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【取材記事】未来の「食」の問題を念頭に、新たなタンパク源を提案。栄養と食べやすさを兼ね備えた、サステナブルな「シルクフード」を展開。当たり前に選ばれる食材を目指す

エリー株式会社は、サステナブルな食の未来を実現すべく、蚕を利用した次世代食品「シルクード」​​の研究開発を進めています。今回「SILKFOOD かいこプロテインスムージー」2種類と「シルクフード チップス」を発売しました。
日本ではあまり馴染みのない、昆虫食に取り組むきっかけや困難、将来の展望などについて、mySDGの小林がエリー株式会社代表取締役の梶栗様にお話をお伺いしました。

お話を伺った方

梶栗 隆弘(かじくり たかひろ)様
エリー株式会社 代表取締役
1986年生まれ、福岡県宗像市出身。 法政大学卒業後、昭和産業株式会社に入社。 法人営業やGMS・SMの商品開発等に従事。 2018年に蚕を次世代の食品にすべく、当事業を共同創業。

インタビュアー

小林慎和(こばやし のりたか)
株式会社bajji 代表取締役CEO
 
ビジネス・ブレークスルー大学 教授 大阪大学大学院卒。野村総合研究所で9年間経営コンサルタントとして従事、その間に海外進出支援を数多く経験。2011年グリー株式会社に入社。同社にて2年間、海外展開やM&Aを担当。海外拠点の立ち上げに関わり、シンガポールへの赴任も経験。その後、シンガポールにて起業。以来国内外で複数の企業を創業しイグジットも2回経験。株式会社bajjiを2019年に創業し現在に至る。Google play ベストオブ2020大賞受賞。著書に『人類2.0アフターコロナの生き方』など。


食品メーカー出身だからできる新しい事業、かつ自分が楽しみを持てる新しい食文化事業をする。

小林:創業のきっかけを教えて下さい。

梶栗さん:新しい事業をしようとしたときに、食品メーカー出身の私の経験を活かせること、楽しみを見つけられそうなこと、ひとのためになることをしたいと考えました。
ちょうど創業しようとした時期に、ヨーロッパで昆虫食が注目され始めたところでした。まだ日本では本格的に昆虫食事業が殆どなかったので、これはいいのではないかと蚕の事業を始めました。

小林:昔から蚕に注目していたのですか?

梶栗さん:いいえ。そうではありません。食品分野で新しい事業を始める際に、バックキャスティングで未来から今必要なことを考えたとき、新たなタンパク源が必要になると思いました。そして世界的な動きでも注目が集まりつつあり、かつ、生産効率の良い昆虫食に行きつきました。

小林:mySDGでもコオロギの昆虫食事業を行っている会社様にインタビューしたことがあり、昆虫食への気付きがありました。今回のスムージーはプロテインが豊富のようですね。

梶栗さん:そうですね。スムージーは大正製薬さんとのコラボ製品なのですが、大正製薬さんの研究で、昆虫食はプロテインが豊富で、蚕には62の栄養素が入っていると分かりました。このイメージを伝えていくにあたり、一番良い製品を考えたところ、プロテインスムージーに至ったという経緯ですね。

SILKFOOD かいこプロテインスムージー

小林:蚕事業を始めたのは何年になるのですか?

梶栗さん:2018年6月です。

小林:2018年に昆虫食事業に注目するというのは、早かったのではないでしょうか。

梶栗さん:そうですね。日本には当時、将来的なSDGsを念頭に置いた同業種の企業が2社位ありました。ヨーロッパだと100社位ありましたね。

以前は、いなごの佃煮などの伝統食はありましたが、5年位前からは未来型の昆虫食が現れた形ですね。以前の昆虫食のイメージとは全く違うものになっています。

小林:火星に行くには昆虫食が必要と言われていますね。

梶栗さん:そうですね。将来的には、宇宙食や新しい食資源として捉えて可能性を探っていきたいですね。

「シルクフード」はお肉や卵の代替えにもなる加工品としての使いやすさが特徴

小林:蚕資源のシルクフードのお話をお聞きしていますが、ほかにも事業があるのですか?

