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戸籍も、デートの相談メールも…パートナービザ申請のためにNAATI翻訳した書類3つ【ビザの話7】

オーストラリアのビザ申請において「証拠の品」として提出する書類は、全て英語で記載されている必要がある。しかし僕は日本出身の日本語スピーカーなので、どうあがいても原本が日本語の書類があり、プロの手で翻訳してもらって提出しなくてはならない。パートナーとのごく個人的な日本語でのメッセージのやりとりなども翻訳の対象で、恥じらいながらも翻訳家に依頼した話を記録しておきたい。

Photo by Jonas Leupe on Unsplash

NAATI翻訳者の見つけ方

ビザ申請に必要な翻訳書類は全て、NAATI(オーストラリア翻訳・通訳資格認定機関)という機関の資格を持つ翻訳者に依頼して翻訳してもらうルールになっている。自分で翻訳したものなどは、内容が正しいと認めてもらえない。

そこで、翻訳が必要な書類がある場合はインターネットまたは知り合いのツテなどを頼ってNAATI翻訳者を自分で見つけなくてはならない。

NAATIには「英語→日本語」と「日本語→英語」の2タイプの資格がある。日本語の書類を英語に翻訳したかった僕のケースでは「日本語→英語」のNAATI翻訳者に依頼する必要があった。

僕は数年前にパートナービザを申請した経験を持つ知人に紹介してもらったNAATI翻訳者に連絡を取り、翻訳料金の見積もりを出してもらい、翻訳作業を依頼。翻訳された書類には全て「NAATIの証明」ともいえるスタンプが押され、翻訳者の名前が入る。

僕は、戸籍謄本の写し、Eメール、Facebookメッセンジャーの履歴の3種類を翻訳してもらった。

1.戸籍謄本の写しの翻訳

戸籍謄本の写しは、パートナービザ申請に必ず求められるもの。ビザ申請者だけでなくパートナー(ビザスポンサー)の分も必要になるので、パートナーが日本人なら2人の戸籍謄本の写しを用意して、同時に翻訳依頼をすると楽だろう。

パートナービザ申請で戸籍謄本の写しを提出するのは、出生地や家族の情報に偽りがなく、間違いなくパスポートと同一人物で、加えて最新情報が正しく反映されているかをチェックするためのようだ。なお、戸籍制度のある日本のような国は珍しく、多くの場合は出生証明書なるものを提出するらしい。

戸籍謄本の写しの翻訳後、「地名や人名の読み方などに誤りがないか確認してください」と促され、1文字ずつチェックした。一見完璧に見えたが、1箇所だけ地名の読みが違っていたので指摘して修正してもらった。振り仮名もない固有名詞の連続を翻訳するのは骨の折れる仕事だろうし、よく読み間違えられる地名なのだ。修正も含め、NAATI翻訳者の細やかな仕事ぶりにはとても満足できた。

なお、戸籍謄本の写しは、①日本帰国時に自分で取得、②日本の家族など代理人を通じて取得、③領事館を通じて取得、という3パターンの方法で入手できる。

2.Eメールの翻訳

パートナービザ申請においてEメールの提出は必須ではないが、僕らの場合、付き合い始めの前後はEメールで日本語で連絡を取り合っていたため、翻訳することにした。「交際期間の長さ」を証明したかった、というのが理由だ。

だが想像してみてほしい。2人がまさに付き合い始めるタイミングの連絡を、第三者(翻訳者)に見せるのだ。メールの内容は、「今度の週末に一緒に◯◯へ行こう」というデートの打ち合わせとその返事。本来なら一生他人に公開することはなかったであろう個人的な連絡を、まさか料金を払って翻訳し、役所に提出する日が来ようとは想像もしていなかった。

しかしながら、これはビザのための事務手続きの一つ。NAATI翻訳者はれっきとしたプロで、パートナービザ関係の書類の翻訳経験が豊富な人も多い。もちろん手がける書類や個人情報を守るのも彼らの仕事のうちで、漏洩なんてことがあれば翻訳者としての信頼と資格に関わるわけだから秘密厳守は絶対だ。

僕らの担当をしてくれたNAATI翻訳者もその例に漏れず、必要以上に内容には触れず、ドライな対応をしてくれた。といっても、翻訳後の確認の際には「原文のニュアンスと異なる部分があれば修正しますので」と丁寧な対応が好印象で、原文の雰囲気をしっかり再現してくれるなど、証拠書類として素晴らしい完成度だった。

3.Facebookメッセンジャー履歴の翻訳

僕がFacebookメッセンジャーのやりとりを提出用に選んだのは、パートナービザ申請の提出書類に「2人が離れていた間も関係が続いていたこと」の証明が必要とされていたからだ。

