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【取材記事】ごみ再生資源の普及と活用で、自然豊かな地球を当たり前の世の中にしていく―ごみを「捨てる」から「POOL-資源として預ける―」流れにシフトチェンジ―

レコテック株式会社は、テクノロジーを活用し、持続可能な「資源循環」を提案し、創り上げる企業です。今回のインタビューでは、ごみとして廃棄処分されるプラスチック材を「再生資源」として蘇らせるプロセスや事業、そしてPCR材を普及させ、活用するメリットなどをうかがいました。

お話を伺った方

大村 拓輝(おおむら ひろき)様
レコテック株式会社様 資源循環デザイナー
学生時代に、アメリカのオレゴン州ポートランドに留学し、ビジネスとLOHASについて学ぶ。帰国後、株式会社ナイキジャパンのマーケティング本部に新卒として入社。 直近では、デジタルマーケティングマネージャーとして、デジタル上でのユーザージャーニー、コミュニケーションを設計し、顧客とのエンゲージメント向上に従事。 レコテックでは、ブランディング、資源循環プラットフォーム「POOL」の社会実装に向けたプロジェクトを担当している。


資源循環事業が世の中のSDGsの流れによって認められるようになった

mySDG編集部:御社の創業の経緯を教えていただいてもよろしいでしょうか?

大村さん:元々、代表の野崎が欧州の廃棄物に関する機材を販売導入する会社にいました。その会社では、野崎が企業の廃棄物やごみ置き場に足を運んだことで、リサイクルできそうな資源がたくさんあるということが分かったそうです。今、我々が取り組んでいるプロジェクトは、廃棄プラスチックです。様々なごみのニーズを実際に目で見て確かめて、「自分でもできるのではないかと」という考えに至って、会社を立ち上げたっていうのが創業の経緯になります。

mySDG編集部:2007年の創業からこれまでの15年間、途中でSGDsが話題になり、今、リサイクル資源がホットですが、御社の事業とSGDsで何か紐づいていること、共通部分はございますでしょうか? これまで事業やプロジェクトを続けて、やっとSDGsと繋がったという感触はあるのでしょうか?

大村さん:SDGsが知られるまでは、企業とごみの話をしていても優先順位が低く、ごみにコストをかけたくないという企業がほとんどでした。この数年で時代の流れが変わり、我々の活動に注目されるような機会が増えました。我々の活動とSDGsは、SDGs目標12番の「つくる責任 つかう責任」、13番「気候変動に具体的な対策を」、14番「海の豊かさを守ろう」と紐づいていると思います。

mySDG編集部:個人的にヨーロッパはエコがすごく進んでいて、日本ではエコのことを考えることが、やっと動き出したと感じています。大村さんはヨーロッパと日本のエコについてどう感じていらっしゃるのでしょうか?

大村さん:欧州も日本も資源がない国です。「資源を循環させていく」という取り組みは、欧州の方が非常に早く、ルール作りに関しては頭を使っており、賢い印象を受けます。

mySDG編集部:ごみのガイドラインが各自治体で異なっています。自治体の事情もありますが、御社ではこのようなことをどう感じていらっしゃいますでしょうか?

大村:家庭のごみは、基本的に一般ごみのことです。各自治体のごみの予算といった事情がありますので、ガイドラインを統一するのは難しいと思います。ただ一方で、日本の産業廃棄物や企業から出るごみは、民間で解決できます。弊社としては、まずは民間でごみ対応することにターゲットを絞り、取り組んでいる状況です。そして次に、一般ごみをどうやって循環させていくかが次のステップだと思っています。

リサイクル再生資源の普及のポイントは、再生のプロセスを見える化すること

mySDG編集部:私が気になったのが、御社の資源循環プラットフォーム「POOL(プール)」です。実際にどのようなことをされていらっしゃるのか教えていただいてもよろしいでしょうか?

