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【取材記事】美容業界の余剰資源がオリジナルコスメに生まれ変わる 捨てられる価値に命を吹き込む化粧品アップサイクルプロジェクト「BrandX(グランドクロス)」

化粧品・健康食品業界で見過ごされていた「廃棄される余剰原料・材料」の課題に取り組む化粧品アップサイクルプロジェクト「BrandX(ブランドクロス) 」。やむを得ず発生する余剰資源を買い取り、新たな価値を加え、数量限定アイテムとして再び世の中に送り出しています。なかでも化粧品・健康食品業界は法律の制限が厳しく、化粧品のアップサイクルは実現が難しい分野。そんな困難な挑戦に向き合ったブランド発足の背景や商品の魅力について「BrandX」を運営する株式会社MONOMEDICA 代表・森下友喜さんにお話を伺いました。

【お話を伺った方】
株式会社MONOMEDICA代表・森下友喜(もりした・ゆき)さん

【 MONOMEDICAについて】
MONOMEDICAは、お客様のアイディアから「最適なカタチ」の創造をサポートする、健康食品・化粧品のOEMメーカーです。製品の製造だけではなく、企画、ブランディング、広告戦略、販売・流通プラン、CRMに至るまでをプロダクトの一環として捉え、包括してサポートすることにより、唯一無二のプロダクトを生み出し続けています。



■美容業界の「見えづらい課題」を世の中に発信したい

mySDG編集部:「Brand X(ブランドクロス)」を立ち上げたきっかけを教えてください。

森下さん:長年、化粧品・健康食品業界の開発・製造に従事してきましたが、現場ではコストや品質の安定を維持するために、原料や容器を多めに作らざるを得ない状況があります。というのも、容器の不良や作業ロスによって、例えば5,300本で設計していた商品が実際は4,800本しか納品できないことが起こり得ます。これらのロスを見越した上で納品数を設定し、バルク(容器などに小分け充填する前の化粧品の中身)なども多めに用意しておくのですが、結果として余りが出てしまう。つまりは仕方なく生まれてしまう「必要な余剰」でもあります。これらの余剰資源が廃棄される状況を20年ほど見てきて、「仕方ない」では終わらせず、業界内部で発生している「見えにくい課題」を、一般のお客さまや業界外の方にも知ってもらいたいと思いました。

mySDG編集部:商品本体が捨てられる「コスメロス」ではなく、化粧品の原材料や容器などのロスは外からは見えにくいゆえに、解決する取り組みも進みにくいですよね。

森下さん:そうなんです。余剰廃棄は生まれても業界内部では経済合理性は満たされているので、だからこそ見過ごされてしまう課題でもあったと思います。しかし世界的にSDGsの取り組みが進む中で、余った原料や容器をうまく活用できないだろうかという思いが強くなりました。そもそも私たちMONOMEDICAは化粧品・健康食品を手がけるOEM企業です。さまざまな企業とものづくりを行い、多種多様な原料や容器を取り扱ってきた私たちだからこそ、「必要な余剰」を適正な価格で買取り、あらたな商品を生まれ変わらせるという新しいものづくりに挑戦できるのではないか。そんな想いから2023年1月に新たな価値を届ける化粧品アップサイクルプロジェクトとして「BrandX(ブランドクロス)」を立ち上げました。

■廃棄予定の原材料だけで手がける高品質コスメ

mySDG編集部:余った原料から新たな化粧品を生み出す「BrandX」の取り組みにはこれまでにない新しさを感じています。そもそも余った原材料だけを組み合わせて新しい化粧品を開発していくというのは、すごく難しいことではないでしょうか。

森下さん:すごく難しいことですよ(笑)。先ほど「コスメロス」の話が出ましたが、私たちがやろうとしているのは、まだコスメになっていない原材料を見つけてきて、それらを活用して新たな商品を生み出すこと。廃棄予定の原材料だけを組み合わせ、法律も品質もクリアした上で質の高い商品を作っていくことは、かなりハードな挑戦です。

そもそもものづくりには「品質の壁」「法律の壁」「労働の壁」が立ちはだかります。特に化粧品は法律の制限が厳しく、法律の抜け漏れをチェックできる知識ある人材の確保は容易ではありません。さらに「労働の壁」という点では人件費も大きなハードルになりますし、いかにして採算をとるかは大きな課題ですよね。そういった意味では「BrandX」はある意味、利益追求型ではない広報事業として舵を切っているからこそ立ち上げられたという背景があります。

