フランスの公共広告から…

フランスの公共広告…「Ne lui collez pas une étiquette pour toujours.」意訳をすれば「いつまでも重荷を負わせるな」かな。その後に,貧困の連鎖を断ち切るためには6世代もの時間がかかる。貧困を責めるな…と続く。

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フランス語の原文は,Ne lui collez pas une étiquette pour toujours. Il faut 6 génerations pour sortir de la pauvrete. Ne les condamnez pas a la perpetuité. 

貧困は個人の問題に限定できるものではなく,社会構造的に再生産される。貧困層を叩くのではなく,構造的な課題を認識し,幾世代も綿々と受け継がれる貧困を克服しようじゃないか…というメッセージ。社会という単位で問題や課題を認識する技能は体系的な教育と訓練によって創られる。フランスは,そういう意味で市民によって社会は如何様にも創造できるという思想が徹底している社会の好例。日本は,この点においては圧倒的に後塵を拝している。

PISAやTIMMSの成績では,日本の平均点は諸外国を上回る。求められたことに応答する能力はとても高い。しかし,それで良いのだろうか。教育の役割はそこにとどまるのだろうか。求められたことに応答する能力は,他の資質技能にどの程度優先するのだろうか。

TwitterなどのSNSで交わされる諸議論を観察していると,日本社会では議論空間の形成があまりにも未熟だということがわかる。献血ポスターで起用されたアニメーション・キャラクターをめぐる議論でも,議論がされているようで全く議論になっていない。国会議論でも同じような状況がある。これらの多くが,社会を構造的にとらえる訓練と経験とがあまりにも乏しいことに起因しているのではないかと思う。

国際的な調査研究を参照した教育改革や政策判断が増えている。一方で,それらの国際的なディスコースが前提としている議論空間については,あまりにも認識が希薄だと考えざるを得ない。この点について建設的な貢献機会を作ることができれば,日本にまだまだある潜在的な成長余力を動員できるのではないかと考える。

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