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【取材記事】旅先の洗濯物を10分で乾燥!着替えを減らして航空機のCO2排出抑制にもつなげる衣類乾燥ツールを開発

旅行先や出張先で衣類を洗濯したものの、乾かず困った……という経験はないでしょうか。そんな旅先での“乾かない”悩みを解決してくれるのが、画期的なアイデアで商品化を実現した携帯用衣類乾燥バルーン「コツカンエアロダクトTHE ロング」です。2018年に開発された従来型モデルをアップデートし、丈長衣類にも対応できる改良型モデルとしてクラウドファンディングサービス「makuake(マクアケ)」にて先行販売されました。

衣類の乾燥を手助けするだけでなく、航空機の燃料負荷を下げCO2排出削減への貢献も期待できるという本商品。今回は、開発者であるマービン貿易株式会社 代表取締役の桃田邦年さんをお迎えし、開発に至った経緯やSDGsの観点から見た商品の魅力、今後の展望について伺いました。

お話を伺った方

マービン貿易株式会社 代表取締役
 桃田  邦年(ももた くにとし)
960年生まれ、愛知県北名古屋市出身。
 神戸学院大学卒業後、東濃信用金庫に入庫。 融資補助係を経て、東京銀行(現三菱UFJ銀行)に出向。 出向期間終了後、外国為替認可業務、渉外担当、店舗開設業務に従事。 1995年マービン貿易株式会社に入社し、25年間にわたり海外の生産現場 を訪れ、様々な製品の企画開発に携わる。



■大雨、大量の荷物、つかまらないタクシー…出張先での悲惨な体験が開発のきっかけに

本体に衣類を着せてドライヤーをセットするだけで衣類が約10分で乾燥可能な「コツカンエアロダクトTHE ロング」。

mySDG編集部:まずは商品の開発に至った経緯を教えてください。

桃田さん:これまで数々の海外出張を経験してきた中で、海外渡航時に「とにかく荷物を減らしたい」という個人的な思いが開発の出発点でした。荷物を減らすためには何が必要かを考えたところ、そもそも荷物の大半が着替えであると。じゃあ、着替えを減らすためにどうしたらいいかというところを突き詰めると、滞在先で洗った洗濯物がすぐに乾けば着替えはほぼいらないという結論に至ったんです。

mySDG編集部:海外出張の多い桃田さんの体験が開発の出発点だったのですね。

桃田さん:はい。ただ開発の大きなきっかけは、海外出張で遭遇した悲惨な体験が元になっています。そこで得たノウハウを商品に凝縮した感じですね。

15年以上、年間約100日を海外で過ごしてきた桃田さん。海外渡航の経験が商品開発のきっかけに。

mySDG編集部:ちなみにどんな悲惨な体験をされたのでしょうか?

桃田さん:とある海外出張先から帰国する日だったのですが、ホテルをチェックアウトすると外は大雨で……。タクシーで空港を向かおうにもタクシーがつかまらず、仕方なく雨の中キャスターバッグなどの荷物を3つほど持って地下鉄まで歩くことにしました。しかし、傘の効果も虚しく私も荷物もずぶ濡れの状態。無事地下鉄に乗れたものの、今度はききすぎた空調のせいで、寒さと濡れた不快感に襲われました。

途中で下車して着替えようと思いましたが、帰国便の時間を考えるとそんな余裕もない……。なんとか無事空港までたどり着いたのですが、そもそもなぜこのような思いをしなきゃいけないんだろうと考えたわけです。結論は先ほど申し上げた通り、荷物が多いからこうなるんだと。リュック一つで両腕があいていれば、傘をさして余裕でいけるということなんです。荷物を減らせれば楽ができるというところから始まり、じゃあ着替えは洗濯すれば減らせるよねというところに至りました。

mySDG編集部:なるほど。

桃田さん:ただ出張先で洗濯をするようになったのですが、今度は「洗えど乾かず」という状況に陥ります。生乾きの湿った状態のまま衣類をカバンに入れて、暑い日の長時間移動となれば、カバンの中はひどい生乾き臭です。カバンを拭いても臭いはとれず、結局カバンは廃棄することになりました。この経験から出張先ではエアコン・ドライヤー・アイロンなどを駆使してさまざま試みましたが、衣類を乾燥させるにはものすごい時間と手間がかかると。それならば、なるべく身軽で持ち運びができて、確実に乾かせる商品が欲しいと思ったことが商品の開発につながっていきます。

