【好きな本紹介 #1】0メートルの旅 日常を引き剥がす16の物語 を読んで
皆様いかがお過ごしでしょうか。
世界遺産検定マイスターの受験が終わり、緊張の糸が完全に解けてしまったせいか、なにか新しいことを書こうにもどうしようかなと思っていました。
そんなとき、私の目に旅に関するこんな記事が飛び込んできました。
海外メディアのCNBCで、特に日本人の「旅離れ」が深刻なようです。
詳しいことは以下のニュースサイトでまとまっているので、それをみてほしいです。
確かに旅好きと言いながら、海外旅行は2019年にクロアチアに行ったとき以来、コロナの感染拡大で出かけていないし、周りが出かけていない中で自分だけ出かけるなんて…という同調圧力が、どこか自分を旅に誘うことを妨げているのかもしれないかなと記事を読んで感じておりました。
ただこの本を改めて読み直して、改めて思いなおすところがあったのでこの度皆さんに紹介したいと思います。
それは「0メートルの旅 日常を引き剥がす16の物語」という旅行記です。
作者は岡田悠さん( https://note.com/hyosasa ) 。会社員でもあり作者でもある生粋の「旅好き」な方です。
そんな作者の初めて執筆する旅行記の前書きに次のような問いかけが書いてあります。
確かに前書きの中にも登場する、旅の意味を辞書で引いてみると、
それを見ると、国内・海外旅行のような「遠出」のような意味を含んでいるようにも思える定義ですが、作者はあえてその言葉の意味を問い直しているのです。「旅とはなにか」と。
そして、南極への新婚旅行や、シャワーヘッドが回転するイスラエルの民泊、無一文になったウズベキスタンの珍道中と、海外で筆者が経験した面白くもほろ苦い、そして涙を誘うエピソードが並んでいます。
2章以降は一転して、仙台や青ヶ島、ついには家の近所の寿司屋さんが登場し、最後はエアロバイクをする自分の部屋へと、でかける距離は次第と近づいていくのです。(詳しい話は本を読んでからのお楽しみに)
この本は筆者が15年前から書き溜めていた旅行記を、一番遠いところから順に並べているという構成になっている所が面白く、作者が伝えたかった「たとえ遠くに行かなくても、旅はできる」というコンセプトを表現するのに効果的であることに気づけます。
そして改めて筆者が「旅とは何か」という問いかけに答えているのです。
たしかにコロナが収まったら海外でも国内でもいいから出かけたいなと言いながら、平日は職場と自宅を定期券で定められた「最短距離」で示されたルートに従い、寄り道もせず往復する日々。休日は大体決まったタイミングで週末の買い出しにというパターン化されつつあった生活を送る私にとって、はっとさせる言葉に思えたのです。
旅なんて別に有給休暇や旗日を使ってお出かけする"Leisure"だけではなく、日々の効率化された生活からちょっと脇道に転がっているちょっとしたものなのだと思えてきました。
それはまるで小学一年生だった私が学校から自宅に通学ルートとは別な道から帰り、同級生と駄菓子屋で買ったお菓子を使ってザリガニ釣りをしていた時のように。
またあるいは今日の私のように、寒くなってきたからと厚手のセーターを探すも、見つからず手あたり次第に引き出しを開けていたら、昔懐かしい高校時代の文化祭のTシャツを見つけた時のように。
そこには日々の忙しくせわしない生活では感じられない、ワクワクする瞬間や、昔を思い出し掃除の自分の思い出に浸る感情がそこにはあるのだと。
この本を読んで感じたことを率直に言うと、「旅って日常のどこかに存在して、いつもの日常とは異なる何らかの感覚と感情を自覚する瞬間にある」のだということです。
だから冒頭に引用した記事のように、もちろんコロナや世間体でLeisureとしての旅行は減っているとはいえ、日々の生活の中にあるちょっとした「旅」をしっかりと自覚することで、私たちが忘れていた「旅をしたい」という気持ちをほんの少しでも補ってくれるのかなと思いました。
もちろんコロナなんてなければ、行きたいところはいっぱいあります。
世界遺産検定の勉強を通じて、知ることができた場所もいっぱいあります。
それはそれでいいけど、日常の中のちょっとした変化に気づき、ワクワクできる心持ちで、残り少ない2022年は過ごしたいなと思いました。
今日はこの辺でお開きとします。
旅好きの私が不定期にはなりますが、私の琴線に少しでもピクッと触れる本を紹介したいと思います。
逆に面白いからと紹介してくださる本があれば教えてほしいです。よろしくお願いします。
それではまた次回。お相手は旅好きのなおゆーでした。
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