教談師・野口復堂、神智学協会・オルコット大佐、スリランカ人仏教徒ダルマパーラ、そして田中智学などなど、十九世紀から二十世紀の正史、秘史を彩る人物たちがアジアを股にかけ疾駆する近代…
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2023年7月の記事一覧
31 ダルマパーラ 一九〇二年の来日 近代アジアの運命を見据えて|第Ⅲ部 ランカーの獅子 ダルマパーラと日本|大アジア思想活劇
アメリカでの布教活動
正式な得度の儀式を受けず、黒い巻き毛をたたえたまま、僧侶の衣装である黄衣をまとった「異形」の仏教者アナガーリカ・ダルマパーラ。彼は十九世紀の末から二十世紀にかけて、世界を股にかけた活躍を始める。一八九五(明治二十八)年から翌年にかけてのブッダガヤ紛争を通じて、ベンガルの進歩的知識人層の間に仏教徒への同情が高まっていた。その結果として一八九六年五月二十六日、カルカッタでインド
32 ダルマパーラと田中智学の会見(上)二人の 「獅子」の出会い|第Ⅲ部 ランカーの獅子 ダルマパーラと日本|大アジア思想活劇
二人の「獅子」の出会い
明治三十五(一九〇二)年六月二十三日、来日中のアナガーリカ・ダルマパーラは鎌倉に田中智学(一八六一〜一九三九)を訪ねた。田中智学は在家の仏教活動家として日蓮主義に基づく近代日本の国体思想を確立し、昭和初期に台頭した右翼革命運動にも大きな影響を与えた一代のカリスマである。ダルマパーラと智学の出会いは一度だけのものだったが、智学は晩年までこの邂逅を記憶し続けた。ダルマパーラも