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私と東村さん

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高校時代、仲良かった事務室の東村さん。その人との日々を思い出したので残したいと思います。いつかの自分に向けて、忘れてしまわないように。
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#随筆

Ep.1-5

高校2年生になった。

4月。東村さんは、異動がなかったようで

いつものように事務室にいた。

「今年もよろしくね。」

「こちらこそよろしくお願いいたします!」

という挨拶を交わした。

私は、

お昼休みには配電室の

放課後には生徒会室の

鍵を借りに事務室へ行くことになった。

途中から先輩方が配電室の合鍵を作っていたことを知っていたけれど、

私はとても真面目だったので

毎日、事務

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Ep.1-3

通っていた高校は私立だったけれど、

校舎が全体的に古い。そしてしきたりも古かった。

ノックをしないでドアを開けたら最初からやり直し、先生の機嫌が悪かったらその場で怒鳴られる。

私は、先生から怒られることは見放されることだ、と思っていたので、そういったシキタリを忠実に守った。

けれど、事務室のドアを私はノックしないで入る。事務室の扉は自動ドアになっていたからだ。

「こんにちは。」

「こん

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Ep.1-2

高校1年生の4月、文化祭実行委員会に入ることにした。

中学時代の私を捨てて、新しい自分になるためには

新しいことを始めるのが一番だったから。

配属先のチームが決まると、文化祭に向けてどんどん忙しくなった。

私のチームは入り口の看板作り。

看板作りは配電室を借りて行うため、

配電室の鍵を借りるため、私は事務室にいくことが増えていった。

中学時代、体育会系の部活動に入っていたこともあり

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Ep.1-1

東村さんは私が通う高校の事務さんだった。

高身長の細身で、顔は小さいのに高い鼻が特徴的の中年男性。

いつもA棟1階の事務室にいた。席は受付に近かった。

私は高校に入学してすぐに両親が離婚したため、中間テストが始まる5月には入学前に提出した住所を変更する必要があった。

そのときに始めて事務室にいった。

その時に対応してくれたのは、確か女性だった。

何かを察したのか

「あなたも大変ね。」

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