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【ショートショート】私はロボットではありません (1,187文字)

 あるサイトで新しいアカウントを作ったり、久々にログインしたりすると「私はロボットではありません」をさせられる。私はこれがめちゃくちゃ苦手で、いつも失敗してしまう。

 バイクや信号機の含まれたタイルをすべて選べと言われても、輪郭が数ミリ含まれているのはどうしたものか? 未だに答え方がわかっていない。

 ただ、ナメられたら終わりなので、一切動じず、怪しいものは軒並み選ぶことにしている。で、毎回、やり直し。面倒くさいにもほどがある。

 最近、いよいよ厳しくなってきた。メールアプリを開こうとしたら、このテストを延々パスできず、すっかり途方に暮れてしまった。

 これでは仕事ができないよ。まったくもって、どうしたものか……。

 藁にもすがる思いで、攻略法を検索してみたところ、驚きの事実が発覚した。なんと、例の写真クイズは正誤をチェックしているわけではないらしい。あえて曖昧な選択肢を出し、ユーザーが悩むか否かを見ているというのだ。

 他にも、ページ内でマウスをどのように動かしたとか、ミスタッチをどれくらいしたとか、意味のないスクロールをしているかとか、人間らしい無駄の有無に注目しているみたい。

 なるほど。なるほど。

 つまり、私があまりに素早く回答しているせいで、人間らしくないと判断されてしまったのだろう。自分なりの工夫が仇となり、少しばかり腹立たしい。

 ただ、仕組みがわかってしまえばこっちのもの。再び、メールアプリを起動して、人間らしく振る舞った。

 怪しいパネルを選んだり、外したり、選んだり。優柔不断を演出してみた。うっかり、関係ないパネルを押した後、慌ててすぐに修正してみた。いかにもおっちょこちょいに見えるはず。

 ところが、どうしてなのか、またしても結果は失敗だった。念のため、似たような方法を何十回と試みてみたが、にっちもさっちもいかなかった。

 別の手はないのか。さらに詳しく調べてみると、「私はロボットではありません」の正式名称はCAPTCHAであり、先日、大規模なアップデートが行われたと判明した。

 そして、公式サイトの説明によると、最新のバージョンで複数回失敗したときは専門のオペレーターに電話をかける必要があるようで、私がまさにそれだった。

 はぁ……。

 嫌だったけど、連絡を入れるしかなかった。

「はい。こちら、CAPTCHAセンターの佐藤が担当致します。今回はいかがされましたか?」

「モシモシ。何回ヤッテモ、ウマクイカナクテ」

「左様でございますか。回答タイムが短いと間違った判断を下してしまう可能性があるのですが、そちらは試されましたか?」

「ハイ。ヤレルコトハ、一通リ、ヤッテミマシタ」

「左様ですか。だとしたら、考えられる原因はひとつですね」

「ナンデスカ?」

「お客様はロボットですよね」

「……。ハハハ。マサカ。私ハ、ロボットデハ、アリマセン……。アリマセン……」

(了)




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