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toBスタートアップがオウンドメディアでできることとは?悩める40代ライターの現在地

これはM&Aクラウドアドベントカレンダー2022の16日目の記事です。

こんにちは! M&Aクラウドでライターをしているみょんと申します。オウンドメディア「UPDATE M&Aクラウド」の記事を中心に、広報系のライティングを担当しています。

私はいわゆるひとつのゴーストライターです。ですから、自分の仕事についてはあまり明かしたくない気持ちもあるのですが……今回のアドベントカレンダーの主目的は「M&Aクラウドの中の人を知っていただく」ことなので、ここは腹をくくって書いていこうと思います。

ちなみに、ゴーストとしては、CEO及川さんの背後に潜んでいることが多いですが、ときどき他のメンバーにも成りすましております。

私の2022年を振り返ると、及川さんのゴーストとしての外部メディアへの寄稿記事作成、「M&Aクラウド」サイト内での「PMIインタビュー」の作成などもありましたが、やはり一番大きなウェイトを占めていたのは、「UPDATE M&Aクラウド」用のコンテンツ作成です。

企業のオウンドメディアというと、おそらくtoCビジネスの企業の媒体を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか? toBビジネスの場合、オウンドメディアで何ができるのか、どんなふうに活用していくべきなのか――。「UPDATE M&Aクラウド」を立ち上げてから2年間、特にこの1年は、私も媒体づくりを楽しむ一方で、常に頭を悩ませてきました。おそらく、同じ立場で悩んでいる方は、他にもいらっしゃることと思います。

そこで今回は、toBオウンドメディアの活用法について、私なりに試行錯誤してきた1年の軌跡をご紹介します。

「M&Aクラウドのゴースト」ができるまで

「UPDATE M&Aクラウド」は、今現在はほぼ私一人で担当しています。そもそも「ライターが社員として所属しているって珍しいな」と思われた方もいらっしゃるでしょう。ライター職の人間が社員になった経緯から、簡単にご説明したいと思います。

私がM&Aクラウドにジョインしたのは2018年12月、マッチングプラットフォーム「M&Aクラウド」のローンチから7カ月後です。当時の私の役割は、「M&Aクラウド」の募集記事の取材と執筆でした。

アドベントカレンダー6日目を担当した岡道さん(2018年8月ジョイン)がジョイン当時の「M&Aクラウド」の掲載社数は20社程度と書いていましたが、私のジョイン当時も確かまだ50~60社。買い手がM&A戦略を公開するスタイル自体が新しかったこともあり、取材先に信頼してもらうためにも、「社員が取材に来ている」ことが重要な時期でした。

当時すでに取材が急増し始めており、私の入社時はインタビューの録音が積み上がっている状態。録音の山を崩しながら、取材に行き、原稿を書き、また取材に行き、外注ライターを開拓し……コロナで一時取材がほぼなくなった時期を経て、ある程度安定した記事制作体制ができたのは2020年後半だったと思います。

2021年に入り、社員数が急増していた中、カルチャーの浸透のためにも、また採用広報目的でも、オープン社内報をつくろうという話が起こりました。これを担ったのが、当時の経営企画本部にいたFさん、一人目人事としてジョインしたばかりの戸澤さん、そしてライターの私です。2021年1月末、現在の新宿御苑オフィスへの引っ越し話を載せて、「UPDATE M&Aクラウド」が立ち上がりました。

2021年10月末、当社はシリーズCの資金調達を発表します。このスタートアップにとって最大の広報チャンスを活かすべく、「UPDATE M&Aクラウド」では関連記事を6連発。経営陣3名の個人noteでもそれぞれの思いを発表し、ゴーストライターは大忙しでした。この時期、私は完全に「M&Aクラウド」募集記事作成を離れ、広報コンテンツの作成要員へと移行します。

