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スキ銀行 note支店の新人さん


こんにちは、なちこです。

最近、
よく見かける『スキがお金に』という企画。

ひろみさんも参加されていました。

なちこは、桃色担当です( •̀ω•́ )✧

そして、この企画を考案した、PONOさん!


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◎この企画のルール

「スキの数がお金の世界」の
ショートストーリー 

●”スキ”するのは無限にできる。
 (相手のお金になる)
● ”スキ”の数がそのまま収入になるけど、
   数は自分にしかわからない。

このルール、
スキの数は自分にしか分からないけど、
人に教えてはいけない…とは書いてない。

と、いうことで、なちこは特例を作る。笑

この作品に出てくる人について、
全てフィクションです。

名前だけお借りしました。

最後にたくさんリンクを貼りますね!

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◎スキ銀行 note支店の新人さん


「いらっしゃいませ」

ここは、スキ銀行 note支店。

【現行の通貨を撤廃し、スキを通貨とする】

30年前、当時の政権が決めた、新しい政策。

その煽りを受けたのが、銀行だ。

急な新制度によるシステム変更、
通貨が変わることで混乱したお客様への対応、
様々な社内研修の日々。

「銀行」というものが不要になった社会では
メガバンクから地方の信用金庫まで、
一時は全て閉鎖することが決まり、
多くの行員が職を失いかけた。

無理やり押し通した政策による大混乱、
経済界や市民は激怒し、国会に詰めかけた。

特に、この制度によって生まれる失業者数と
歴史ある銀行が閉鎖に追い込まれる事態を
一部の活動家が見逃すはずがない。

これはチャンスと言わんばかりの猛抗議。

連日行われる国会前でのデモは暴動に近く、
一時は国会周辺の立ち入りが制限された。

戦後初めて『一億総決起』という言葉が流行、
流行語大賞にノミネートされてしまった。
(さすがに受賞はしなかったのだが)

このままでは総辞職が濃厚となり焦った内閣は、
「スキを通貨にする政策に変更はないが、
   一部特例を設ける」と発表したのだ。

その「特例」こそが、スキ銀行だ。

”スキ”の数を他人に知らせることを禁ずる。

しかし、既存の銀行を統合し、
新たにスキ銀行を発足する事とする。
各種ローン申請時のみ、前年度のスキ又は
本年度のスキ見込数を申告し、借入審査を行う。

スキは無限に与えられるとは言っても、
家を購入するには何千万スキも必要とする。

資金繰りが厳しい企業は借入を必要とする。

この制度が始まって30年経つが、
未だに借入を希望する人、企業が後を絶たない。

この『特例』によって混乱は終息、
その後はスムーズに移行されていった。

そう、私たちスキ銀行の行員は、
本来は知ることを禁止されたはずの
「他人のスキ数」を知ることが許されている。

ただし、情報を外部に漏洩させた場合、
終身刑もしくは国外追放という
厳しい罰則が設けられている。



私がスキ銀行 note支店に入行し、
3ヶ月ほど経った。

初めて知る、他人のスキ数。

1年間で365スキしか持たない人もいれば、
その何千倍もスキを稼ぐ人もいる。

銀行は、債務者から利息としてスキを受け取り、
それが私たちの給料として支払われる。

現在、この国に「給料」という概念はない。

しかし、最重要機密事項を取り扱う
銀行員の精神的負担を慮った政府が、
「利息としてスキを受け取り、行員に分配する」ことを許した。

……政府、なかなかやるじゃないか。

私のような新人も、支店長も、
全員が同じ数のスキを受け取っている。

【それなのに】

どう見ても高価なスーツに身を包み、
高級外車に乗っている支店長。

それに比べ、私は安いスーツを着て、自転車で30分かけて通勤している。
中古の軽自動車を買う余裕すらない。

ある日の昼休み、
私は意を決して支店長に尋ねた。

『支店長、お食事中に失礼します』

『あぁ、どうしたの?』

『あの、教えて欲しいことがあります』

『なんだ、急に。座りなさい。』

『ありがとうございます。』

『相談でもあるのか?』

『はい。支店長と私は、毎月同じ数のスキを受け取りますよね。』

『ああ、そうだね。』

『それなのに、支店長はスキをたくさん持っているように見えます。それに比べて私は、毎月スキをが足りなくて、余裕のない暮らしをしていて。この差はなぜでしょうか?』

『あぁ、そういうことか。』

そう言って、支店長は懐かしそうに微笑んだ。

『私も新入行員の頃、同じことを悩んだよ。』

『え?支店長もですか?』

『ああ、君、最近の生活を振り返ってごらん。』

最近……毎朝起きて、自転車に乗って通勤、
働いて、また自転車に乗って帰宅するだけ。

週に1度スーパーに行って、
あとは毎朝コンビニでタバコを買うだけ。

平日は疲れて帰ってきて、何もせずに寝てしまう。
週末も家の中でゴロゴロしているだけだ。

そういえば、最後に友達と会ったのはいつだろう。

学生時代は毎週ボランティアに行っていたのに、最近は全く顔を出していない。

『若い頃、俺も仕事に慣れるまではスキが足りなくて。仕事をしてる間もスキはもらえるが、最初はお客様と関わらないから、スキが少ないんだよな。よく先輩や支店長に飯を食わせてもらったよ。』

