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文芸サークル「Little Curly」 詠野万知子 イラスト:ムニャ(Innocent Forest) デザイン:古磯修平(Letter from Forest)

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文芸サークル「Little Curly」 詠野万知子 イラスト:ムニャ(Innocent Forest) デザイン:古磯修平(Letter from Forest)

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    これは、鳥篭に記憶を集める少女の物語。|Innocent Forest

    「Innocent Forest」 ========================= この森で人はひとつ記憶を失う。 これは、鳥篭に記憶を集める少女の物語。 あなたは、森に迷い込む。 何かを忘れるために森を歩いて、どこかを目指している。 なぜか、そこへ行けば望みが叶う気がしている。だから歩く。 一晩彷徨ったかもしれない。迷わずすぐに着いたかもしれない。 そこには、屋敷が建っている。誰からも忘れ去られたような、でも誰かに大事にされている古い家。 二階の窓に、住人の影があ

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      • 手紙を届ける人のこと|Letter from Forest 12

         親愛なるきみへ  お元気ですか。  相変わらず、ぼくは元気です。きみはどう?  今日の手紙は、久しぶりに再会したお客さんのことを書きます。きみも出会ったことがあるかもしれないね。  * * *  ぼくと彼がはじめて出会ったのは、春の初めの頃。  夕暮れどきに、彼自身も不思議そうな顔をしてやってきた。どうしてここへきたのか戸惑うような様子だったんだ。 「ごめんください。お手紙の配達です」  ぼく、びっくりしちゃって、 「お手紙?」って聞き返した。  そのひ

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        • リンゴとお日様の匂いのこと|Letter from Forest 11

           親愛なるきみへ  お元気ですか?  最近は、なにか身体を動かすことはありますか。  ぼくはこの前、思いっきり身体を動かして遊びました。ひとりだけでは、そういうことは滅多にないです。でも、遊ぶのが大好きな子がやってきてぼくを誘ってくれたの。  彼女は、金色の長い毛が綺麗な、とっても足の速い子だったんだ。  ***  その日は朝からリンゴのジャムを煮ていた。  リンゴは、先日ここへきたお客さんにたくさん分けてもらったもので、とっても美味しくて、いろいろな食べかたを

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          • 夜と琥珀とコーヒーのこと|Letter from Forest 10

             親愛なるきみへ  夜明け前にこの手紙を書き始めました。  このあいだ夜更かしをしてしまって、そのせいでたくさん眠っちゃって、最近は夜明け前に目が覚めます。もう何日かしたら、いつもの通りに朝に起きられそうかな。  きみはどう?   ちゃんと眠っていますか。  楽しい夢を見ているといいな。  さて、どうしてぼくが夜更かしをしたかって言うとね……  ***  ロシェは、大きなリュックを背負ってきた人。  山登りをした帰り道、迷子になって一晩迷って、朝を迎えてこの

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            大好きな絵のこと|Letter from Forest 09

             親愛なるきみへ  元気ですか?  ぼくは相変わらず元気です。風邪もひいてません。  きみには、最近なにか好きなものはありますか?   聞いてみたいな。  ぼくはまた好きなものができました。  素敵な絵をもらったの。  いま、目の前に飾ってあります。湖の絵です。  鉛筆だけで書かれているのに、水面の深い青が目に浮かぶんだ。触れたら水面が揺らいで、水の中に手が沈んでいきそう。きみにも見せてあげたいな。  この手紙に、絵をくれた人の話を書くね。  ***  

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            なくした言葉のこと|Letter from Forest 08

             親愛なるきみへ  お久しぶりです。お元気ですか。  ぼくは元気で過ごしています。  夏の森は忙しいです。  庭の草はすぐに伸び放題になってしまって、草刈りのための道具がどこにあったかも分からなくなってしまうくらい。  ハーブもいっぱいとれたから、これからのお茶の時間が楽しみ。  お茶を飲むとき、もしきみがここにいたらどんな話をするんだろうって時々考える。  話したいなって思ったことを、せっかくだから手紙に書きます。  このあいだ、森から歌が聞こえてきたんだ。  **

            手紙のこと|Letter from Forest 07

             親愛なるきみへ  お久しぶりです。元気だった?  ぼくは元気に過ごしていました。  庭はまだ雪が多くて、朝はじょうろに残った水が凍っていることもあります。少しずつふくらむつぼみが、もうすぐまた会えるよって知らせてくれてるみたいで、毎朝楽しみです。  今朝はいい天気。しばらく滞在していたお客さんが発っていきました。  どんなお客さんだと思う?  *  彼女は、脚に手紙をくくりつけていた。多分、自分でつけたんじゃなくて、誰かに任されていたんだ。彼女は旅の途中で、ここへ立

