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読書日記・「共領域」からの新・戦略

今日は『「共領域」からの新・戦略 イノベーションは社会実装で結実する」を読んだ感想と、記載している内容について心に刺さったところをメモしていきたいと思います。

この本を手に取った理由

帯に、「バックキャスティング×共領域」で日本の閉塞を打破するという文言が書かれており、この両軸のキーワードに惹かれました。もともと未来志向のところもあり、課題解決型より提案型のほうが企画を立ち上げる時に自分らしいと思っているため、「バックキャスティング」という言葉がどのように社会実装と絡んでいくのか知りたいと思いました。また、仕事柄、所属企業以外との「共創」はよくやっているのですが、「共領域」という言葉は初めてだったので、何が違うんだろう?というところに興味を持ちました。

読んだ感想

久しぶりに役に立つ、自分がやりたいことにマッチしている本に出会えたという感覚でした。タイトルは難しそうですが、本文を丁寧に読めばそこまで難しくなく、自身の会社でやりたいことと重ね合わせながら読み進めることができました。会社で新規事業部や、商品企画部にいる人や、研究職系でなかなか自身の研究を商品化できないと悩んで企画チームとディスカッションをしている人(意外と多いんですよね)におすすめの本です。一般企業に勤めている人でも十分読む価値があると思います。

本の内容で学んだこと

①共領域という概念(三菱総研さんが打ち出したコンセプト)は、日本のイノベーションの社会実装にとてもあっているという点
…日本は軸となっている行政も縦割りで、古くからある大手企業も軒並み縦割りのためそれを打破する仕組みが必要、フリーランスや個人起業家が増えており企業の単位が小さくなってきている、それなのになんだかんだで「個」が弱い国民性(やりたいことがなかなか口に出せないとか)。この3つの理由から日本には「共領域」という概念がマッチするんだなと解釈しました。

※共領域:多様な人や組織の「つながり」によって価値を創出する。
 コンソーシアムに近いんですかね。ただ、いろんなコンソーシアムに入って思うのは結局それを取り仕切っている会社への利害がチラついたり、自社のため感が出てしまっているものが多いので、企業における「共創」のためのコンソーシアムとはその辺が違うのかなと理解しています。

②日本が弱いのは「実装力」であるという点
…技術起点の発想が多い日本において、なかなか「実装」が進まない理由とそれの改善ポイントが記載されています。実際、私は今の会社にいて、技術系の会社から「技術はあるのだけど、エンドユーザーにどのような形でこの技術を届けたらいいかわからない」「生活に近い実験場がなくて、なかなか製品化できない」という悩みを相談されることがあります。せっかくいい技術なのにもったいないなと思いながら話を聞いてましたが、そのもやもやが少し晴れました。日本は豊かになりすぎて身に迫るペインポイントがないため、いまやらなければならないという緊迫感がなく、実装の「リスク」面しか目に入ってこないようです。
これを踏まえて個人的には、だからこそ、未来志向の提案をしていく存在が必要(私がやりたいことは自己紹介noteに書いてあります)と思います。ニーズだけでなく、未来はこうなるから、だからいま、やらなければいけない・やる大きなチャンスなんだと誰かが提案をし続けることが必要なんではないかと改めて思いました。

③社会実装の要件
本書では、社会実装の要件に「放っておいたらつながらないヒト・コト・モノをつなぐ」ということ。それには社会実装をゴールとしたプログラム設計が必要だし、PJの開始前に解決を目指す社会課題や未来社会像を掲げたり、どのような共領域を作るべきかを丁寧に議論する必要があるとしています。
細かく7要件についての解説と、具体事例が記載されているので詳しくは本をお読みください。

本を読んだ自分なりの解釈

この本には、
・「共領域」という概念
・社会実装が日本でなかなか進まない理由と進めるための要件
・三菱総研さんの役割
が記載されていて、読み解かなければこの3本がすべて整わなければいけないのである、と読めてしまいます。(筆者の方々はそういってるのかもしれませんが)
しかし個人的には、共領域と社会実装は並列の関係ではなく、バラバラで議論されてもよいものととらえました。
・「共領域」という概念はもっと浸透すべきだし、個々のステークホルダーの規模が大小でるからこそ、共創(企業が、様々なステークホルダーと協働して共に新たな価値を創造する・消費者の意見を最初から最後まで取り入れる等様々な解釈がありますが)のように、主体的に行う人が何かを目的に他企業や消費者の意見を取り入れて創るという観点とはちょっと違うつながり方が必要なのだと思います。
共領域を作るのであれば、大きな社会課題やゴールに共感をできる人をゆるく集め、中期・短期で掲げる課題やゴールに対してのプロジェクトにアサインできるようにしておくような集合体をイメージし、作っていくのがよいのだろうと。これは社会実装の手段の一つであるという考え方なのだと思います。(なのですべてを共領域で行う必要もなければ共領域そのものが真に新しいことだとも思ってないです。)
・社会実装という点について、スピード感を高めるためには課題でつながるのではなくゴールでつながるほうがよいのではないかと感じました。課題から見えてくるゴールを決めるのに多くのステークホルダーを抱えていると時間を要します。ましてや間合いを気にする日本では特に。なので、共領域の中心にいる第三者的なひとが一定のゴールを掲げることで、明確にスピード感を持って推進できるのではないかと思いました。
あくまで個人的な見解ですが、本を読んだうえで自分であればこういう風に実践に持っていくなという感想です。

これから

バックキャスティング×共領域という概念自体は、とても体系的でわかりやすく、自身が行っている中山間地域の課題解決にも直結しそうなので、これからは静岡県藤枝市にある水車むらの事例をもとにこの概念を使って整理してみて、プロジェクトが「実装」されるのか、ほかの地域に展開できるのか、というところをトライアルしていきたいと思います!

読んだ本の詳細
タイトル:「共領域」からの新・戦略
編著:三菱総合研究所
出版:ダイヤモンド社


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