「定点確認」「お任せ」「共同ワーク」「育成」の4つのゾーンに分かれます。
皆さんが把握したいと思うメンバーはどのゾーンで業務をしていますか?

業務に応じた把握のやり方があります。

①定点確認ゾーン
定例オンラインmtgで確認すれば良い
②お任せゾーン
チャットで業務報告をもらえれば十分
③共同ワークゾーン
不定期で頻度高くチャットやオンラインmtgをする
④育成ゾーン
育成目的に合わせて定点確認or共同ワークを選択

冷静に考えれば一挙手一投足全部把握する必要なんてありません。

以下のような表を活用し、誰のどの業務をどのように把握するのか整理しておくと落ち着いて、確実にチームの業務全体を把握できます。

画像9

②メンバーのコンディションがわからない

心身ともにメンバーがどのような状況にあるのか、リアルではその様子を感じられていたことがオンラインでは感じにくいかもしれません。

では、1on1を増やせば良いのか?それではマネージャー・メンバーともにその時間がアドオンになり、業務がひっ迫します。

1on1の短尺化x高頻度化

画像3

コンディションの確認では、メンバーとのコミュニケーション内容ももちろん重要ですが、「様子」がわかることが大事なのではないでしょうか?
であれば、1回あたりのコミュニケーションの深さよりも「頻度」が重要なはずです。

朝会など毎朝ショートのmtgで様子が確認できるのであればそれで良いですし、そういう機会がない、あるいは人数が多くてその機会だけではわからない、という場合は1on1の頻度を上げ、1回あたりの時間を減らしましょう。

たとえば月に1回60分1on1をしているなら、(15分x4週)や、(10分x3週+30分x1週)など、1on1の短尺化x高頻度化でコンディションを頻度高く確認できるようにします。

文鎮型組織⇒構造型組織⇒小構造化

画像2

メンバーをきちんと見れる体制作りもより重要になります。
自分が直接担当しているメンバーが一定人数を超えれば(業務の種類や状況にもよりますが、1人のマネージャーが直接きちんと見れるメンバーは7名程度が限界なのではないでしょうか)、文鎮型組織から構造型組織へ移管が必要です。

これもリアルであろうがリモートであろうが変わらないのですが、リアルの時は何となく様子も見えているのでと騙し騙し文鎮型組織で乗り切ってきた場合は、リモートでは大きな課題になります。

構造型組織への移管をより強く意識して、実行していかなければなりません。

また、リモート下においては1チームあたりの人数を少なめ(理想は3~4名)にしておくとベストです。

③チームの熱量を上げにくい

リアルの場ではお互いの頑張っている姿が見えたり、声を掛けあって鼓舞し合ったり、熱く語り合ったりと、チームの熱量を上げる様々な行動が自然に発生していました。
では、そのようなことが発生しにくいリモート下において、チームの熱量はどのように上げていくべきでしょうか?

熱量の正体

これ

熱量の正体は、「意義」と「モメンタム」です。意義というのは、チームが掲げる目標を達成した先にどんな良いことがあるのか?その意味合いのことを指します。
モメンタムというのは、チームが高い目標に向かって着実にやるべきことを積み重ねられているという実感が生むチームの「勢い」です。

意義とモメンタムがあることで、チーム全体の熱量が上がり、メンバーがモチベーション高く仕事をすることができます。

双方ともに、リアルでもリモートでも変わらず大切なものなのですが、
リモートではお互いの熱気が、「見えない」「聞こえない」「感じられない」「伝えられない」という状態になるので、より強く「意義」と「モメンタム」を意識して創出し浸透させていかなければなりません。

リモート下での意義の創出

①意義の言葉を見える化する
②1人1人に刺さる形で意義を伝える

①に関しては、リモートワークで目に入るスペースに意義の言葉を掲示します。
オンラインmtgの背景、ドキュメントツール、チャットのトピックやピン留めなど、物理的な空間でなくとも自然と目に入りやすいところはあります
そこに掲示していきます。

②に関しては、チーム全体に広報するだけではなく1人1人に刺さる形で意義を届けます。

意義には3種類あります。

①社会軸
社会(顧客)に対してどんな価値を提供するのか

②市場軸
市場においてどのような地位になるのか

③自社軸
自分たちはどのような存在になるのか


これらの軸でアイデア出しを行い、チームとしては1つの言葉や文章にまとめるのですが、一方で、たとえば「社会軸には共感できるが市場軸には興味がない」というように人により刺さりやすい言葉の種類は異なります。

チームとして掲げる言葉や文章はありつつも、マネージャーは3軸全てにおける意義を頭に入れ、メンバー毎に刺さる軸で言葉を変えて話していき意義を感じてもらえるようにします。

リアルではチームの意義をあえて設定しなくとも雑談や飲み会の場で熱く語る中で自然とお互いの言葉に現れていたこともあったかと思いますが、リモートでは意識して意義を創出し、細やかにコミュニケーションを取って浸透させていきます。

リモート下でのモメンタムの創出

リアルでもリモートでも変わらない方法としては以下のようなものがあります。

・全体会議でチームの方針・アクションの進捗をわかりやすくプレゼンテーションする
・1on1、その他会議などメンバーとの接点でチームの進捗をアピールする
・外部発信を増やすことでメンバーに自分たちの成果を実感させる
・方針・アクション実現の手法の一環として副業等でハイレベルな人に関与してもらうことで成果への期待感を上げる

