元書店員・はまさきのミステリー通信

書店員歴42年。定年退職を機に記事投稿を開始。ミステリー小説が大好きで、読後は必ず誰か…

元書店員・はまさきのミステリー通信

書店員歴42年。定年退職を機に記事投稿を開始。ミステリー小説が大好きで、読後は必ず誰かに話したくなるので、 面白いミステリー小説を紹介していきたいと思います。

記事一覧

空気の読める人間しか生きられない町って何?「誰かがこの町で」

「わたし消える」で2019年第65回江戸川乱歩賞を受賞した 佐野広実さんの受賞後第1作「誰かがこの町で」を読了。 受賞後第1作は、強烈な印象が残るサスペンスミステリー。 …

時代小説の斬新過ぎる謎の設定に絶句!「この世の春」

宮部みゆきさんの「この世の春」(新潮社)を読んだ。 言葉もでないくらい面白かった。 〇十年前、「火車」を読んだ時以来の凄すぎる衝撃! 読んでる時に目が先へ先へと流…

事件を呼ぶ刑事岩倉剛シリーズ!「罪の年輪 ラストライン⑥」

堂場瞬一さんの人気警察小説 「ラストライン」シリーズは、6作目に突入! 立川中央署に勤務する刑事・岩倉剛は、 あらゆる事件を記憶するという特殊能力がある。 定年ま…

人の悪意が「闇ハラ」を生む?「闇ハラ」VS「闇祓」

辻村深月さんの初の本格ホラーミステリ小説 「闇祓」(角川文庫)読了。 以前読んだ時、あまりの衝撃と面白さに 文庫化されたら絶対に再読すると決めていた作品。 「闇を…

着衣から推理を展開する斬新さが面白い!「クローゼットファイル 仕立屋探偵桐ヶ谷京介」

「よろずのことに気をつけよ」で第57回江戸川乱歩賞 を受賞し、デビューした川瀬七緒さん。 その後シリーズ化された「法医昆虫学捜査官」は 警察の捜査に昆虫学を導入し、…

戦慄のサスペンスミステリー「花束は毒」

読みたかった織守きょうやさんの 「花束は毒」を読了。 随所に仕掛けられた罠に絶句!! 中学生の時に、木瀬の従兄はいじめを受けていた。 それを解決したのが木瀬の1年先…

ホーソーン&ホロヴィッツシリーズ第5弾「死はすぐそばに」

ホロヴィッツ自身が作品中に本人役で登場し、 元刑事の偏屈探偵・ホーソーンと コンビを組んだシリーズ「メインテーマは殺人」、 「その裁きは死」「殺しへのライン」、 「…

刑事・マリア&漣シリーズ第4弾「ボーンヤードは語らない」

型破りな女性刑事マリアと スマートな日系人刑事の漣が 難解な事件を解決する、本格ミステリー。 鮎川哲也賞受賞作、「ジェリーフィッシュは凍らない」 第2弾の「ブルーロ…

斬新すぎる視点のミステリー登場!「ヴィンテージガール 仕立屋探偵桐ヶ谷京介」

「よろずのことに気をつけよ」で第57回江戸川乱歩賞 を受賞し、デビューした川瀬七緒さん。 その後シリーズ化された「法医昆虫学捜査官」は 警察の捜査に昆虫学を導入し、…

なにがが起こりそうな洋館で起きた事件!「そして誰かがいなくなる」

豪華絢爛な洋館の描写に思わずほ~と ため息が出そうになる。 「実在する洋館」を舞台に描かれた、 クローズドサークルミステリー。 下村敦史さんの「そして誰かがいなくな…

警察官の矜持が熱い!シリーズ新作「夏空 東京湾臨海署安積班」

今野敏さんの作品の中でもドラマ化されて 絶大な人気を誇る「東京湾臨海署安積班」シリーズ。 最新作の「夏空」を読んだ。 今作は、それぞれの警察官の矜持が熱く 描かれた…

心に染みる検察小説「恋する検事はわきまえない」

第3回警察小説大賞を受賞した直島翔さんの 「転がる検事に苔むさず」(小学館)の 続編「恋する検事はわきまえない」(小学館) を読んだ。 検事が現場の刑事とともに捜査…

