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大アジア思想活劇ーー仏教が結んだ、もうひとつの近代史

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教談師・野口復堂、神智学協会・オルコット大佐、スリランカ人仏教徒ダルマパーラ、そして田中智学などなど、十九世紀から二十世紀の正史、秘史を彩る人物たちがアジアを股にかけ疾駆する近代…
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2024年2月の記事一覧

41 仏教とアジア近代史再考|第Ⅲ部 ランカーの獅子 ダルマパーラと日本|大アジア思想活劇

41 仏教とアジア近代史再考|第Ⅲ部 ランカーの獅子 ダルマパーラと日本|大アジア思想活劇


日本とスリランカ・それぞれの近代仏教

一九九九年の一月、筆者は北インドのサールナートを訪れていた。根本香室精舎ムーラガンダクティー・ヴィハーラの周囲に拡がる、よく手入れされた庭園の一角には、アナガーリカ・ダルマパーラの、否デーヴァミッタ・ダンマパーラ比丘の赤茶けたストゥーパが、巡礼を呼び止めるほどの威儀もなく、ぽつねんと建っていた。

アナガーリカ・ダルマパーラの日本での発言を振り返ると、スリ

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おわりに 広島の二葉山平和塔をめぐって 被爆地と仏舎利|第Ⅲ部 ランカーの獅子 ダルマパーラと日本|大アジア思想活劇

おわりに 広島の二葉山平和塔をめぐって 被爆地と仏舎利|第Ⅲ部 ランカーの獅子 ダルマパーラと日本|大アジア思想活劇


二葉山平和塔の落成式

昭和四十一(一九六六)年八月五日の夕刻、国鉄広島駅の真北に位置する二葉山(広島市東区 標高百三十九メートル)山頂は厳粛な雰囲気に包まれていた。二十一回目の原爆記念日を翌日に控えたこの日、広島市外から瀬戸内海までを見下ろすこの場所で、巨大な仏舎利塔「二葉山平和塔(ピース・パゴダ)」が、ついに落成式を迎えようとしていた。仏舎利塔は高さ二十五メートル、基底部の直径二十メートル。

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