パートナーとの交際開始後、海外出張で離れていた数週間の間のやりとりはほとんどメッセンジャーで行なっていた。しかし数週間分のやりとり全てを翻訳するのは財布に厳しいので、初日、中日、最終日の3日分だけをNAATI翻訳者に依頼した。以下のような内容だった。

  • 初日:「着いたよ」「◯時頃に通話できる?」など

  • 中日:互いの近況報告

  • 最終日:「◯時に着くよ」「迎えに行くね」など

正直、2人とも連絡が事務的なタイプなので、果たしてこれが恋人同士の会話に見えるのか?という疑問もあったが、これが僕らの素の状態なので仕方ない、という結論に。
途中に通話した記録もあり、「次回は一緒に来よう」「早く会いたいね」などのやりとりも少しは含まれている部分を選んだとはいえ、息をするように愛を語ったりハートの絵文字や自撮り写真を送り合ったりしているわけでもない。愛情表現には個人差や出身国ごとの違いもありそうなので、オーストラリアの移民局がそれを理解してくれたおかげで僕のビザが発給されたのだと思うことにした。

Facebookメッセンジャー履歴のエクスポート&保存方法

メッセンジャーは以下の要領で履歴データを書き出し、翻訳してほしい部分だけを選んで依頼した。多少面倒だが、手順通りにやればできる。アプリのスクリーンショットでなく、わざわざ履歴データをエクスポートしたことには理由があるので後述する。

  1. パソコンでFacebookのプロフィール画面から「設定」をクリック

  2. 「プライバシー設定」→「あなたのFacebook情報」→「プロフィール情報をダウンロード」の順にクリックすると「個人データをダウンロード」の画面に遷移する

  3. ファイルオプションを選択:「HTML」「高画質」、該当の「期間」を指定

  4. ダウンロードする情報を選択:「メッセージ」のみを選択(※他のデータも含めると重くて非効率)

  5. 最下部の「ダウンロードをリクエスト」をクリック(※データの準備完了には時間がかかるので注意

  6. 準備が完了するとメールで通知が届くので、FB上から該当データ(ZIPファイル形式)をダウンロード(※FBパスワード要)

  7. ダウンロードしたZIPファイルを開き、「index.html」をブラウザで開く

  8. 必要な部分を選んでPDF化、またはスクリーンショットしてセーブしたら完了(※全体をPDF化・スクショしてから切り取るのでもOK)

なぜ履歴をエクスポートしたほうがいいのか

NAATI翻訳者いわく、彼らの仕事は原文のフォーマットを変えずに日本語部分だけを英語に翻訳したファイルを作って納めることと決められているらしい。そのため、複雑なデザインの画面のままスクショして翻訳依頼をすると、そのデザインに合わせてNAATI翻訳者がファイルを作る手間が発生し、作業時間が余分にかかってしまう。作業時間はすなわち料金に反映され、依頼者の支払額が高くなってしまう可能性があるのだそうだ。

つまり、シンプルな画面構成のファイルならNAATI翻訳者の手間も少なく、僕ら依頼人の払う料金もいくらかセーブされることになる。メッセンジャーアプリ画面をそのままスクショすると吹き出しのデザインで、1画面に入る情報量も少なく、ページ数が多くなってしまうのに対し、履歴データとして書き出せば表のようなシンプルさになる。かつ、Facebookのロゴの入った画面で、改ざんを疑いようのないデータになるので良さそうだ。

おまけの話

僕がNAATI翻訳して提出した「証拠書類」は以上だが、SMSや他のメッセージアプリ上では僕らは日常的に英語でやり取りをしていたので、その履歴も全て抽出して移民局に提出した。

NAATI翻訳の依頼を経て面の皮が厚くなったのか、あるいは英語が僕の第一言語ではないからか、英語だと言いやすい「I love you」などを含むテキストを移民局に提出することに次第にためらいを感じなくなったことを書き添えておきたい。

初めてのNAATI翻訳、まとめ

NAATI翻訳者は、協会公式サイトの「翻訳者・通訳者を探す」というページから探すことができる。

  • https://www.naati.com.au/にアクセス

  • 「Find A Translator Or Interpreter」から、「Translator」と「Japanese into English」を選択

僕が以上の3種類をNAATI翻訳者に翻訳してもらったのは2018年の話。料金は原本データの情報量によるし、おそらく翻訳者によっても異なるので一概には言えないが、僕の場合は合計で数百ドルかかったと記憶している。

戸籍謄本の写しは絶対なので外せないが、それ以外のデータは予算に応じて翻訳してもらうボリュームを調整するのも良さそうだ。

ビザ手続き代金以外にも、何かとお金がかかるオーストラリアのパートナービザ申請。お金の話は別の記事にも書いたので参考になれば。


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