私たち、スキ銀行の行員が受け取る給料は
1ヶ月《50,000スキ》だ。

私個人が先月もらったスキは、1,000スキ。

会社が家賃を一部負担してくれていることで、
なんとかやりくり出来るくらいのスキ数だ。

『俺はね、家に帰ってから副業をしているんだ。君みたいな若い子たちの悩みを聞いたり、ブログで情報発信していてね。』

『副業……ですか?』

『まあ、昔は副業って言ったんだけどね。今は「仕事」の概念が変わってしまったからなあ。』

たしかに、今の私たちは働いて現金を貰わずに、
日々のコミュニケーションの中でスキを貰って生活している。

「副業」という言葉を使う人は少ない。

『その副業の中で、たくさんスキを貰っているんだ。俺は自分の経験をもとに、話してるだけなんだけどね。』

『私、自分自身が貰うスキのこと、考えていませんでした。そんな余裕なくて……』

『そうだね、悪いことをしたな。まじめさんはしっかりしているから、心配していなかったんだ。業務を見直して、仕事以外の時間を確保できるようにしよう。』

『ありがとうございます。』

『いやいや、こちらが悪いんだ。』

『支店長〜!ここにいたんですか〜?!聞いてくださいよ!!』

『なんだ、なちこくんじゃないか。』

『聞いてくださいよ!くらげさんに誕生日のスキを渡そうとしたら、スキはいらないから、タイガースの年間シートが欲しいって!!!私、最近ゲーム買ったからカツカツだって言ってるのに〜!支店長から怒ってください!』

支店長と私は顔を見合わせて、思わず吹き出した。

『え?!支店長もまじめさんも笑い事じゃないよ〜!!』

『そうだな、悪い悪い。君も最近忙しかったからな。』

『そうですよ〜。こんなに頑張ってるのに、スキが稼げなくて!!利息引き上げちゃダメなんですか?!最近 ローン組んだ中森さん、めーっちゃスキ持ってましたよ?!利息、10日で1割取りましょうよ!』

『ちょっと、ダメだよ、そんなこと言ったら!捕まるよ?!』

『あれー、あ、そっか!危ない!』

『やれやれ。笑』

『よし、今夜はみんなで飲みに行くか!なんでも好きなものを、好きなだけ食べなさい!』

『『え、すみません、それはいいです。』』

『え?』

『いやー、なちこ、飲み会とかダメで。』

『私もライターの方の記事を書かないと……』

『え、そ、そうか。じゃあ、向かいのひろみ弁当で、なにか注文しておいて、帰りに貰って帰りなさい。俺がスキを払うって言っておいて。』

『おー!!ないと支店長さま!なちこ、ステーキ食べます!』

『ありがとうございます、支店長!私はどうしようかな〜?』

『ひろみさんのお弁当、お手紙ついてて可愛いからすき〜。』

『あ、なちこちゃんも?私も集めてるんだ。』

『……はぁー、まあ、いいか。俺も今日コンサル入ってたな。』



ここは、スキ銀行 note支店。

【現行の通貨を撤廃し、スキを通貨とする】

銀行は、銀行としての役割、その大半を失った。

そんな中で、精神的負担が大きく、
業務量が多いスキ銀行に入行する新入行員。

スキを与える数、受け取る数に制限はない。

ただ、スキのやり取りをする機会は
自ら作らなければならない。

この制度を歓迎する人もいる、
新たに生まれた『スキの貧困』に悩む人もいる。

『スキの貧困』が無くなるまで、
このスキ銀行という「特例」は続くだろう。

いつか、スキ銀行は必要ないと言われる、
そんな日が来ることを祈るばかりだ。


……おしまい。


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◎出演者のみなさま

ないとさん
(ステーキ弁当ありがとうございます。)


まじめさん

(勝手に主役に抜擢してすみません。)


くらげさん
(年間シート、私も欲しいです。)


中森さん
(法外な利息を要求してすみません。)


ひろみさん
(私もお弁当にお手紙入れて欲しい……)

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