■資金調達後6連発の締めくくり記事

調達ブースト広報」の次は、M&Aクラウド初のアドベントカレンダーやスタートアップメディア「ダイヤモンドシグナル」への寄稿にも挑戦し、バタバタと暮れた2021年。このころ社内で浮上したのが、「『M&Aクラウド』では資金調達の成約も増えている一方で、『M&Aクラウド』のことは知っていても、資金調達に使えるとは思っていない人が多い」という課題でした。これが最終的には、今年ローンチした新サービス「資金調達クラウド」へとつながるのですが、当時まず広報活動でフォローを試みる流れになります。

■2022年11月にローンチした「資金調達クラウド」

サービス広報って何?「UPDATE M&Aクラウド」の2022年

突如「サービス広報」に向き合うことになり、2022年の「UPDATE M&Aクラウド」は前年とはかなり異なるテイストへと変わっていきます。

前職まで社内報制作に携わってきた私には、立ち上げ当初の「オープン社内報」「採用広報」モードの「UPDATE M&Aクラウド」は馴染みやすいものでした。しかし、2022年の新たなお題である「サービス広報」とは? toBの中でもごく限られた人しかユーザーになり得ない「M&Aクラウド」に関して、Webの向こうの顔の見えない読者に何を伝えるべき? 私にとって悩みの1年のスタートです。

連載「注目のM&A」スタート

2022年1月から、連載企画「注目のM&A」(直近のM&Aや資金調達のニュースを取り上げた解説記事)も始めました。「何か連載をやりましょう」と言い出したのは私自身でしたが、こんなハードな企画で行く展開になるとは……正直「ヤブ蛇だったな」と思いました(笑)。入社前にスカウトを頂いた際、「金融領域には疎くて……」とビビっていた私にとって、毎月の「注目のM&A」の執筆はかなりヘビーでした。

■「注目のM&A」記事の一例

ただ、ここは年の功というべきか、私は前職の社内報制作時代に、「刷版(紙媒体の印刷工程で使われるもの。アルミ板の上に、特殊な薬剤が塗布されている)の製造技術に関する座談会」などという超マニアックな記事作成を担当したことなどもあり、「難解な話でも、根気よく調べていけば、いずれおぼろげに全貌が見えてくる」という経験則のようなものがありました。人間、何でも勉強すれば、それなりに身に付くものはある――私がこの1年で得た最大の学びかもしれません(笑)。

毎月、解説者と執筆者双方のエネルギーを削って作成された「注目のM&A」は、当社が目指す「スタートアップM&AといえばM&Aクラウド」のポジショニングにおいて、有効な一つの型になりました。3月の現MEDIX代表の塚本氏にフォーカスした記事は、ご本人がシェアくださったこともあり、約2,000PVを記録。5月分として書いたfreeeのM&A戦略を取り上げた記事は「ダイヤモンドシグナル」に掲載、8月のマッチングアプリ業界のM&Aを解説した記事は「マネー現代」と「Yahoo!」に転載されました。

外部メディアのパワーを借りてみての学び

「マネー現代」には「注目のM&A」記事の前半が掲載され、末尾には「UPDATE M&Aクラウド」へのリンクも貼っていただきました。「これは『UPDATE M&Aクラウド』のPV数も一気に上がるのでは⁉」と密かに盛り上がったものの……結果は期待外れ。記事のどのあたりで離脱した人が多かったかは分かりませんが、別サイトに飛んでまで続きを読もうと思う人は限られていたのです。PV数は「読まれた数」というより、単にページが「開かれた数」であることが身に沁みて分かりました。

その反面、既成メディアの持つパワーの大きさにも改めて気づかされました。自社noteである「UPDATE M&Aクラウド」上では、「注目のM&A」のPVは伸びた記事で2,000程度。一方、「マネー現代」と「Yahoo!」上の転載記事のPVは、ざっくり伺った限りで桁が違いました

実際、ほとんどの読者はマッチングアプリとM&Aという組み合わせに目を引かれただけで、筆者のことなど気にしていないでしょう。とはいえ、そこに多くの人の目に触れるチャンスがあることには違いありません。

もちろん、サービス広報の成果として一番分かりやすいのは、当社でいえば「M&Aクラウド」「資金調達クラウド」に流入するユーザーが増える(さらには成約数が増える)ことです。しかし、今の「UPDATE M&Aクラウド」の規模では、サービスサイトへの流入数は全体に少なすぎ、記事の特徴別の効果測定なども難しい状況です。

