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「若きウェルテルの悩み」を読んで


この作品に関してはあまりに有名で多くの方が認知しているだろうからあらすじは避け、単純に私がこれを読んだ感想を残しておく。

何が恐ろしいかってこれをゲーテが発表した時彼はまだ20いくらの年齢だったということだ。どのような人生を送ればその年齢でこのような美しい文章を書けるのだろうと。
それとも生まれてからの月日がそれを作り出すという考えが間違った考えなのかもしれないけれど。
なんともない情景をこれほど美しく書き上げることができるのは彼の心の豊かさがゆえなのか、その疑問が頭から離れない。

この小説では一人の青年の恋心を通してたくさんの変化が見受けられる。
ウェルテルが抱える問題に変化がないにも関わらず、日毎にその人の心のあり方、自身の揺らぎや幸福も含めそれらの違いが小説を通して語られている。
主題が変わらなくてもそれを考える人間が簡単に変わってしまうのだろう。

その中には私が体験したこのと近い感情も多く含まれていて、おそらくだけれど言葉で表せる範囲の感情だったり、人それぞれの物事の捉え方はそこまで違いはないのではないだろうか。


ウェルテルにとっての大きな問題が「ロッテへの愛情」であるとすれば、それは終始一貫したもので、物語の中でそれが憎しみや怒りに変わることはないように私は思う。

ただ、当然ウェルテル自身があらゆる面で変化するのと同様に周囲の人々も変化する。

この小説を読めば人の感情が外部からのどれだけたくさんの影響を受けているかがわかる。人間関係のみならず、その日の天気や読んだ詩などたくさんの情報と変化が人の心を動かしている。

ある決定をする際に、さも自分自身でそれを決めているんだ。という考え方はその場合少し違っていて、いろいろな影響を受けて今の自分が形成されたことを理解しているつもりではあったが、これを読み終えた後によく考えてみるとある決定においてその事実を忘れてしまっていることに気付く。

今まで自分で決めたと思っていたことが実は自分で決めているのではなく、何かしらの影響によってなされているということは少し悲しいものでもある。
と同時に、その程度のことなら何かに深く悩む必要もなく、取り合えず思ったことに手をつけてみるということの肯定にもなるなと楽観的な意見としても考えられる。


一人の女性をあれだけの熱量で愛し続けることは今までの自分にできたことではなく尊敬を覚えるけれど、私は自分の中にある狭い空間に閉じこもりたくはないと思う。
それはこの物語の終わり方に影響を受けてではなく私が見てきた中で外に希望を持つ人にそれ以上の憧れがある体と思う。


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