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            同居人のこと|Letter from Forest 06

             親愛なるきみへ  こんにちは。最近、風が冷たくなってきました。  今夜からはもう一枚毛布を増やして寝ようと思います。  寒い日になると、ぼくが思い出すのは、しばらく一緒に過ごした同居人のこと。  気難しくて、素直じゃなくて、無口で、小さくて暖かい子だったんだ。  きみにも、この手紙で紹介するね。  *  彼と出会ったのは、木の上だった。  高くのぼった木の上の、枝の分かれ目で立ち往生していたらしい。  困っているなら、助けてって言えばいいのに。じっとうずくまって、そ

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            占いのこと|Letter from Forest 05

            親愛なるきみへ  今日はきみに試してほしいテストがあるんだ。  では、問題。  きみは、深い森を歩いています。  やがてある屋敷に辿り着きました。  そこできみは鳥に出会います。  さて、鳥はどんな姿をしているでしょうか?  これはきみの運勢を知るための占いだよ。  答えは手紙の最後で。お楽しみに。  急に「なんだろう?」って思ったよね。  これは、この前出会った人の影響なんだ。  彼女の名前はマルグリット。  占いの内容を忘れたいって言っていた。  *  マルグリ

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            海の楽団のこと|Letter from Forest 04

             親愛なるきみへ  こんばんは。  今日は少し夜更かしをしています。  近頃日が長くなって、夜が短くなりました。  手紙を書くのは眠る前が多いです。  夜の空気は涼しくて、昼間とは別の世界みたいです。  今日は、海のことを考えています。  海ってどれくらい大きいんだろう。  きみは、海に行ったことはある? ***  今朝、海からきた鳥と出会った。  鳴き声は笛を吹いたみたい。  めずらしいお客さんだ。  足に水かきがあるから水辺の鳥だってわかったけど、  このあたりで見

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            夢に見ること|Letter from Forest 03

             親愛なるきみへ。  こんにちは。  最近、森では暖かい日が増えてきました。  冬のあいだ眠っていた動物たちも久しぶりに姿を見せて、訪れる鳥も増え、庭は賑やかです。  嬉しくて、眠っているのがもったいないくらい。  だから、最近のぼくはいつもより早起きです。  きみはどうですか?  朝、ゆっくり過ごしていますか。  それとも、できるかぎり眠っていたい?  このあいだ森に来たのは、眠るのが好きな女の子でした。  その子は、森の木陰で眠っていた。  おおきなリュックサック

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            たまごサンドのこと|Letter from Forest 02

            親愛なるきみへ  こんにちは。また手紙を書こうと思いました。  何があったってわけじゃないんだけど…  美味しいものを食べたから、きみに伝えたくなったのかも。  一緒に食べられたらよかったんだけど、そういうわけにもいかないから。 ***  ぼくは、好物がひとつ増えました。  マシコートさんのたまごサンドです。  マシコートさんは、三人の子を育てたお母さん。今はみんな大きくなって、それぞれ学校に通っているから、マシコートさんはお昼ご飯を一人で食べていた。友達と食べる日

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            眼鏡をかけた鳥のこと|Letter from Forest

             親愛なるきみへ  手紙って、どうやって書いたらいいんだろう。  はじめてだから、何か間違ってないかなって少しだけ心配です。だけど、きみはきっと間違った手紙でも許してくれると思う。  だからなのかな。手紙を書こうって決めたとき、相手はきみだって思い浮かんだの。  元気ですか?  ぼくは元気です。  きみが元気ならいいなって思います。  毎日、そう思ってます。  手紙には近況を書くといいんだって。  最近の出来事。ぼくの身の回りのこと。  となると、書くことはひとつだけ。

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            Innocent Forest「灯の鳥」

             いつからこうして歩いていたのか、もうわからない。  夜が来る。日が落ちる。休む場所を探さなくては。  そう求めてからどれほどの時間が経っただろう。  あたりは暗く、あてどなく歩みを進めている。  目に触れるものはすべて木々。  空は見えなくなって久しく、生き物は気配だけが濃密に漂って、けれど決して姿を現さない。それが何者かに見張られている心地の悪さになってこの身にまとわりついている。  子供の頃に暗闇を怖がったような感覚を久しぶりに味わった。懐かしく、でも歓迎できない、原初

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