異色の刑事小説!シリーズ第4作「愚者の決断 浜中刑事の杞憂」

大好きな警察小説「浜中刑事」シリーズ 第4作「愚者の決断 浜中刑事の杞憂」を 読んだ。 鄙びた田舎の駐在所でお巡りさん人生を 夢見る、浜中康平。 それなのにある日か…

笑いが止まらない笑劇展開!「お梅は呪いたい」

藤崎翔さんは元お笑い芸人、「神様の裏の顔」 (角川文庫)で第34回横溝正史ミステリ大賞を受賞。 このデビュー作が面白過ぎて、以降藤崎さんの 作品はほぼ読んでいる。 最…

異色の刑事小説!シリーズ第2作「浜中刑事の迷走と幸運」

小島正樹さんの人気警察小説 「浜中刑事」シリーズ第2作 「浜中刑事の迷走と幸運」を読んだ。 大好きなシリーズだ。 浜中刑事は捜査一課に呼ばれたことを とても残念に思…

戦慄の展開!「最恐の幽霊屋敷」

最近、大島清昭さんのホラー小説にはまっている。 きっかけは、タイトルにひかれて手に取った 「地羊鬼の孤独」(光文社)を読んでからだ。 市内で全裸遺体の入った棺が次…

空気の読める人間しか生きられない町って何?「誰かがこの町で」

空気の読める人間しか生きられない町って何?「誰かがこの町で」

「わたし消える」で2019年第65回江戸川乱歩賞を受賞した
佐野広実さんの受賞後第1作「誰かがこの町で」を読了。

受賞後第1作は、強烈な印象が残るサスペンスミステリー。
今の日本社会の歪みを浮き彫りにした、ある意味とても
恐ろしい作品だと思う。

19年前、郊外の瀟洒な町の住宅街で起きた男児誘拐事件と、
一家失踪事件。
そのどちらも謎を抱えたまま、いまだに解明されずにいた。

弁護士事務所所長に

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時代小説の斬新過ぎる謎の設定に絶句!「この世の春」

時代小説の斬新過ぎる謎の設定に絶句!「この世の春」

宮部みゆきさんの「この世の春」(新潮社)を読んだ。
言葉もでないくらい面白かった。
〇十年前、「火車」を読んだ時以来の凄すぎる衝撃!
読んでる時に目が先へ先へと流れていく。
でも、早く真相を知りたいのに、読み終わるのが
もったいないと感じてしまう・・・。

小藩の北見家で、お家騒動が持ち上がった!
北見藩の下級武士の娘・各務多紀は、ある日の深夜
赤子を連れた女中から助けを求められる。
その女中は、

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事件を呼ぶ刑事岩倉剛シリーズ!「罪の年輪 ラストライン⑥」

事件を呼ぶ刑事岩倉剛シリーズ!「罪の年輪 ラストライン⑥」

堂場瞬一さんの人気警察小説
「ラストライン」シリーズは、6作目に突入!

立川中央署に勤務する刑事・岩倉剛は、
あらゆる事件を記憶するという特殊能力がある。

定年まで残り少ない年数を事件に捧げる刑事・岩倉。
ある理由で所轄を転々としていたが、その懸念も
無くなり、立川中央署での最後の事案に挑む。

玉川上水の河川敷で、高齢の男性の遺体が発見された。
身元は、元小学校教員の小村春吉、87歳。
岩倉

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人の悪意が「闇ハラ」を生む?「闇ハラ」VS「闇祓」

人の悪意が「闇ハラ」を生む?「闇ハラ」VS「闇祓」

辻村深月さんの初の本格ホラーミステリ小説
「闇祓」(角川文庫)読了。
以前読んだ時、あまりの衝撃と面白さに
文庫化されたら絶対に再読すると決めていた作品。

「闇をおしつけ、周囲の人達を不幸の
どん底に突き落とす。そしてたくさんの人が死ぬ」

人が死ぬほどの「闇」とはいったい何なのか?