■ないものは自分で作ろう 展示会で目にした“あるもの”に開発の着想を得る

mySDG編集部:ちなみに、こういった衣類乾燥ツールはこれまでなかったのでしょうか?
桃田さん:それがなかったんです。当時、理想の商品を求めてググりまくったんですけど、検索にあがってきたのは、持ち運びができる洗濯ロープや小型のピンチハンガーくらいでした。もちろんこういった商品も便利ではあるのですが、私が理想としていたのは分単位で乾かせる乾燥ツールです。当時はなかったので、自分で作ったというところですね。
mySDG編集部:納得がいく商品に至るまでの開発秘話を教えてください。
桃田さん:乾かすのに一番大事なのは「温度」「湿度」「空気の流れ」だというのは、これまでの経験から十分に理解していました。しかし、早く乾かす方法はわかっているけれど、そのツールがないわけです。当初は理想とする衣類乾燥を再現できるツールがどんなものかもなかなか思いつきませんでした。それが、ある展示会場に置いてあったバルーンサイン(バルーン部分に空気を入れて自立させる看板)を見た瞬間、衝撃を受けたんです。「これだ!」と思って……。
mySDG編集部:ピンときたんですね!
桃田さん:そうです。これに服を着せたら完璧だと思って……。そこから具体的に家庭用のゴミ袋で試作したり、仏壇の線香で一つずつ表面部分に穴を開けて早く乾かせる配置を探ってみたり、試行錯誤を繰り返しました。

無数の穴から風が抜けることで、衣類をくまなく乾燥させる。

mySDG編集部:表面部分に穴があいているんですね?

桃田さん:はい。衣類に空気を送るだけでは、脇や袖、襟元部分は乾かないんです。大体この3ヶ所がいつも湿ってしまうので。とにかく10分程度ですべてを完璧に乾かしたいということが原点でしたから、脇や袖、襟元部分を乾かすには穴を開けて空気を当てるという結論に落ち着きました。

mySDG編集部:開発期間はどれぐらいかかったのでしょうか?

桃田さん:1年半ぐらいかかってますね。

mySDG編集部:何が最も苦労されましたか?

桃田さん:苦労したのは本体が適度に膨らんで、衣類がシワなくちゃんと張る状態を保つことです。本体と衣類が密着していないと乾きが遅いので、本体をしっかり膨らまして衣類を密着させるための適切な膨らみ具合というものに苦労しましたね。素材も空気を通してしまうものだとしぼんでしまうので、素材の選定にも精査が必要でした。

mySDG編集部:そのあたりはすでに事業をされていらっしゃるご経験から、色んな取引先とコネクションがあってノウハウがおありの印象を受けます。素材集めなどどうだったのでしょうか?

桃田さん:素材は国内の生地問屋さんでさまざまな生地を買っては色々試した結果、今回のものに落ち着きました。ただ素材が見つかった後も、穴の大きさについてはトライアンドエラーの連続でしたね。穴は大きいと膨らまないですし、小さいと乾きが遅くなりますので、何回も試作を繰り返した結果、ようやく納得のいく商品にたどり着いた感じでしょうか。

mySDG編集部:ちなみに「コツカン」という言葉は聞き慣れない表現ですが、商品名にはどういった由来があるのですか?

桃田さん:これは造語なんですが、忽ち(たちまち)という漢字は「コツ」とも読むので、乾燥の乾(カン)と合わせて「たちまち乾く」という意味で「コツカン」と名付けました。

■不便なことの解決がSDGsにつながる 荷物を減らして航空業界の環境課題に貢献

mySDG編集部:少し視点を変えて、SDGsの観点からお話しを伺いたいと思います。今回、「1人で出来るSDGs」というキャッチコピーが印象的だったのですが、もともと環境負荷削減というSDGsの観点を念頭に商品を開発されたのでしょうか?