また、リモートマネジメントならではの手法では以下のようなものがあります。
リアルだからこそ発生していた「誰かの仕事が見える」「偶発的な会話で誰かの仕事を知る」といったことが起こらない分、以下のような工夫が有効です。

・メンバーの成果をマネージャーがきちんと拾い上げ、チャットツールで大げさに称賛する(多めの感嘆符やスタンプの活用など)
・振り返り頻度を増やして進捗・成果を実感しやすくする
・メンバー向けの報告資料を勢いが伝わるようにこだわって作る(オンラインだと資料の視認性・注目度が上がるので)

このようなことを行うことで、リモートであってもチームに勢いは生まれます。

④疑心暗鬼になる

疑い

あの人は本当に仕事をしているんだろうか?あの人はやる気あるのか?姿が見えないからこそ疑心暗鬼になっていきます。
事実無根の妄想が疑心暗鬼をどんどん大きくし、マネージャーやメンバー同士の感情を揺さぶることもあると思います。

疑心暗鬼を起こさないためにと業務時間中はチャットでオンラインにしていることを細かく確認される会社さんなどあると伺いますが、もっとメンバーを大人として扱う方法はないのでしょうか?

疑心暗鬼が起こる理由は、「ちゃんと仕事をしているか疑わしい」という気持ちです。「あの人ならちゃんと仕事をするでしょう」という信頼があれば疑心暗鬼は起こりません。

「成果出ればそれでいいじゃん」という考えにシフトすれば疑心暗鬼も無くなるよねと成果評価に振り切る会社さんもありますが、全ての人がそんなに簡単に感情を整理できるしょうか?
成果はQに1回、半期に1回など確認頻度が低いので、その間にやはり「ちゃんと仕事をしているのか」という疑心暗鬼が生まれてしまう人もいるのではないでしょうか。

マネージャーがメンバーに対して、あるいはメンバー同士で、疑心暗鬼に陥らず信頼の気持ちを持つにはどうすれば良いでしょうか?

ルールの遵守

ルール

ルールの設定と遵守はリアルでもリモートでも変わらないマネジメントの型の1つですが、リアルではルールがなくとも何となく信頼関係を保てていた組織でも、リモートでは疑心暗鬼を生まないために、意識して設定し運用する必要が出てきます。

ルールはマネジメントコストを下げる役割も担いますが、同時に「信頼の媒介」の役割も果たします同じことを守れたという事実の積み重ねがチームの相互の信頼感を生み出します。

ルールは最低限で構いません。ベンチャー企業らしい自由な雰囲気を失わない程度に、チームがチームであるための最低限のものを設定し、しかし厳格に運用してください。

その最低限のルールを守れば守るほど、チームの相互信頼感は増し、疑心暗鬼に満ち溢れた状態から脱却することができます。

⑤現メンバーとリモート入社メンバーの関係作りが難しい

リアルで関係性を作っていた場合は、リモートワークに移管したところでその関係性が薄くなることはそれほどないように感じます。しかし、オンラインで初めてそのチームのジョインした人とチームメンバーの関係性はどのように作ると良いでしょうか?
相互理解の施策が必要になるわけですが、相互理解にも2つの階層があります。

画像7


認知の相互理解とは、お互いの顔・名前・なんとなくの人となりを相互に認知するための機会です。たとえば以下のような施策があります。

・社員名簿
・自己紹介
・交流会(オンライン飲み会・ランチなど)

たしかにお互いを知る機会にはなりますが、それをもって深い信頼関係ができるわけではありません。新しくリモート下でジョインした人からすればそれだけでは不十分です。
いざ困った時に相談出来たり、時には仕事以外の話も気軽にできる仲間が必要です。仕事仲間としての相互理解が必要です。

仕事仲間としての相互理解形成方法は3つあります。

①つなげる
あるメンバーAに対しメンバーBのことをしっかり称賛した上で、またBに対してAのことを称賛した上で、AとBをつなぎ1on1をさせる

②仕事をする
マネージャーとメンバーAで完結できるプロジェクトであっても、メンバーBをあえて絡ませて、AとBが一緒に仕事をする機会を作る

③共に学ぶ
同じことを学び共通言語・認識ができた仲間同士で意見交換をしてもらうことで世間話よりも深いつながりを作る

リモートでは濃い関係性は自然発生しません。
リモート下のマネージャーは認知としての相互理解の場作りにとどまらず、「コミュニティマネージャー」として、メンバー同士が濃い関係を築けるよう、点と点の接続を丁寧に行います。

謝辞

画像5

本記事の内容は、当社が開催し、選抜されたベンチャーマネージャー21名が通ったマネジメントスクール「EVeM MANAGEMENT ACADEMIA」の最終回ワークショップ「リモートマネージャー」でのアウトプットを大いに参考にしています。

本ワークショップでは、「ベンチャーマネージャーのマニュアル」をリモートマネジメントで運用する際のポイントはどのようなものがあるか?という問いを立て、多くの現役ベンチャーマネージャーが議論しました。

彼らがリモートマネジメントに向き合う中で考え、見出した、机上の空論ではないリアルなマネジメントノウハウが本記事に盛り込まれています。

▼後編はこちら

▼YouTubeチャンネルはこちら

▼成果の出るベンチャーマネジメントの型を教える株式会社EVeM

▼ベンチャーマネージャーのマニュアルを実践するノウハウをまとめた書籍が販売中!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?