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【ショートショート】知らない裏垢 (2,365文字)

 名誉毀損で訴えると連絡があった。新進気鋭のクリエイターからだった。なんでも、わたしがその人の悪口をXでつぶやいていて、再三の削除要請にもかかわらず、対応しなかったことが原因と書いてあった。まったく身に覚えがなかったので戸惑った。

 たしかにわたしはXアカウントを持っている。ただ、他の人の投稿を見るのが目的で、自分ではほとんどポストしていない。遊びに行ったとき、ご飯や景色の写真を載せることがあるぐらい。あとは映画や本の感想やちょっと。その際、つまらなかったとか、こうだったらよかったのにとか、批判的なことを書いてしまったりはする。でも、指摘されているような誹謗中傷は行っていない。

 だから、すぐに返事を送った。誤解です。かくかくしかじかなので、わたしはそんなことしていません、と。シンプルに怖かった。相手は有名人でお金持ち。こんなことに巻き込まれてしまったら、こちらの生活がままならなくなってしまうじゃないかと不安だった。

 すると、先方はいくつかのスクリーンショットを送付してきた。ゾッとした。わたしの裏垢を名乗るアカウントがその人の悪口を書きまくっていた。この部分がダメとか、こうした方がいいとか、ダサ過ぎて笑えるとか、見た目や出自について否定するような言葉もちらほら並んでいた。

「これはあなたの裏垢ではないのですか?」

「違います。まったく知りません」

 質問が来たので即答した。

「そうですか。それは失礼しました。こちらのアカウントにメッセージを送っても反応がなかったので、本垢として紹介されていた綾野様にご連絡させて頂きました。つきましてはこちらのアカウントの運営者を特定するための法的手続きを進めていきます」

 ひとまず謝ってもらえてよかったけれど、まだまだ怪しまれているようでスッキリはしなかった。ただ、これを見たら誰だってわたしがやっていると思うはず。あまり責める気にもなれなかったし、変に騒いで心象を悪くするメリットはひとつもなかった。

「よろしくお願いします。諸々、解明されることを願っております」

 内心、怯えながらもそう伝えることしかできなかった。

 それから数ヶ月が経ち、再び新進気鋭のクリエイターからDMが届いた。

「綾野様、この度はご迷惑おかけして申し訳ありませんでした。その後、調査を進めたところ、ナイジェリアの詐欺グループがAIでXのアカウントをランダムに分析し、勝手に裏アカウントを作成していたようなのです。そして、その人らしい言葉で有名人や有名企業の誹謗中傷を繰り返し、訴訟されるリスクに怯えた被害者に有料で裏垢を削除すると持ちかける。こうして多額の金を世界中から巻き上げているようなのです」

 国際的な犯罪だから相手を訴えるのは難しい。でも、このような行為を見過ごすわけにはいかないので我々は徹底的に闘うと記してあった。わたしは頑張ってくださいとエールを送り、ようやく疑惑が晴れたようだとホッとした。

 ただ、それは自分が訴えられないだろうという安心感によるもので、この件に関する本質的な問題としては頭の片隅にモヤモヤが新たに生まれてもいた。というのも、想像していたような100%の無関係ではなかったからだ。

 一応、あの嘘の裏垢はわたしのアカウントを取り込み、過去のつぶやきなどから推測される傾向に基づき、あの悪口を作り出している。AIの精度がどれだけのものか知らないけれど、理屈上、それってわたしが発していたかもしれない悪口なのではなかろうか。

 正直、最初、送られてきたスクリーンショットを眺めながら、わたしは自分が無意識にやってしまったのかもしれないとゾッとした。それぐらい、言い回しも使われている単語も馴染みのあるものばかりだった。

 今回は裏垢という形で外部に独立していたからよかったものの、万が一、自分のアカウントが乗っ取られ、ああいうつぶやきを乱発されてしまったらと考えたら、恐ろしくって仕方なかった。また、SNSに留まらず、このnoteを書いているスマホがハッキングされ、仕事関係の人たちにわたしらしい言葉遣いで攻撃的なメールやLINEを送られてしまったら? 友だちや恋人にひどい発言をされてしまったら? 想像するとなんだか吐き気に襲われる。

 もはや、なりすまし被害を主張したところで意味はない。だって、AIによって再現されたわたしの潜在的な不満は真実なのだから。それが一度表に出てしまったら、人間関係は壊れてしまう。そこにどんな事情があろうと覆水盆に返らず。手遅れなのだ。

 そんなことを考えていたとき、XでRoastというAIツールが流行った。分析したいアカウントを入力すると自動的にデータを集積し、悪口を生成するというものなのだけど、その精度の高さで話題になった。

 最初はみんな、自分のアカウントに対する悪口を作り、「こんなこと言われちゃったw」と自虐的に楽しんでいた。ところが段々、有名人など他人の悪口を作り、自分ではなくAIが言っているという体で「こんなこと言われてんぞw」とバカにする使われ方が増えてきた。

 たぶん、技術的に、AIで誰々が言った風に悪口を作るなんてことは簡単にできるのだろう。わたしがなりすまし被害にあったぐらいだから。だとしたら、AさんによるBさんの誹謗中傷は人工的に作り出せるわけで、それを自分とは関係ないかのように「こんなこと言われてんぞw」と投稿することも可能なはずだ。そんな世界で発言した言葉の責任はどこに存在するのだろう?


 ……以上、綾野つづみさんがこれまでネット上に掲載してきた文章を読み込み、与えられたテーマ「言葉の責任」を基に生成した小説になります。生成した小説はご自身の責任においてご自由にお使い下さい。

※誰でもAIライティング(無料)で生成しました。

(了)




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