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斬新すぎる視点のミステリー登場!「ヴィンテージガール 仕立屋探偵桐ヶ谷京介」

「よろずのことに気をつけよ」で第57回江戸川乱歩賞
を受賞し、デビューした川瀬七緒さん。
その後シリーズ化された「法医昆虫学捜査官」は
警察の捜査に昆虫学を導入し、昆虫の生態から
事件の謎を解くと言う、今までにないアプローチで
ミステリファンの度肝を抜いた。
シリーズは7作品。めちゃめちゃ面白いから
新作が待ち遠しいところ!

そして、本書「ヴィンテージガール 仕立屋探偵桐ヶ谷京介」
は、卓越した腕を持つ職人と最先端のファッション業界を繋ぐ
服飾関係のブローカーで、美術解剖学にも精通している、
そして京介自らも洋服の設計図が描ける著名な
テキスタイルデザイナー。
そんな凄い経歴を持つ、仕立屋・桐ヶ谷京介が、洋服から
事件の全貌を明らかにするというミステリー小説。

昆虫学に続き、新しい作品は、何と「洋服」にこだわった
今までにない視点。読んでいるときは「凄い」の連続だった。

若き仕立屋の桐ヶ谷京介は、ある日テレビの情報番組で
10年前起きた少女死体遺棄事件の公開捜査を視た。
テレビに映し出された少女の遺留品であるワンピースを
視たことで、少女の死が京介の心の琴線に触れた。

京介は、仕事柄他人にはない特殊能力を持っていた。
洋服の着方や、洋服のしわ、その人の骨格や姿勢、歩き方、
癖などから、病気や暴力を推理することが出来る。
その能力のせいですれ違う人たちについ余計な声をかけて
しまう・・・。
DVや、児童虐待の可能性があるかもと、何度も警察に
通報したりしていた。

報道された少女の遺留品を視た時、少女がどういう
状態で亡くなったのか、イメージが浮かんだ。
特にワンピースに残った血痕だ。
あと、仕立ての特徴からは、何人かの手が加わっていることも。

テレビ報道から自分なりに推理した事を警察に
通報を試みた京介だったが、全く相手にされなかった。

仕方なく京介は自分の伝手を頼ることに。
ワンピースの模様とデザインから懇意している
古着屋の店主・小春に相談。
ヴィンテージの古着に関しては右に出るものがいないほど
詳しい女性だ。

ワンピースは昭和33年頃ある場所でのみ流行った
模様とデザインだった。
その模様は「バクハツ」という名称がついていた。
そんな古いワンピースを10年前に亡くなった
10代前半の少女がどういう経緯で着ることなったのか?

二人はそこから調査をしてゆく。

二人の調査が進む過程で、事件を担当している
刑事二人が彼らの推測を認め、捜査協力を依頼。

さらに、釦(ボタン)コレクターの女性、釦に詳しい
ちょっと変わり者の老婆、世界最先端をゆくプリント工場の
会長など、曲者たちの情報が少女の死を悼む
京介の心に同調し、捜査の糸口をひも解いてゆく。
そして、少女にまつわる悲しい真実が明らかになってゆくのだ。

服を見ればその人のすべてがわかる・・・。
自分が学んできたことのすべてを総動員し、
「服」から人のすべてを推測できるという特殊能力を
持つ主人公が、被害者の痕跡に寄り添って
未解決事件の真相に迫ると言う独創的な切り口が
とんでもない面白さに繋がっている。

桐ヶ谷京介ほか、キャラクターたちが生き生きと
描かれ、本当に魅力的。
京介が亡くなった少女に寄り添って何度も涙する
シーンは、特に印象深い。
彼の優しさが、悲劇に見舞われた少女の物語の
救いになっている・・・。

「ヴィンテージガール 仕立屋探偵桐ヶ谷京介」
川瀬七緒 講談社

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