ハグしてくれるひきこもりの方に会いに全国出張します
2021/12/14公開
2024/11/17更新
プロジェクト「私はフリーハグが嫌い」は
ひきこもり経験を持つ美術家と
ハグしてくれる ひきこもりの方を募集します
全国どこへでも伺います
自身も過去にひきこもり経験を持つ私(現代美術家/社会活動家・渡辺篤)はこれまで、ひきこもり当事者やコロナ禍に孤立感を抱く人々とアートプロジェクトを行ってきました。今回はアフターコロナに向け、新たなプロジェクトをスタートします。
コロナが収束した世界では、人々は集いスキンシップも再開するでしょう。けれどコロナ以前も以後も孤立せざるを得ない存在が、この世界には一定数居ます。例えばそれは「ひきこもり(※1)」と呼ばれる人々。今回、私はその人のいる場所に行って、対話やハグをしたいと思う。
「フリーハグ」と呼ばれるアクションを知ってますか?私はこれまでそれが嫌いでした。本当に必要な人には全く届いてない気がしたからです。ひきこもりの彼/彼女たちもきっとフリーハグをしたことない人ばかりでしょう。
私はフリーハグが苦手ですが、だからこそこれまでのフリーハグを更新したいと思ったのです。
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<ハグが必要な人とは誰か>
フリーハグとは「FREE HUGS」などと書かれたプレートを掲げ、見知らぬ誰かとハグをするアクション(※2)。日本では2000年代後半にブームとなり、特に東京・渋谷駅前でそれを見ない日はありませんでした。
私はフリーハグが嫌いです。見知らぬ誰かに抱きつきたいとも思いません。「リア充」に「リア充」が抱きついたところで、何を得られるのだろう?批判的に感じていました。一方、それだけでないことも知っています。意思を持って継続的にそれを行う人や、日韓友好を願う趣旨のものが話題になったことも知っています。しかし私には、本当にハグが必要な人には届けられもしないで、一体世界の何を変えられるのだろう、と映っていたのです。
<終わる孤立/継続する孤立>
コロナ禍では孤立にまつわる社会課題に注目が集まりました。ロックダウンや自主隔離によって、世界中の人々が一時的ながらも深い孤立感に触れました。しかし、コロナが収束した先に、ウイルスが作った深い爪痕を過去のものとし、孤立に浸った時間のことなどすっかり忘れ、きっと社会はまた前へ進んでいくでしょう。
しかし社会には、コロナ以前も以後も持続的な孤立の立場にある人も居て、その背景には、高齢者・路上生活者・依存症・心身の障害、そしてひきこもりなどの事情があります。
私は孤立の身にある人に対話やハグをしに行きたい。もちろん、ひきこもりの多くもフリーハグ経験者は少ないでしょう。けれども、この企画になら参加してみたいと思う人が挙手してくれる予感があるのです。
<私のひきこもり>
私は過去に足かけ3年、深刻なひきこもりを経験した元当事者です。ひきこもったのは、大学を出た半年後から。理由は、結婚を考えていた人からの裏切り、全力で望んでいた社会運動からの排除、10年間患っていた鬱、駆け出しアーティストとしての将来や生活の不安、共感能力に難ある父との対立。それらは、どれも“居場所や対話の喪失”と言えます。ひきこもった最初の7ヶ月半は一度も靴を履かず、空を見ることも無く、そして誕生日も大晦日もベッドの上でインターネット漬けで過ごしました。
私のひきこもり期間は、徐々にひきこもりがちになっていく「初期」と、その後、日々代わり映えしない永い時間を過ごす「持続期」とがありました。心の痛みが深い底付きをした後には、混沌とした気持ちに整理がつく部分もありましたが、「ひきこもり持続期」は、底なし沼のように身動きが取れない時間でもありました。抜け出たい気持ちと、日常化してしまった連続性から抜けられない感覚。さらに、簡単に終えてしまっては、永くひきこもった時間が無意味なものになってしまう、というアンビバレントな気持ちも湧いていたのです。そして持続期はあっという間に永い時が過ぎていきました。
父とは関係不全でした。母は夫との不仲やひきこもる息子の状況に心折れ、どう動いていいかすらわからなくなりました。結果、私の部屋の扉は誰にもノックされることなく、半年が過ぎていました。
私はその頃、ひきこもる原因となった人たちや、家族や社会に対し、爆発的に怒りを募らせていきました。しかし実を言うと、肘をついてフテ寝している指の隙間から、家族や社会の、私に対する出方をチラチラと確認しているような気持ちも僅かながらあったのです。心許せる誰かにドアをノックして欲しい、そしてここに来て私の納得いくまで議論や対話を行って欲しい、とらわれを打ち壊して欲しい、という思いもありました(※3)
<「まれびと」について>
このプロジェクトを発案する際に、折口信夫という民俗学者が提唱した「まれびと」という概念について考えました。共同体の内側にいる人に対し、共同体の外側からやってきて共同体に揺さぶりをかける異界からの存在を、折口はまれびとと呼びました。まれびと出現の儀式は厄災を祓う意味があり、それは芸能の成り立ちであり、異質な世界の力と言えます。
私がひきこもった期間は、外界からの作用や対話が無く、あっという間に長い月日が過ぎてしまいました。そこで私は今、ひきこもり当事者にとっての「まれびと」になれないかと考えています。例えば、家族には話しづらいけど、“元ひきこもりのアーティスト”になら話してみてもいいかなと思うことはありませんか?