梶栗さん:今は蚕事業を一番に考えております。商品としてはスムージーとチップスがあるのですが、以前にはハンバーガーを作っておりました。パティを蚕で作り、店舗販売を試みたのですが、オープンと同時にコロナ過に突入してしまい、残念ですが自分たちで店舗を経営するのは難しそうだと断念しました。

小林:現在は外販などはしていないのですか?

梶栗さん:今考えているのは、ハンバーカーショップなどに使って頂くことですね。パティが出来るということは、ナゲットにもできます。ドリンクの代わりにプロテインスムージーなどですね。
コオロギなどの昆虫食は基本的にパウダー状が基本で、小麦粉や大豆の代替えが出来ます。蚕の場合は、パウダー状に加えてペースト状にも出来るので、お肉の代替えとしてパティに加工することが出来ます。バーガーショップの限定商品などから、使って頂けるといいと思っています。将来的には、卵やミルクの代替も可能だと思っています。

小林:シルクフードは女性がターゲットなのですか?

SILKFOOD かいこプロテインスムージー/SILKFOOD チップス

梶栗さん:現状はターゲット層を絞っていないです。購入頂いている方は、どちらかと言うと新規性に興味を持たれている方が目立ち、男性と女性で言えば半々位になります。
現在商品を発売して1年程経ちましたので、ターゲットを絞り直し、商品を改めて考えようとしています。

小林:蚕を使うと消費期限が短かったりするのですか?

梶栗さん:蚕だからといって特別短いことはありません。

小林:蚕自体は御社で生産しているのですか?

梶栗さん:いいえ。ベトナムの委託農家さんで生産しています。蚕は立体飼育が出来るので、生産効率が良いのです。飛び跳ねたりもしないですしね。

小林:2018年当初からSDGsを考慮した事業のスタートだったのですか?

梶栗さん:創業当初からSDGsを十分に意識して活動していましたね。

小林:SDGsの目標を伝えていく上での課題や難しさなどはありますか?

梶栗さん:お話すると当社の目標は理解をして頂けるのですが、自分事として中々考えて頂けないところでしょうか。
実際に購入する段階になると、やはりコストの話になってしまいます。環境にいいことだから選んでもらえるという市場にはなっていないですね。
単価も安くはない現状ですが、多くの方に選んで頂けるようになればもう少し価格も下げられると思います。

「蚕」の食品としてのポテンシャル。たんぱく質とオメガ3脂肪酸

小林:蚕から食品にする過程の中で御社独自の強みなどはあるのですか?

梶栗さん:ありますね。蚕を食品として生産する知見であったり、それを実際に農家さんに落とし込んでいるところが一つ。もう一つは、私が食品原料メーカー出身のこともあり、蚕のパウダーやペーストの一時加工のプロセスにて、加工技術面でどうしたら使いやすい製品になるのかなどの知見があることです。将来的には、食品メーカーに卸す販売モデルを考えています。

小林:蚕には62種類の栄養素があるとおっしゃっていましたが、食品にしたときに栄養素が残るようにする技術などもあるのですか?

梶栗さん:全ての栄養素を製品に落とし込むまでの段階にはまだきていない状態です。今は、そもそもどんな栄養素が含まれているのか、どんな健康効果があるのかを、京都大学や愛媛大学、大正製薬などの大手企業と研究していっている段階ですね。
そのため、スムージーには、62の栄養素のすべてが入っているとは明記していません。

小林:なるほど。タンパク質が豊富にあることは魅力だと思うのですが、その次に多い栄養素は何でしょうか?

梶栗さん:オメガ3脂肪酸です。オメガ3脂肪酸は人が体内で生合成できない必須脂肪酸ですが、蚕はオメガ3の含有量がとても多い食品です。既存の食品の中でも、かなり上位に入るのではないでしょうか。ですので、純粋に筋肉をつけることだけを求めるプロテイン的な消費ではなく、どちらかと言うと総合的な栄養価を軸に、ウェルネスやビューティが実現できる食品だと感じています。今後は、その方向で動こうとしています。

小林:タンパク質とオメガ3脂肪酸が入っているのは最高ですね。あとはマグネシウムが入ると更にいいですね。

梶栗さん:マグネシウムは吸収率に関係しますね。入ってはいますがタンパク質やオメガ3に比べると多くはありません。
今まではサステナブルや新規性に着目していたのですが、それだけですと中々市場が切り開けないところがあったので、これからは、健康食品としての要素をプラスして、最終食品として価値の高いものを作っていくことを今年の目標にしています。