「転校生」
寡黙で何を考えているのかわからないため
クラスで一人浮いている転校生・要に、
親切に接する真面目な

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着衣から推理を展開する斬新さが面白い!「クローゼットファイル 仕立屋探偵桐ヶ谷京介」

着衣から推理を展開する斬新さが面白い!「クローゼットファイル 仕立屋探偵桐ヶ谷京介」

「よろずのことに気をつけよ」で第57回江戸川乱歩賞
を受賞し、デビューした川瀬七緒さん。
その後シリーズ化された「法医昆虫学捜査官」は
警察の捜査に昆虫学を導入し、昆虫の生態から
事件の謎を解くと言う、今までにないアプローチで
ミステリファンの度肝を抜いた。

そして、作者が「昆虫学」の次に注目したのは「洋服」だ。

シリーズ第1作は、「ヴィンテージガール 仕立屋探偵桐ヶ谷京介」。
卓越した腕を持

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戦慄のサスペンスミステリー「花束は毒」

戦慄のサスペンスミステリー「花束は毒」

読みたかった織守きょうやさんの
「花束は毒」を読了。
随所に仕掛けられた罠に絶句!!

中学生の時に、木瀬の従兄はいじめを受けていた。
それを解決したのが木瀬の1年先輩の北見理花。
彼女が解決してくれたおかげで従兄は
いじめから解放された。
しかし、その「解決」に疑問を持った木瀬は
心に棘のようなものが残ってしまった。

それから六年後、木瀬はかつての家庭教師・
真壁と出会う。
当時はイケメンで快

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ホーソーン&ホロヴィッツシリーズ第5弾「死はすぐそばに」

ホーソーン&ホロヴィッツシリーズ第5弾「死はすぐそばに」

ホロヴィッツ自身が作品中に本人役で登場し、
元刑事の偏屈探偵・ホーソーンと
コンビを組んだシリーズ「メインテーマは殺人」、
「その裁きは死」「殺しへのライン」、
「ナイフをひねれば」に続く第5作目が本書
「死はすぐそばに」だ。

新作の締め切りが近づき、焦るホロヴィッツは、
ホーソーンと話すが、新たな事件の捜査協力
依頼はないと断言される。
困り果てたホロヴィッツは、ホーソーンが
過去に携わった事

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刑事・マリア&漣シリーズ第4弾「ボーンヤードは語らない」

刑事・マリア&漣シリーズ第4弾「ボーンヤードは語らない」

型破りな女性刑事マリアと
スマートな日系人刑事の漣が
難解な事件を解決する、本格ミステリー。
鮎川哲也賞受賞作、「ジェリーフィッシュは凍らない」
第2弾の「ブルーローズは眠らない」
第3弾「グラスバードは還らない」に続く
第4弾「ボーンヤードは語らない」読了。

第4弾には4編の作品が収録され、どの作品も
非常に面白い。

U国A州の空軍基地にある『飛行機の墓場(ボーンヤード)』で、
兵士の変死体

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斬新すぎる視点のミステリー登場!「ヴィンテージガール 仕立屋探偵桐ヶ谷京介」

斬新すぎる視点のミステリー登場!「ヴィンテージガール 仕立屋探偵桐ヶ谷京介」

「よろずのことに気をつけよ」で第57回江戸川乱歩賞
を受賞し、デビューした川瀬七緒さん。
その後シリーズ化された「法医昆虫学捜査官」は
警察の捜査に昆虫学を導入し、昆虫の生態から
事件の謎を解くと言う、今までにないアプローチで
ミステリファンの度肝を抜いた。
シリーズは7作品。めちゃめちゃ面白いから
新作が待ち遠しいところ!

そして、本書「ヴィンテージガール 仕立屋探偵桐ヶ谷京介」
は、卓越した

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なにがが起こりそうな洋館で起きた事件!「そして誰かがいなくなる」

なにがが起こりそうな洋館で起きた事件!「そして誰かがいなくなる」

豪華絢爛な洋館の描写に思わずほ~と
ため息が出そうになる。
「実在する洋館」を舞台に描かれた、
クローズドサークルミステリー。
下村敦史さんの「そして誰かがいなくなる」
(中央公論新社)読了。

都心から離れた郊外。
メインの外観は、グリーク・リバイバル様式。
多角形の尖塔が特徴のクイーン・アン様式をプラス。
荘厳さを誇る洋館は、覆面で大御所ミステリー作家・
御津島麿朱李が細部にまでこだわった自邸

