MYurita

観察・考察の記録とある程度の客観性を踏まえた省察を溜めるツールとしての有効性検討の試用…

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観察・考察の記録とある程度の客観性を踏まえた省察を溜めるツールとしての有効性検討の試用期間。2008年に教師教育・政治哲学・歴史哲学3領域学際博士号(Ph.D.)を取得。記載内容は個人の所見であり,所属機関を代表するものではありません。

最近の記事

ディスコースについてー塾産業と学力

思いつくままにこの2日間で文章化したもの(昨日・一昨日のNoteの記事)を、改めて整理してみた。 是非と功罪の議論がもつ曖昧さ 公教育に塾産業が与える影響についての議論の多くは、塾産業の是非や功罪を論じる一方で、それぞれが目指す学力の意味(とその違い)は曖昧なままであり、その曖昧さに焦点をあてる論考は少ない。 教育社会学では、塾産業が受験システムを利用した能力主義(meritocracy)を助長する一方で、家庭の経済的条件や居住地の地理的条件が教育機会に与える影響を過小

    • 商品としての学力ー塾産業と学校教育(1)

      オーストリアのウィーンに到着した。ウクライナでの戦争のために片道14時間のフライト。日頃の行いの悪さか、僕の席だけ機内エンターテイメントシステムが故障していた。本も読み終わったので、仕方なく携帯で以下を書いた。 さて… 塾(塾産業)が学校教育に与える影響については、私たちが想像するほど十分に議論されていない。議論が量的に不足しているのではなくて、質的に不足している。 「学力格差」の要因として塾を捉える議論や、塾産業(また、塾産業が応答する受験システム)が学びを歪めるとい

      • 創造的思考力の調査について、そして国際調査の結果を読むことについて

        PISA2022の創造的思考力OECDが3年ごとに実施するPISA(OECD生徒の学習到達度調査)2022では、さまざまな文脈で15歳の生徒が創造的に思考する能力を評価するクリエイティブ・シンキング(Creative Thinking:創造的思考力)の測定が試みられた。 PISAが《創造的思考力》を調査項目に取り入れる背景には、AI時代の社会での成功に重要なスキルとして学びや経験をもとに創造的に考え、新たな課題に適応する能力が意識されており、そうしたスキルを形成する教育実

        • 語られないこと: コンピテンシーの枠組み再考の必要性

          コンピテンシー PISAやEducation2030のプロジェクトが目的にする『コンピテンシー』の概念は教育の政策と実践、そして研究の文脈に定着している。 OECD(経済協力開発機構)が1997年にDeSeCo(Definition & Selection of Competencies)のプロジェクトを立ち上げてから27年。間も無く1世代(one generation = 30年)になる。その間に世界は大きく変化しており、まさに加速度的に変化する21世紀の社会を生きる

        ディスコースについてー塾産業と学力

        • 商品としての学力ー塾産業と学校教育(1)

        • 創造的思考力の調査について、そして国際調査の結果を読むことについて

        • 語られないこと: コンピテンシーの枠組み再考の必要性

          年収の1%を寄付する1%クラブのご案内

          1%クラブのご案内   年末にその年の年収がほぼ確定した時点で,年収の1%を寄付するクラブです。寄付先はそれぞれ。お小遣いしかもらっていない子どもでも可能です(小遣い帳・家計簿をちゃんとつける習慣づけにも効果があるかもしれません)。   年収の1%は,一度に支出するとなるとちょっと痛い金額ですが,出せない金額ではありません。1%から始めるのが躊躇されるようなら,0.5%からでもいいと思います。   主旨は年1回,様々な慈善団体の活動や資金使徒の公開状況などを精査したうえで,寄

          年収の1%を寄付する1%クラブのご案内

          シンポジウムやプレゼンの効果をあげる4つの問い

          昨年にFBに書いたけど,なんだか得るものが少ないシンポジウムや講演会,プレゼンに共通する問題とその回避方法を整理したので転載する。​ シンポジウムや講演会(プレゼンも)は聴衆が多かったり,質疑応答がそれなりにあれば「成功・ある程度は成功」とされるケースが多い。聴衆側も主催者側やその場の「なんとなく成功」という感覚に引きずられるし,そうでなくても日本では声に出して「期待外れだ」という人は少ない。 でも次にあげる経験があれば,期待外れのシンポジウム・講演会に参加したんだなと言

          シンポジウムやプレゼンの効果をあげる4つの問い

          英語4技能試験についての公聴会を聞いて

          衆議院文部科学委員会(11月5日)でのヒアリングを視聴。案件は「文部科学行政の基本施策に関する件(広大接続改革)」とあるが、先日に萩生田文部科学大臣から発表された大学入試における英語4技能試験の中止をめぐる参考人聴取を目的とした委員会だった。 文部科学委員会の委員長と質問者は下記の通り: * 橘慶一郎(委員長) * 中村裕之(自民党・無所属の会) * 菊田真紀子(立憲民主・国民・社保・無所属フォーラム) * 鰐淵洋子(公明党)畑野君枝(日本共産党) * 森夏枝(日本維新の

          英語4技能試験についての公聴会を聞いて

          フランスの公共広告から…

          フランスの公共広告…「Ne lui collez pas une étiquette pour toujours.」意訳をすれば「いつまでも重荷を負わせるな」かな。その後に,貧困の連鎖を断ち切るためには6世代もの時間がかかる。貧困を責めるな…と続く。 フランス語の原文は,Ne lui collez pas une étiquette pour toujours. Il faut 6 génerations pour sortir de la pauvrete. Ne les

          フランスの公共広告から…

          発達障害について

          子育て中の友人や知人も多いので,一助になれば幸いです…   環境活動家のグレタさんがアスペルガーだと話題になりました。日本語では一般に高機能自閉症と言われるそうです。   僕自身は,子どもの頃からなんとなく周りについていけない感覚がありました。みんなが楽しんでいるものを楽しめないし,何が楽しいのかわからない。天邪鬼なんだろうなと思っていました。   20代になると,意識をすれば空気を読んで周囲に合わせることもできるようになりました。でも,どう考えても合理的ではないこと(み

          発達障害について