小林:シルクフードとはとても良いネーミングですね。シルクのイメージはとても高級な、つやのある、柔らかいようなイメージがありますよね。

梶栗さん:チョコレートで有名な明治さんと市場調査をしていた時に、「昆虫食」というこ言葉は、気持ち悪い、抵抗感、苦手といったネガティブなイメージが連想されるのに対して、「シルクフード」ですと、上質、高級、白、なめらか等のポジティブなイメージが連想されることが分かりました。更に、環境に対しても良いイメージがあるワードでしたので、そのイメージを商品に落とし込みたいと思っています。

SILKFOOD かいこプロテインスムージー

小林:昆虫食に対して苦手なイメージを持たれる方もまだまだいらっしゃるかと思います。例えば、日本の寿司、生魚を食べる文化は以前は海外には受け入れられなかったものですが、「NOBU」という日本料理店で寿司が人気になったり、海外ドラマで弁護士が打ち上げで寿司を食べるシーンがあったりと、ここ20年で大分イメージが変わりました。
同じように、今後、人気俳優がドラマなどで昆虫食品を食べるシーンがあれば、それでイメージは一気に変わるような気もしますね。

梶栗さん:まさに、どう広めるかが課題で、「昆虫食」というネーミングのイメージがどうにかならないのかと思っていたのですが、そのお話でヒントを得たような気がします。
食品そのものではなくて、スタイルから入っていって、その価値のイメージを付けるやり方もあるのかと思いました。

小林:スムージーなら、見た目もフルーツカラーで飲みやすそうですし、取り入れやすいですね。

「健康」・「美肌効果」今後は具体的に効果を表現できる商品を目指す

小林:最後に、今後の展望などをお聞かせください。

梶栗さん:目指しているのは、皆様に当たり前に蚕を食べて頂ける世界です。肉・魚・大豆・小麦、その次に蚕がくるようにしたいと思っています。そのためには、食べる習慣、目的が必要なので、それに答えられるプロダクトを我々が作っていくことが必要だと考えています。現在、パウダーをパンやお菓子の原材料としてPASCOさんに使って頂いているのですが、こうした事例を増やして、皆様に情報を発信して頂ける企業様と共に良さを伝えていきたいと思っています。

小林:次なる予定はありますか?

梶栗さん:プロテインパウダーを作ってみたいと思っています。もちろん蚕を使うのでオメガ3脂肪酸も豊富に入っています。先程も申し上げたようなウェルネス&ビューティがコンセプトです。ファクトベースでこの栄養素の入った製品を作ろうと考えています。

小林:オメガ3脂肪酸の入ったパウダーは絶対欲しいですね。私は以前アトピーが出たりしていた事もあり、栄養素としてオメガ3脂肪酸は必要だったりします。青魚などに入っている要素なのですが、普通の食品で一日に必要な栄養素を取ろうとすると大量の食品を食べないとならないので、補助食品が必要になります。

梶栗さん:なるほど。エビデンス的には、オメガ3脂肪酸は肌によいということは十分なエビデンスがありますし、美肌効果が期待できますね。今後はより具体的に効果を表現できる商品にしたいと思っていましたので今後の参考になりました。

小林:ギリシャやイタリアの方も肌荒れが少ないようです。
オリーブオイルを沢山使ううえ、オメガ3脂肪酸の多い食文化が理由とのことです。

梶栗さん:イメージしやすい話ですね。ウェルネス&ビューティのプロテインパウダーは夏過ぎに発売目標で今開発しています。

小林:シルクフードを販売している実店舗はありますか?

梶栗さん:全国に点在しているのですが、例えば大阪のオーガニック系のお店ですとか、アーバンリサーチ大阪の店舗さんとかです。東京の方はポップアップショップなどになりますね。主にECショップでの購入になります。

小林:東京のポップアップショップなどでお見かけしましたら是非一度試してみたいと思います。次世代の新しくスマートな食文化の漸進的なお話をお聞きする事ができました。ありがとうございました。

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