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【コラム】地政学の視点で ~難民問題トルコもいろいろ~

何事も単純な二項対立に置き換えがちなのが最近の日本の風潮ですが、諸外国の事情は複雑過ぎて、そんなシンプルなものではありません。

https://jp.reuters.com/article/syria-security-turkey-eu-idJPKBN20R140

今日ご紹介する記事はこれです。

トルコやギリシャは、時にヨーロッパの問題児扱いをされる国々です。
トルコは、そもそも移民問題について昔からEUとは折り合いが悪いのです。

トルコの位置は、まさにアジアとヨーロッパを繋ぐ入り口。中央アジアにはトルコ系民族が多いことも特徴です。中国に弾圧されているウイグル人もトルコ系です。このウイグルあたりまでをトルコに縁のある地域だと考えると、トルコはヨーロッパだけでなく、ロシアや中国にも近く、昔から大国の脅威に晒されている国なのです。加えて、イスラム圏の国々とも宗派の違いの問題もありますので、なかなか上手くいきません。

アメリカはかつて、対ロシア対策としてトルコをNATOに加えましたが、EUはトルコの加盟を拒否しました。宗教の違い等を挙げていましたが、本音は労働移民の流入を恐れたためです。
今はヨーロッパもイスラム系の移民で溢れてますけどね。アメリカもイスラム国の対応についてトルコと足並みが揃わず、関係は良くありません(クルド人問題)。

ニュースではよくこのように難民を盾にして脅迫している、という風潮に仕立てあげられつつありますが、使えるものは使わないと生き残れない背景もあるのです。

是が非でも国を守る、または拡大していく。この発想はどこの国も一緒なのですよ。

ギリシャにしても、財政破綻をしたのにIMFに対して強気に債務不履行をやってのけましたね。ギリシャ国民が国民投票で今まで通りの年金受け取りを要求したからです。なんて図々しいんだ、という感想が出てきて当然です。

しかしですね、地政学的に見ると、ギリシャはスエズ運河をロシアから守るための大事な防衛線なのです。だからEUも簡単にギリシャを切るわけにはいかないのです。
海運の要である運河を取られるということは大ダメージなのです。

アメリカやロシアにとっての韓国、北朝鮮だって同じです。アメリカ対ロシアは直接対峙せず、韓国や北朝鮮をそれぞれ最前線に位置付けて、いわば緩衝地帯にしているわけです。
だから韓国が近年中国寄りになっているのは、大国に挟まれている国の生き方としては仕方ない部分があります。

歴史とはシンプルに言えば、大国同士の力関係と協力関係の移り変わりを示すものです。

小国の歴史は、いつも大国に緩衝地帯にされ、振り回されることを繰り返してるのです。
だから北朝鮮もギリシャもトルコも、大国にとっては都合の良い、必要な国なのです。

表向きは難民の話だろうが人権の話だろうが、本音と建前は別です。国取りの戦いは現代でもそれほど変わらないのですよ。

投資判断でニュースを見る時は、歴史の知識がある方が良いでしょう。一つのニュースに対する「感度」が上がりますよ。

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