私は今回のプロジェクトを通じ、日本全国どこへでも伺います。対話とハグをしませんか?もしかしたらその時あなたの日常に小さな穴が開いて、いつもとは違う風がそっと吹き込むかもしれません。
<プロジェクト概要>
ひきこもり経験を持つ現代美術家 渡辺篤が中心となり、応募をくれたひきこもり当事者と行うアフターコロナに向けたアートプロジェクト。渡辺が全国どこへでも出張し、対話とハグをする。その際当事者の背中側から写真を撮らせて頂く。コロナ収束後も孤立せざるを得ない人々に対し、社会が意識を向ける働きかけを目指す。また、当事者にとって、他者との体温を感じる接触経験が、認知更新のきっかけを生み出すことも期待する(※4)。
<プロジェクトの流れと安全対策>
1【お申し込み】
ひきこもり(※5)の方で、渡辺篤と対話とハグをしてもいいという方は、このページの一番下にある参加希望フォームURLから、お申し込み下さい。
2【事前の対話】
応募者全てと連絡を取り、条件のすり合わせ(規約の合意、ジェンダーバランス、旅の行程、双方のスケジュールなど)を行い、実現可能性が高い方の元へ伺います(応募者全ての方へ訪問できるわけではありません)。事前にメールや通話による対話の機会を作り、安心して実施できるようにします。
※渡辺自身が他の展覧会などの対応があったり、複数名の応募者とのやりとりがすでにあるため、長い場合は応募から対面まで1〜2年ほどお待たせしてしまう場合もあります。
3【同行スタッフと安全対策】
訪問は、渡辺篤の他に同行者が1名居ます。介護もしくは福祉の経験を持つ人を中心としたスタッフ(全国8名在籍。全員男性以外)。渡辺は体の大きな男性です。応募者の性別や年齢が何であれ、訪問時に二人きりの状態は極力作らないようにし、閉鎖性を減らして安全な実施を目指すためです。(※6)。
4【場所】
お会いするのは応募者のお家、カフェ、公園などどこでも構いません。最大3時間程対話し、最後にハグをして背中側から写真を撮らせてもらいます。この際、個人情報や居住地が特定されないようプライバシー保護を重視します。
5【作品化と権利について】
現在のところ、ハグの写真は、布に印刷して複数を縫い合わせ、旗を作る予定。その旗を用いて、別の映像作品を制作し、美術館に展示する想定。
その他、応募者の居場所まで向かう旅路の映像を撮る予定。その際、県名までは公開しますが、それ以上具体的な場所情報は開示しません。
>2023年3月20日追記:2021年当時、出展予定だった展覧会の事情変更に伴い、当初のプランは保留となりました。その後、新たに別の展示依頼を受けたことにより、会場の環境条件に合わせて作品化のプランを変更することとなりました。ハグの写真はライトボックス(ほぼ等身大)による作品群となります。今後も展覧会の会場環境の事情などに合わせて、写真を使用した作品化のサイズや手法は柔軟に対応させていく可能性があります。展覧会の際(イベント等の場合は除く)は、撮影被写体になった方には適宜ご報告します。いかなる作品化の場合も、個人情報の保護は行います。本プロジェクトにまつわる全ての作品(写真を含む)の著作権・展示権は、アイムヒア プロジェクト及び渡辺篤が保有します。
6【コロナ感染対策】
アフターコロナ期(ポストコロナ期)のコロナ収束前後を、主な活動時期として想定。実際には一旦まず、2022年1月〜12月頃に全国出張予定。
プロジェクト関係者は、マスク着用と手指アルコール消毒をして頂きます。なお、渡辺篤はワクチン接種済み。コロナ感染拡大状況などを踏まえ、実施方法を臨機応変に行います。
>2023年3月20日追記:対面実施は2022年4月からスタートし、2024年現在も断続的ながら進行中です。
>2023年3月20日追記:
7【参加者への謝礼・利益等】
・対面当日にカフェ利用などがある場合、お茶代などとして1,000円程度をお支払いします。
・一連の「アイムヒア プロジェクト」名義の活動は営利目的ではありません。運営費や活動費をは、個人負担、助成金、展覧会等主催者から受け取る制作費などで行ってきています。また、それらによってこれまで、参加者へ利益分配や返礼品進呈なども多数行ってきました。
・本企画においては、お会いするまでに、安全対策を含む多くの準備時間と経費(交通費・宿泊費・スタッフ費・通信費など)をかけます。そのため、それを持ってして各参加者への謝礼に返させていただきます。
・展覧会等で利益が発生した場合、その一部を被写体となった方々に協力費として分配する場合があります(必要経費を優先し、残額がある場合限ります)。※2022年の展覧会に向けて制作費を得た際は、作品化に至った方々に4,000円をお支払いしました(受け取り辞退した方を除く)。
・本プロジェクトの作品は、基本的に販売を目的にしておりません。ただし万一、何らかの事情で作品が販売に至り利益が生じた場合(美術館等への収蔵の謝礼を含む)、利益のうち10%を該当作品の被写体の方々に均等分配します。
・活動費捻出のためのグッズ制作等を行う場合があります。
・助成金を得る場合、内訳は全てプロジェクトの活動費に充てられます。個人の利益とはしません。
8【その他】
詳細については、ページ最下部の「規約・参加希望フォーム」をご確認ください。プロジェクトの進行においては、随時合意確認をとらせていただきます。参加希望者や参加を迷う方でご質問等ある場合、お気軽にご連絡下さい。
<渡辺 篤 プロフィール>
<同行スタッフ プロフィール>
<過去のプロジェクト>
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<助成>
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< N E W S >
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<規約・参加希望フォーム>
https://www.iamhere-project.org/new-freehugs/post-form/
<対面実施のアーカイブ>
https://www.iamhere-project.org/updated-freehug/