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どんなふうにもなれる<ガラスの海を渡る舟>

ガラスの海を渡る舟 著者:寺地はるなさん

今日はちょっとついていない。

人の些細な言葉も気になるし、傘も持ってこなかった。そう、いつのまにか良い悪いで分けてしまう自分がいる。そんな私に、本作の主人公の道(みち)は、自ら生きる姿勢と、妹の羽衣子(ういこ)に向き合う言葉を通してたくさん語りかけてくれました。

ガラス工房を始めることになった兄妹が一緒に過ごす10年間を描く本作は、妹の羽衣子が兄に対して嫉妬のような感情を抱いていることから始まります。
「道には目には見えないしるしがついている。この人はほかの人間とは違います」
一方、兄の道も羽衣子のことを苦手と思っていたのです。

友達だと思ったひとに傷つけられても、ひとを傷つけない道と、
道の言動に、もがき、認めて、ちょっとほめられて気分が弾む羽衣子。

お互いが理解できない二人は、父親と別居中の母親やガラス製作の恩師である繁實さん、葬儀社の葉山さんに見守られて、ガラスの骨壺作りに取り掛かります。
骨壺を依頼するひとたちの事情は様々で、娘を亡くした母親やゴールデンリトリバーの犬を亡くした女性など。

そして、「ガラスはどんなふうにもなれる」と話した祖父の言葉のように二人はガラス作りによって理解し合う同志になっていき、余分な力が抜けていくのです。

道が、悲しみを背負った母親に“準備が整っていなければ前を向かなくてもいいです”と伝える言葉に、無理に心を動かすことはなく、ブルーな感情も持ってていいんだなと気持ちが安らぐことを始め、寺地さんの本は、読み終わるとやわらかい風が吹き込み、じんわりとしたぬくもりを感じます。

もちろん、今回も

人とのつながりを感じられる あたたかい作品です!!!

追記:寺地さんの本は以下のマガジンにまとめて掲載していますので、よろしければご覧くださいませー。

🏳‍🌈おまけ

<ガラスの海を渡る舟>の本を購入できなかったおはなし、を以下に書いています。




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