読書記録ー医療現場の行動経済学 すれ違う医者と患者

みなさまこんにちは。今回も読書記録です。
​読んだのは、「医療現場の行動経済学 すれ違う医者と患者」

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<手に取ったきっかけ>
医療現場での労働に興味を持っているため、タイトルに興味を持ち購入することに。
大学時代に入っていた印南一路研究会では、私が入っていた「医療政策」以外に「(行動経済学の中の)意思決定論」もあり、医療と行動経済学というものに親和性を感じていたからという理由もあります。

<本の内容について>
全体的に海外文献含め、たくさんの論文をもとに執筆されている本なので、読み応えと納得感があります。
最初に会話が書かれていて具体的なシーン、そのあとにポイントのまとめ、さらに根拠を示した行動経済学での説明が書かれているという構成です。

※以下、amazonの概要説明より引用。

医者「なぜ患者さんは治療方針を決められないのか」
患者「なぜお医者さんは不安な気持ちをわかってくれないのか」
人間心理のクセがわかれば、溝は埋められる!

「ここまでやって来たのだから続けたい」
「まだ大丈夫だからこのままでいい」
「『がんが消えた』という広告があった」
「本人は延命治療を拒否しているが、家族としては延命治療をしてほしい」
「一度始めた人工呼吸管理はやめられない」
といった診療現場での会話例から、行動経済学的に患者とその家族、医療者の意思決定を分析。
医者と患者双方がよりよい意思決定をするうえで役立つ一冊!
シェアード・ディシジョン・メーキングに欠かせない必読の書。

「行動経済学では、人間の意思決定には、合理的な意思決定から系統的に逸脱する傾向、すなわちバイアスが存在すると想定している。そのため、同じ情報であっても、その表現の仕方次第で私たちの意思決定が違ってくることが知られている。医療者がそうした患者の意思決定のバイアスを知っていたならば、患者により合理的な意思決定をうまくさせることができるようになる。また、医療者自身にも様々な意思決定におけるバイアスがある。そうしたバイアスから逃れて、できるだけ合理的な意思決定ができるようにしたい。患者も行動経済学を知ることで、自分自身でよりよい意思決定ができるようになるだろう。」――「はじめに」より

<感想>​
大学時代に学んだ内容も出てきて、とても懐かしく感じる一冊でした。
また、日々の自分の行動ってこれに当てはまるのかも?などと考えながら読むのも楽しかったです。
何よりびっくりしたのは、大学時代にインターンをしていてお世話になっていた
キャンサースキャン​での取り組みの話が出てきたこと!
実際に関わっていたので、すごく懐かしいなぁ興味深いなぁと思いながら読むことができました。
具体的には後ほど記載します。

医療の行動経済学では「ナッジ」:行動経済学的な手段を用いて、選択の自由を確保しながら、金銭的なインセンティブを用いないで、行動変容を引き起こすこと
が重要。コミュニケーションをとるにしても、どう伝えるのかの設計によって、行動が変わってきます。
どのような行動経済学的なボトルネックがあるのかを考えて対策を講じることが大切になってきます。
例えば、カフェテリアで果物を目の高さにおいて果物の摂取を促進するなど。


【事例:がん検診を受けてもらうには】キャンサースキャン×八王子市の事例
私がインターンをしていた会社と自治体の事例。
日本はがん死亡率が高く、早期発見できれば治癒率も高くなるため、検診を受けてもらうことが重要になります。
しかし、がん検診の受診率は低いのが現状。そこでどうやって受診率を上げるのかというソーシャルマーケティングを行なったのが本事例。
がん検診の受診勧奨(がん検診のお知らせリーフレット)を人によって送り分けるという手法をとっています。
自分ごと化していない人には、恐怖を煽り自分もがんにかかるかもしれないと思ってもらうような内容。
受けようと思っているけれど、時間を作れないという人にはシンプルに受診までの手順を書いた内容。
怖がっている人には、がん検診を早く受けて早く見つけられたらどれだけ治るのかを示し、安心させるような内容。
また、八王子市では大腸ガンの検診キットを事前送付しています。
キットを取りに行かなくても自宅に送付されてくることで受診率が上がります。


【事例:子宮頸がんワクチンの接種】
子宮頸がんのワクチン接種により、ショック症状を起こした少女について報道されたことが記憶にある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実際にはワクチン接種によるリスクは0.007%、接種によってがん罹患のリスクは60%減らすことができます。
そのため、99%以上はリスクがないというメッセージをすることで接種するという行動を後押しできます。
この数字を見れば、ワクチンを接種することが推奨されるのは一目瞭然なのですが、
ワクチン接種によるリスクの報道が過剰にされて恐怖が煽られたことにより、「0.007%の中に入ったらどうしよう」、「40%は効果がないのならやらなくて良い」という判断をする人がまだまだ多いのです。

今回事例は2つしかあげられなかったのですが、延命治療の選択や臓器提供の意思決定など、どういう結果に導きたいか後悔のない選択をさせるにはどのようなコミュニケーション設計をすれば良いかということが沢山書かれており、非常に勉強になりました。

日々の生活も選択の連続かと思います。1つ1つの選択を後悔のないようにするにはどうすれば良いか?気になる方はぜひ本書を読んでみてください。

最後までブログを読んでいただきありがとうございました!

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