これがおそらく、toBのオウンドメディアの難しさの一つなのだと思います。toCのユーザーのように、気軽に「このサービス/商品、よさそうだな。買ってみるか」とはなかなかなりませんし、ましてM&Aのサービスともなれば「面白そうだな、試してみようかな」は、まずあり得ません。

①読者がちょうどM&Aに関心を持っている、②そのとき関心を持ってはいないが、将来、M&Aを検討しようと考えた際に、M&Aクラウドの名前を思い出してくれる――読者がサービスサイトにたどり着いてくれる道筋は、基本的にはこの2つだけです。

「それなら、いくら桁が違うとはいえ、既成メディアで会社経営者でもM&A担当者でもない人の目に触れたところで意味がないのでは?」という見方もできるでしょう。しかし、これに関しては「きっと長期的には効いてくるのでは?」と今の私は考えています。

たとえば、「M&Aクラウド」は「M&A版のリクナビ」をうたっていますが、「リクナビ」は日本人の誰もが知っています。「M&Aクラウド」も、(M&Aには縁のない人の間でも)「知っている」「聞いたことはある」という人がほとんどになれば、より選ばれやすいサービスになっているはず。そんな日が何年後に現実になるかは分かりませんが、今はコツコツと積み上げていく時期だと考えています。

toBオウンドメディアの役割とは?

では、オウンドメディアの役割とは? サービスサイトへの直接の流入効果も、長期目線の認知度獲得効果も高くないとすると、何のために続けるのか? これは「M&Aクラウドに何らかの関心を持っている人に『いい会社』『いいサービス』だと感じてもらう」ためだと、今の私は理解しています。

まず採用面では、当社からスカウトした方/自ら応募してきてくれた方に、社内の人やカルチャー、イベントなどに触れ、ジョイン後の日々をイメージしていただく。また、サービスのユーザー/潜在ユーザーにも、「M&Aクラウドは進化してるな」「こんな人たちがいる会社のサービスなら、使ってみたい/使い続けたい」と感じていただく。

「UPDATE M&Aクラウド」の立ち上げ当初、note proの運営事務局の方に、身近な人から同心円状に読者を広げていくようアドバイスいただきましたが、その意味が今になって分かってきました。M&Aクラウドが気になっている人に好きになってもらう、もしくは信頼してもらう。それが今の「UPDATE M&Aクラウド」のできることであり、果たすべき役割なのだと思います。

面白いことに、「UPDATE M&Aクラウド」では、外部メディアに転載された記事からの流入があまりなかった一方で、外部メディアではまず取り上げてもらえなさそうな(=関心のある読者層が限られ、PVが見込めなさそうな)記事がPVを伸ばしています。

「注目のM&A」のPV数でいえば、

1位「DeNA×IRIAM/DMM.com×ZIZAI
2位「アクセンチュア×ALBERT
3位「JMDC×リアルワールドデータ

「UPDATE M&Aクラウド」にたどり着いてくれる人=M&Aに大なり小なり関心を持っている人には、むしろマニアック気味な記事が受けるようです。マニアックという言葉が適切でないとすれば、他で読めない情報や視点が盛り込まれているところに、価値を感じていただいているのだと思います。

ということで、2023年は……外部メディアへの寄稿や転載のアプローチは続けていきます。そこで求められる「PVが取れる」記事づくりのノウハウについても、これからもっと学んでいく必要があると思っています。

と同時に、「UPDATE M&Aクラウド」では、会社やサービス、あるいはM&A業界により近い方たちに、M&Aクラウドの「らしさ」が詰まった、実のある記事をお届けしていくことを目指します。

2022年は悩み7割、学び3割くらいで蛇行運転してきた感覚ですが、2023年は徐々にでも悩みを卒業し、学びの割合を増やしていきたい。皆様、ぜひ今後のM&Aクラウドの発信コンテンツに、ご注目いただけますと幸いです!

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