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写研って知ってますか?

こんにちは!NadiaのYです。

勝手にアナログ回顧シリーズ第2弾です。(第3弾があるかは不明)
みなさん本は読んでいますか?その目的は情報収集ですか?気分転換ですか?好きな作家さんが居るからですか?目的は人それぞれですよね。
でも私は本は紙で読みたい派です!!

情報が溢れ、良きにつけ悪しきにつけ、それを処理しないと時代に取り残されるんだな。とコロナワクチンの予約が開始したときの騒動でしみじみ思いました。

インクの匂いって思い浮かびます?

アイデア出しする時、今ほとんどの人がPCなりタブレットなりに向かって検索して何かのきっかけを探していると思います。インターネットが市民権を得たのは二十世紀も末1995年に WINDOWS ‘95が発売されたあたりからだと勝手に思っています。
社会現象になってパソコンを持ってないのに買い求めた人が結構いました。(冗談抜きで)

ではそれ以前、検索などという概念がなかった時どうやってアイデアを捻り出してたんでしょう?
ある人はビデオを借りて(レンタルビデオ以前は足しげく映画館に通って)映像を片っ端から観まくる。(そう考えると今やベッドで世界中の映像を観れるんだからびっくりですね)
ある人は旅に出て見識を深める。(古くはマルコ・ポーロや松尾芭蕉)
またある人は本屋さんへ。

私も本屋さんへ通い詰めた一人でした。お気に入りの本屋、目的別に
「このジャンルはあの本屋」などと刑事ドラマの情報屋のように自分だけの
本屋を探し出していました。本屋さんは今でも大好きな場所ですが、一つだけ困ったことがありました。
それが「青木まりこ現象」です。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9D%92%E6%9C%A8%E3%81%BE%E3%82%8A%E3%81%93%E7%8F%BE%E8%B1%A1
(wikipediaより)
それでも、インクの匂いが好きでした。

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写植屋さんの職人芸

そんなこんなで、今はWeb画面上での制作が主な生業としていますが、
どうにもこうにも馴染めないものがあります。
それが文字詰めです。
プリントですとDTP以前は版下というものがあり、文字が決まる写植屋さんに発注して印画紙に焼きつけた状態でタイプした原稿が届けられました。
文字によって大きく見える文字、小さく見える文字重心が高く浮き上がって見える文字などがあり、腕利きの写植屋さんですとその辺の字間を調整して仕上げていました。
(もっとも逆もあって、そんな時はカッターで切り貼りして調整をしたりもしました。PCでのカーニング作業を手貼りでやると言えば想像つく方もいらっしゃるでしょうか?)

印画紙に焼きつけて出力されるので、意図的にピントを少し甘くしてエッジの柔らかな文字にするというようなアナログならではの裏技もありました。
Webの画面上では情報の伝達手段として文字の羅列は特化されているので
それができないのが、非常に歯痒く感じているのです。

昔の紙の本、小説などはそういった処理がされていました。だから読みやすかったり行間を想像したりとイマジネーションを膨らませられたんではないかと思っています。

そして、それらを表現するための写植の文字も、実は今廃れてしまった書体が数多く存在するのです。

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時代と共に…

冒頭でインターネットの市民権が1995年からと書きましたが、私見ですがDTPへの移行も、この年を境に一気に進むことになったと思っています。原因はインターネットではなく神戸の震災です。
この揺れによって活字がぶちまけられ一つ一つを拾うのが億劫になり、時代の流れと相まってDTP化が一気に加速したと考えています。

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今、この業界にいる人であればモリサワを知らない人はいないと思いますが、写植当時から存在はしていました。そしてそのシェアは関西で高かったのです。
そんな背景もあって積極的にモリサワはDTP化を促進します。
片や、関東でのシェアが高かった写研は震災の被害を被っていなかった事もありますが、当時の文献を読み解くと写研の経営陣が時代を読み誤りデジタル対応を渋ったというのが定説となっているようです。(前項で書いた写植の職人を守るためというのもその理由の一つではあったそうですが)

我々デザイナーはというと、当時そこまで頑なになるとは想像もしていなかったので、2〜3年もすればまたあの美しい写研のフォント(特に明朝)が使えるようになると、たかを括っていました。
しかし、そのまま写植職人と共に写研は表舞台から姿を消してしまったのです。

縦横の太さのバランスが絶妙な段階で揃ったファミリーをはじめ、個人的にはいつかは…と思っていただけに残念に思っていました。
デザイナーでも写研のフォントを知る人は少なくなり、知っていても モリサワ=現代的、写研=昭和というような印象で捉えられているのが現状です。
Web文化は縦書きはあまり求められないので、そういった面でも長所をスポイルされてしまった感は否めないです。
しかし、個人的には日本の文化的な損失だと感じていました。

朗報!!

ところが、今年になって私にとっては吉報が舞い込みます。

「モリサワ OpenTypeフォントの共同開発で株式会社写研と合意」
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2101/21/news057.html(IT media NEWSより)
いや〜良かった。なんか知らない間にshakenという英語表記のロゴに変わっちゃったりはしているようですが、日本の文化が失われずに良かったという感じです。
今後、新たに写研フォントと出会うデザイナーたちが新たな表現を創り上げてくれるのを見るのが非常に楽しみです。
願わくばサイト上でも文字間の制御が効くともっと良いのですが…。

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