大村さん:プールシステムの「POOL」とは、日本語で「貯める」という意味です。ごみをただ捨てるのではなくて「資源」としてきちんとプールし(=貯める、蓄える)、次の人がその資源を使いやすいように託していこうっていう思いを込めています。こちらのポイントは、まずは再生資源を使いたい人のニーズを洗い出すことです。
今、弊社はプラスチックの取り扱いがメインですが、例えば、メーカーさんが「ポリエチレンを使いたい」というニーズがあれば、ポリエチレンである廃棄物が何かを我々が特定します。再生資源を使いたい方が導入していただき、その回収のターゲットとなる資源が出てきたタイミングでシステムに登録していただく形です。

色々な拠点から回収したいものがどれぐらい出てるのかを見える化することで、物流チームが回収のマップを見ながら回収します。物流チームが回収した後に、次にいくつかの工程がある場合、中間処理やリサイクルといった全ての工程で仕組みを我々のシステム使っていただきます。最終的にリサイクル再生資源として出来上がったものが、「どこから出てきて、どういう経緯で、誰がリサイクルして今ここに来ているか」という情報もセットでお渡しする仕組みになっています。

mySDG編集部:全てのプロセスが見える化されていることで、相手の方も安心しますよね。

大村さん:「POOL」を使いたい企業が知りたいポイントは、リサイクル再生資源がどこからきているのかを証明するトレーサビリティ情報と、どれくらいの量が出るのかということです。拠点ごとにきちんとデータを取っていくことで、年度別などの発生予測ができるようになります。今後、このようなサービスを提供していく予定です

企業と自治体との協働でプラスチック材の資源循環をビジネスモデルとして実現させる

mySDG編集部:今までいくつかの事業を手掛けていらっしゃったかと思いますが、これまで取り組んで良かったと思うエピソードや改善点などを教えていただいてもよろしいでしょうか?

大村さん:今、弊社はプラスチックにフォーカスをしております。初めの取り組みとして、2021年東京都からサポートをいただきながら、花王さんと三菱地所さん、弊社の3社で「プラスチックの回収・製品化を通じた資源循環事業」をスタートしました。花王さんがプラスチックを使う側として参加していただき、三菱地所さんがプラスチックを出す側として参加していただきました。

通常、プラスチックごみは産業廃棄物になるので、ごみの収集許可を持つ車両しか運べませんが、我々が東京都に特別な認可をいただきました。実際にプラスチック材を循環させ、再生材として使えそうであると分かりました。2021年11月、その事業を拡大するために東京都のモデル事業という形で採択をされ、東京都全域に拡大を進めてきました。ごみを出す企業として、イオンさんや伊勢丹さんなどの商業施設の参加をいただいています。

リサイクル材を活用する企業は、花王さんに加え、凸版印刷さんなどのいくつかの企業さんです。今、規模が拡大しています。我々の課題の一つとして挙げられるのが、リサイクル材の品質を安定化させることです。今、どうすれば安定化につなげられるか、全体のオペレーションの構築をしている状況です。

mySDG編集部:今後、御社がチャレンジしてみたいことはありますでしょうか?

大村さん:今はプラスチック材をメインとした活動をしていますが、廃棄物の問題は生ごみとプラスチックは表裏一体です。今年度、生ごみの循環の取り組みを始めていきます。東京の多摩地区で生ごみを循環させる実証事業を取り組む予定です。
先のビジョンとしましては、今、ごみとなっている「静脈資源」として扱われているものを可視化し、データベースを作り、ごみの種類に対応した「循環の輪」を作る取り組みたいと思います。

mySDG編集部:静脈資源とは、どのようなごみのことを指すのでしょうか?

大村さん:飲み終わったペットボトル、使い終わった紙類や瓶など、いわゆる「ごみ」として出てしまうも、イコール「静脈資源」です。

PCR材の普及は資源循環の定着化とCO2削減につながる

大村さん:我々は「PCR(Post-consumer Recycled Resin)材」の普及に取り組んでいます。こちらの素材は、一度使い捨てられたプラスチックで再生された樹脂のことであり、海外では、自社製品にPCR材を一定のパーセンテージで入れていないと課税対象になる法律があり、普及が進んでいますが、日本ではPCR材が普及していません。

流出するプラスチックや海洋プラスチックが、「環境問題」と言われていますが、基本的には捨てられたプラスチック材であり、自然環境に流れたものです。我々はPCR材を花王さんや凸版印刷さんなどの企業に提供する立ち位置となっていますので、世界でPCR材をいかに普及させるかが非常に重要あって、それが大きなキーワードです。国内で生産できるPCR材がほとんどないので、斬新的な取り組みとしては注目度が高いと思っています。

我々の取り組みは、燃やされてしまうプラスチックを回収し、燃やす代わりにリサイクルによって再度資源として使うことをしていますが、その過程でCO2の排出削減ができます。PCR材に関しては、製造業者さんがPCR材を調達すれば、石油由来のバージンプラスチックを調達するよりもCO2の削減量が低くなります。

mySDG編集部:お忙しい中ありがとうございました。


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