桃田さん:開発の一番の目的は、まず自分が楽になりたいというものでした。しかし、荷物を軽量化できれば航空業界が目指すCO2排出削減にも貢献できますよね。1人で減らせる荷物はせいぜい10kg程度ですが、世界の航空旅客一人ひとりが取り組めば、かなりの軽量化が可能です。そもそもSDGsという言葉を聞くと、大企業や地方自治体などが主導になってやっているものというイメージがどこかありますよね。個人レベルの活動が全体行動になって取り組みの輪が広がることで、環境負荷軽減につながっていくと思います。

コツカンを活用して、預け荷物をなくした場合に減る重量予想。

mySDG編集部:多くの人が荷物を減らして、機内手荷物にまとめれば、スーツケースが要らなくなっちゃう感じですね。

桃田さん:はい。スーツケースをなくして、機内手荷物だけ、リュックだけで両腕を自由にして出張しましょうという提案でもあります。身体的にも負荷を軽減できますし、預ける荷物のために行列に並ばなくてもいい。逆に航空会社側も荷物を預ける手続きに取られる時間や預かった手荷物に使用するシール・紙タグ類も必要なくなりますよね。

mySDG編集部: 確かにそうですね。SDGsと聞くと、意識して行動しなきゃいけないという気持ちになりがちですが、不便なことを解決しようとするだけで、それが自然にSDGsに繋がっているという点で、とても魅力的な商品だと思いました。

2020年1月上海浦東空港からの帰国時の機内手荷物ひとつだけの写真。

桃田さん:ありがとうございます。旅行者も荷物が軽くなりますし、航空業界の方にとっても燃料負荷を軽減できて、両者にとってメリットがある商品だと考えています。

■クラウドファンディングで得た大きな反響!多様なユーザーの存在に感じる商品の可能性

本体重量は135g 、A5ポーチに入るサイズ感で持ち運びも楽チン。

mySDG編集部:クラウドファンディングでは、200名以上のサポートを集められたそうですね。

桃田さん:はい。身近な方々に告知をしたり、プレスリリースも配信したり、地道なPR活動を続けてきた成果かなと思います。ただサポーターの約4割を女性が占めていたのは予想外でしたね。正直、驚きました。

mySDG編集部:どうして驚かれたのですか?

桃田さん:当初は出張の多いビジネスマンを想定して開発したものだったので、サポーターはほぼ男性だろうと思っていました。ところが予想外に女性が多くて、やはり自宅の洗濯物が乾かないという悩みがあるように、女性は衣類の乾燥に興味をお持ちなんだなと。

mySDG編集部:確かにクラウドファンディングのプロジェクトタイトルにも「ビジネスマン必見」と明記されていましたよね。やはり洗濯・乾燥というキーワードから女性にも響いたのかもしれませんね。今回クラウドファンディングも無事成功されて、順調なスタートを切られていますが、最後に今後の展望などあれば教えてください。

桃田さん:クラウドファンディング終了後も、継続して商品を広めていきたいですね。現状は日本だけの市場なので、今後は全世界に広げたいと考えています。実際に東急ハンズさんやロフトさんで販売していても、外国人の方が購入していくケースも多く見受けられました。衣類を乾燥するのは世界共通ですし、市場を世界に広げて、CO2削減に貢献できたらいいなと思っております。

mySDG編集部:世界中にニーズがある商品ということで楽しみですね。桃田さん、本日は貴重なお話しをありがとうございました。

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8月1日より(一般販売開始予定)
https://marvin.co.jp
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・「コツカンエアロダクト上下セット」
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https://www.amazon.co.jp//dp/B09HCNF866/
・「コツカンエアロダクト上着用単品」
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https://www.amazon.co.jp/gp/product/B09HCPWW6N/


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