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トマトジュース

私は、結構、変わったものが好きだ。みんなが苦手と言うようなものが好きだったりする。そしてその好きも、嫌いではないという類いのものではなくて、好んで食するという、他の人から見ると驚きの嗜好だったりする。

今、そのすべてを思いつかないのだが、その代表格のひとつが、トマトジュースである。

幼少の頃から、この、トマトジュースが、なぜか大好きだった。

なんだ、トマトジュースならば、私も飲むよと言われる方もいらっしゃるかと思うのであるが、私の好きなトマトジュースは、ホットトマトジュースなのである。


幼少の頃は、電子レンジというものが無かった。その時は、ミルクパンのようなもので、温めていたと思う。父も、兄も、母も、トマトジュース自体が苦手なようで、それを所望する私のことを、揃って変わり者呼ばわりをしたものだ。しかも、それを温めて飲むという。

トマトジュースを温めて欲しいという要望を出すと、母は、尼崎弁で

冷たいまんま、飲みなさい!

とか、

温めて飲もうなんて、この、贅沢な!

とかいう言葉で叱るように言ったが、どうも、ミルクパンで温めると、トマトの匂いが充満してきて、それが嫌なのだという。

特に、温めたトマトジュースの香りを、兄が苦手としていた。

うわっ。また、変なもの温めた?この、変わり者が!

そういう、謗りのようなものを、何度も聞いた。

というような状況なので、物心がつくと、自分で温めるように言われ、即座に使用した道具やコップを洗い流すように言い渡された。なぜならば、匂いのみならず、飲んだ後のトマトジュースの跡が、このうえなく苦手な人には嫌な映像として映るらしい。


独身の時は、既に寮の食堂に電子レンジがあった。ここで、買ってきたトマトジュースの缶からマグカップに注ぎ、トマトジュースを温めて食した。結婚をして、なぜか家内はトマトジュースをそこまで忌み嫌うことはしなかった。我が家はトマトジュースをペットボトルで購入し、それをマグカップに移し、電子レンジで温めて出してくれるようになった。

そのとき初めて、持つべきものは、トマトジュースを嫌わない妻だと思ったものである。


だが、いつしか、毎日飲むべきトマトジュースは、隔週になり、1ヶ月に1本になってきた。なぜか。家内に言わせると、

稼ぎの少ないオヤジには、水でも飲ませておけっ!

というようなものだったようだ。トマトジュースは、他の牛乳やジュースのようなものものに比べると割高で、特売の広告が出ないと、あまり買わないのである。


先日、スーパーに行くと、見切り品コーナーに、天の恵みが置かれてあった。これだ。

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ちょっと開けてしまっていて、しかも机からはみ出しているが。

実は、私は、酒粕や甘酒も、大の好物である。

中のパッケージは、こんな風になっている。

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おっと、これはいける。しかも安いということで、2袋所望して、家内に買い物カゴの仲間入りをさせてもらった。

早速自宅に帰り、飲もうとすると、袋の裏に、不思議なことが書いてある。

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冷水100ml?

いやいや。ホットでしょ。

家内がそばにいなかったので、思わず心の声が外に漏れた。


かくして、ケトルに水を少し入れ、

スイッチを押した。

ポチッとな。


数分後、至福の時が訪れた。ところが、家内の声が後ろからバズーカ砲のように飛んできた。

あ、あんまり一気に飲まないでね!もう、買わないからね!


私は、

では、来週からは、また、トマトジュースのペットボトルを買おう。特売でなくとも、買おう。これからの冬の時期、脳と体と心を癒すのに、ホットトマトジュースは、最高の飲み物なのである。

と、心の中で、小さな声で宣言した。

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