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警察官の矜持が熱い!シリーズ新作「夏空 東京湾臨海署安積班」

警察官の矜持が熱い!シリーズ新作「夏空 東京湾臨海署安積班」

今野敏さんの作品の中でもドラマ化されて
絶大な人気を誇る「東京湾臨海署安積班」シリーズ。
最新作の「夏空」を読んだ。
今作は、それぞれの警察官の矜持が熱く
描かれた傑作短編集10作品が収録されている。

どの作品も素晴らしいが、特に印象に残った
作品がある。

「会食」
ある日、榊原課長に呼ばれた安積。
話は、署長が暴力団幹部と会食を
していたらしく、それを新聞記者が
掴んでいるという報告があり、

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心に染みる検察小説「恋する検事はわきまえない」

心に染みる検察小説「恋する検事はわきまえない」

第3回警察小説大賞を受賞した直島翔さんの
「転がる検事に苔むさず」(小学館)の
続編「恋する検事はわきまえない」(小学館)
を読んだ。

検事が現場の刑事とともに捜査を行うと
いう、今まで知らなかった検察の新たな
側面を知ることが出来た。

東京区検察庁浅草分室。略して区検。
優秀な検事なのに、区検で地味で
軽微な事務仕事をこなす、久我周平。

「ジャンブルズ」
そんな久我の部下である、倉沢ひとみ

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異色の刑事小説!シリーズ第4作「愚者の決断 浜中刑事の杞憂」

異色の刑事小説!シリーズ第4作「愚者の決断 浜中刑事の杞憂」

大好きな警察小説「浜中刑事」シリーズ
第4作「愚者の決断 浜中刑事の杞憂」を
読んだ。

鄙びた田舎の駐在所でお巡りさん人生を
夢見る、浜中康平。

それなのにある日からとんでもない
「強運」に恵まれ、巡査でありながら
次々と手柄をあげ、とうとう捜査一課に
呼ばれてしまった。

あまりにも田舎のお巡りさんを夢見て
仕事中に妄想に浸ってしまい、相棒の夏木刑事に
「おい、また妄想か」と突っ込まれる日々

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笑いが止まらない笑劇展開!「お梅は呪いたい」

笑いが止まらない笑劇展開!「お梅は呪いたい」

藤崎翔さんは元お笑い芸人、「神様の裏の顔」
(角川文庫)で第34回横溝正史ミステリ大賞を受賞。
このデビュー作が面白過ぎて、以降藤崎さんの
作品はほぼ読んでいる。
最近の話題作は「逆転美人」(双葉文庫)

藤崎さんの作品は、元お笑い芸人ということもあり、
ユーモアと謎解きの絶妙なバランスはお見事!

「お梅は呪いたい」は、500年の眠りから覚めた
呪いの人形・お梅の物語。

古民家の解体中に発見さ

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異色の刑事小説!シリーズ第2作「浜中刑事の迷走と幸運」

異色の刑事小説!シリーズ第2作「浜中刑事の迷走と幸運」

小島正樹さんの人気警察小説
「浜中刑事」シリーズ第2作
「浜中刑事の迷走と幸運」を読んだ。
大好きなシリーズだ。

浜中刑事は捜査一課に呼ばれたことを
とても残念に思っている。

浜中刑事の夢は、田舎の派出署の
お巡りさんになって、田舎で
起きる何気ない小さな事件や、住民の
困りごとを解決して、あわよくば
地元の可愛い女の子と結婚して平凡な
お巡りさん人生を貫くことだ。

それなのにある日からとん

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戦慄の展開!「最恐の幽霊屋敷」

戦慄の展開!「最恐の幽霊屋敷」

最近、大島清昭さんのホラー小説にはまっている。
きっかけは、タイトルにひかれて手に取った
「地羊鬼の孤独」(光文社)を読んでからだ。
市内で全裸遺体の入った棺が次々と発見された。
その遺体は内臓が模型に変えられるという
無惨なものだった・・・。
本格的警察小説にホラー・ミステリーをミックス。
そしてロジックを駆使した推理とどんでん返し、
二重三重の謎解き!ホラーミステリーの恐ろしさ・面白さを
全て

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