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mySDG編集部:美容業界の「見えにくい課題」に光を当て、社会に問題提起をする役割を担うということですよね。

森下さん:おっしゃる通りです。化粧品が生み出される裏側では、多くのロスが発生し、原材料を捨てなければならない現実があります。例えばネイルの細かな色味の作る場合、工場側は企業側の指示を受けて何度も色味を調整して完成品を仕上げるため、多くのロスを出してしまいます。しかし、そういったロスを工場側がすべて引き受けざるを得ない。だからこそ、製造現場での苦労を化粧品ブランドの商品企画やマーケティングに携わる方々にもぜひ実感していただきたいと考えています。

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mySDG編集部:開発・製造の現場に長く従事していた森下さんだからこそ、現場が引き受ける苦労にもちゃんと目を向けていたいということですね。

森下さん:そうですね。実際に「BrandX」を製造する現場では、一部の作業はあえてラインをとらず、余った時間で包装作業などをお願いしています。工場側としても無駄に人件費をかけなくていいですし、働いている方も無理なく働けるので。働きやすいものづくりの現場を作ることは、SDGsの文脈においても重要な取り組みだと思います。

■余剰資源が生み出す「一期一会のコスメ体験」を届けたい

mySDG編集部:今後の展開はどのようにお考えですか?

森下さん:「BrandX」が目指すのは、余剰資源によって生まれるアイテムをポジティブに楽しめるものとしてデザインしていくことです。現在ノベルティとして扱っているリップクリームでいえば、リップ容器は別々の商品の余剰パーツを組み合わせて作られたもので、さらにリップ本体(バルク)も余剰原料のアップサイクルなので、成分や香りも販売時期によって異なります。それでも偶然によって生まれたカラーリングや香りの一期一会の出会いとして楽しんでいただけたらうれしいですね。

そもそも限られた原材料を組み合わせて生まれた商品なので再現性が低く、通常であれば製品化されないものです。それでもSDGsの観点から興味を持ってくださる方も多く、非常に喜ばしく感じています。先日は小さな展示会向けに余った香料でフレグランスミストを作ったところ、別のプロジェクトで商品化したいという企業さんや個人さんからのお声をいただくこともありました。余剰資源から生まれたものなので確実に作れるかというと難しい面はありますが、「BrandX」の母体はOEM企業であるため、ロットを増やして作ることも可能です。そういった点でも「Brand X」を入り口にあらたなビジネスとしての広がりも期待しています。

mySDG編集部:MONOMEDICAとしてのバリューを発揮できるということですよね。

森下さん:そうですね。「BrandX」は一般消費者向けに展開していますが、私たちの活動に関心を持っていただいた企業があれば、BtoB向けのサービスとしても提案できます。しかし、その際に意識したいのが品質の基準についてです。過剰品質を求めすぎるがゆえに製造現場でもロスが生まれてしまう背景があります。そのため今後は方向性を同じくするパートナー企業を増やしていくことを次の展開として期待したいですね。

mySDG編集部:確かに企業間で取り組みの輪が広がることは重要ですね。過剰品質をあらためて見直し、サステナブルな観点から商品開発・製造の現場をアップデートするときが来ているのかもしれません。森下さん、本日は貴重なお話をありがとうございました。

【MONOMEDICAとは】
これまで廃棄されていた原料や容器など、棄てられる価値を救い、アップサイクルすることで新たに命を吹き込む。SDGs時代に、OEMメーカーとしての経験を活かし、業者間ネットワークやノウハウを駆使して、持続可能な化粧品・健康食品の製造スキームを構築し、目指すべき未来へ。

当社では、アップサイクルを前提とした化粧品・健康食品の製造と提供するプロジェクト『Brand X(ブランドクロス)』を通じて業界の課題解決を目指し発信しています。
MONOMEDICAでは、持続可能な化粧品・健康食品産業の構築を目指して、引き続き再利用可能な原料・資材の活用に取り組んでいきます。

【 会社概要 】
社名:株式会社MONOMEDICA
所在地:〒106-0047東京都港区南麻布3-6-17
設立:2020年9月16日
代表者:代表取締役 森下 友喜
URL:https://monomedica.co.jp/


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mySDGへの取材依頼・お問い合わせは mysdg.media@bajji.life までお気軽にご連絡ください。


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