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妻が妹の夫と浮気をしたので妹と復讐を計画してみた①

自営業やフリーランスと言っても、やっぱり一人では限界がある。

だからこそ、最初はビジネスパートーナーとして、特に何も考えず、有能(ただし異性)だった妻とはビジネスとしての割り切った関係だったはずが……情が移った、という、元々妻は営業も上手で、おまけにルックスも良かったこともあり、私の方がいつの間にか惚れていた、という感じだった。最初は何気ない仕事のあとの打ち上げ、打ち合わせとしてカフェに二人で出かけるということもあったが、妻もその辺りは薄々感づいていたのだろう。半年も過ぎた頃には告白して、一年半が経つ頃にはプロポーズ、そして結婚。

ここまで読んでいただくと、なんだか人生トントン拍子のように見えると思います。自分は割と幼い頃から貧しく、苦労の連続で生きてきたので、どちらかと言えばやっと報われたのかな、胸を張っていいのかな、と思っていました。人並みの幸せ、感じてもいいんだ、と……

ちなみに、仕事内容はちょっと特殊なので、あまり特定されると困るので詳細は書けないが、割と人とよく接する仕事だ。そのため、人間関係を保つ為に自分も妻も長期ではあまり出張は無いものの、お互いに月に1、2は数泊の出張がある。ただ、夫婦仲はそれなりに良かったし、家事の分担もお互いにしてた。そのうち人を雇えるようになったら子供を作ろう、なんて幸せな未来の相談も、お互いに笑いながら、少し照れながらしてたものだったんだが……いつからだろうか、徐々に徐々に仲が険悪になっていった。原因は最初、さっぱりわからなかった。とにかく、なんか妻がツンとしてるように感じる? という、気の所為レベルから始まって、徐々に家事が手抜きになり、態度が悪くなっていった。それはもう、目に見えて険悪なムードに。

自分としては理由がさっぱりわからない。特にいつもと変わらないつもりだったし、家事の分担、内容だって特におろそかにしたつもりもない。ただ、とにかく妻の態度が日に日に変わっていくのだけが負担になって、自分としては胃に穴が空く思い、マイルドな地獄、という感じで、仕事にも徐々に身が入らなくなっていった。そしてある日のこと、ついに妻が思いを決したようにこんなことを言ってきた。

「ねえ、私に隠し事あるでしょ」

「え?」

「とぼけるの? 浮気してるでしょ?」

「浮気!?」

本当にびっくりした。全く、これっぽっちもそんなことはしていない。濡れ衣もいいところだ。自分の予定は妻も知っているはずなので、浮気をするような暇も余裕も無いことは知っているはずなのだが、工夫すれば可能だとか、お客との時間調整や余暇を上手く利用してる。まだ決定的な証拠は掴んでいないが、今からでも反省して真面目にやって欲しい、とかくどくどネチネチと妻は溜まっていた何かを吐き出すように自分にぶつけてきた。

正直言って、頭の中が真っ白になった。妻を愛していたからこそ、本当に浮気なんて考えたこともなかった。だからこそ、一生懸命自分の何が悪いのか、自分なりにここのところ考えてきたつもりだった。なのに、まさか浮気を疑われているなんて、と。妻には興信所を使うなり、自分が潔白であることを知ってほしいと言ったが、興信所を使うようなお金はもったいないと言われ、とにかく反省してとまくしたてられた。

呆然としたけど、それでも仕事はしなきゃいけない。ただ、顔色が悪かったんだろう、取引先や仕入先からも、大丈夫ですか? 何かご病気ですか? と声をかけられる始末。こちらとしては、最近ちょっと仕事が増えていたので、大丈夫です。納期とかも問題ありませんと精一杯の空元気で答えるしかない。ただ、妻の機嫌は相変わらずのまま時間だけが過ぎて、状況は好転どころかゆっくりと悪化している。そこで、久しぶりに妹に会うことになった。妹は昔から少し大人びていて、自分がまだ中学校の時代、彼女のかの字も無かった頃から彼氏がいたりして、割と男子からモテモテ、友達からも妹を紹介してくれと言われるくらいの人気者だった。自分がモテないので悩んでいるときにも、服装や髪型から、総合的なアドバイスまでしてくれる、自分にとっては恋愛コンサルタントのような存在でもあった。そんな妹も結婚は自分より早く、二年ほど既婚者の先輩だ。そんな妹なら何かまた、的確なアドバイスをもらえるかも、と思ったら……

「兄さん、実は私の夫も浮気してるみたいなの」

「え、お前も?」

まさかのカウンターパンチを食らった。相談をしたいと思っていた相手から、まさかの浮気されている告白を受けるとは。そして、次の言葉でさらにまた頭の中が真っ白に、いや、混乱した。

「その浮気相手がね……兄さんの奥さん、お義姉さんかも知れないって私、疑ってる」

「えええええええええええ!?」

待ち合わせた喫茶店で思わず大声を出してしまい、妹にたしなめられてしまった。だが、それくらいびっくりするのも、無理はないことだろう。思わず何かのドッキリを疑って、周囲をきょろきょろと見渡したが、妹から「落ち着いて兄さん」と真剣な顔で言われて、やっと我に返ったほどだった。

妹は昔から頭も勘もいい、自分とは違って直感力と要領の良さという点では信頼できる部分がある。

とは言え、妹の夫と自分の妻が浮気をしている。そんな最悪の中の最悪、これっぽっちも考えなかったことを言われて、妹が言うならそうだろうと、簡単に納得することなんてできるはずがない。

「いやいやいや、証拠は無いんだろ? お前の直感はよく当たるのは事実だけど、さすがにそれは言い過ぎだ」

「兄さん、私も直感だけで兄さんの奥さんに失礼なことを言うほど馬鹿じゃないよ。私の夫のスマフォに入ってたトークアプリで、どう考えても男で取引先ってカテゴリとは思えないイチャイチャ会話をしてる人がいたの。それがお義姉さんの絵文字の使い方とか、文章の感じにそっくりなの」

「いや、それにしたって……」

「お義姉さんもそう、浮気してるからこそ、逆ギレして自分から目をそらそうとしてるの。バレてないけど、バレたらどうしようっていうプレッシャーで、兄さんにそんな風にわざと、浮気をしてるって当たり散らしてるんだと思う」

妻を疑うなんて、考えたことも無かった。ただ、妻の様子は確かにおかしい。隠し事をする人間は、焦って怒りっぽくなるというのは、自分も今までの経験上何度か見てきた。ただ、それを自分の妻が、というのは、単に自分が、いや、自分の妻に限ってはそれはあり得ない、という勝手な期待を寄せているに過ぎない。

「お前がそこまで言うなら、信じるよ。まだ確信は持てないけど」

「確信、つまり証拠がないって意味だよね」

「ああ、うちの妻はまだ浮気をしてるかどうかわからない。そっちはもう黒は確定なんだろうけど。どちらにしても妻には証拠が無い。お前みたいにスマフォを覗き見するってのも、正直言ってそれはやりたくない」

「でも証拠は必要、でしょ」

「そりゃまあ……」

「私達がいくら探偵ごっこをしたって、それだけじゃできることは限られてる。だからね兄さん、ごっこじゃなくて本物を使おうよ。費用は折半でどう?」

「本物、興信所か」

「そう。実はもうネットで調べて、目星は付けてあるの」

「…………」

「兄さん!」

自分は優柔不断で、情けない男なのかも知れない。それでも妻を信じたい、現実だったとしても目を逸したい。そう思っていた。けれども、妹の真っ直ぐな目は、こちらがいくら逸してもぐいぐいと迫ってくる。自分としても確かな証拠、妻が浮気をしていないという確信が欲しい、というのはあった。だから、首を縦に振ったのだ。

正直言って、興信所の費用というのは安くはない。10万円単位で金が掛かるので、確かに妹も一人で負担するのはきつかっただろう。ひょっとしたら妹の勘がはずれて、浮気相手がうちの妻と別人だったとしても、そこは責めたり返金を求めたりはしないでおこう。などと、当時の自分はのん気に構えていた。むしろ、カリカリしている妻との関係修復をどうしようか、どうすれば潔白を証明できるか、必死だったが、取り付く島もないとはまさにこのことだった。

逆に、妻に興信所を使って自分の調査をすればいいと提案したりもしたが、そんなものは頼まなくても分かってるし、そんな無駄なお金を使ってどうする? とか詰められてしまった。じゃあどうしたらいい? と質問したら、そんなことあなたが考えることでしょう? と言われ、考えても考えても、いいアイディアなど出てくるはずもない。食欲は落ち、不眠がちになり、取引先からはますます心配され、心療内科にも通うようになった。だが、妻はそんな自分を心配するどころか、自業自得だと言ってつんとした態度を変えることはない。

もはや八方塞がりという感じで、毎日が生きてる感じがしない。いつもふわふわとした感じがして、なんというか、魂と体が離れようとしているみたいな、そんなたとえしかできないくらい、色々と自分は追い詰められていた。だから、妹と折半で興信所を頼んだことなんて、頭からすっぽりと抜け落ちていた。そう、あの日のコール音が鳴るまでは

「兄さん、興信所の結果が出たよ」

「興信所……? ああ、ああ、そういえばそんなのもあったな……」

「私の言ったとおりだったよ。お義姉さんとうちのバカ夫は真っ黒」

「…………」

「兄さん?」

「なんだって……?」

「兄さんの奥さん、お義姉さんと、うちのバカ夫の関係は真っ黒だったって言ったの」

話をしていたのが、たまたま寝室だったのが良かった。気を失いこそしなかったものの、そのままベッドに倒れ込んでしまった。1分ほど返事ができないままで、妹にはかなり心配をさせてしまったが、そこからはなんとか意識が戻ってきた。

「それでね兄さん、興信所からたくさんの真っ黒の証拠をもらったから、報告と今後のことを話したいの。今週末は時間、取れる?」

「ああ、大丈夫だ」

「それじゃ、個室居酒屋の○○で夕方5時からでいい?」

「わかった」

「兄さん……気をしっかり持ってね。自殺とかしないで……お願い……」

「そんなことをするように感じたか?」

「うん……」

情けなくて涙が出てきた。妹にまで心配をかけて、自分は何をしているんだろう。とにかく週末までにコンディションを保とう。そう思い、その日は返事もしない妻に、体調が悪いので少し早めに寝ると伝えて、ベッドに入った。悪夢を見るかと思ったが、その日は意外にも泥のように眠ることができた。

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