記事一覧
タモリが釣れたときの話【ショートショート】
あれは大学生の頃だった。
何年か振りに実家へ帰省した僕は、特にすることもなく暇をもて余していた。
家にいても退屈なので、久しぶりに昔遊んだ場所でも見に行こうとぶらぶら散歩をすることにした。
町中を歩くと色々な発見がある。
家族でたまに行っていたレストランが取り壊され駐車場になっていたり、逆に活気を失っていた商店街はあの手この手で活気を取り戻していたりもした。
商店街を通り抜けるとフワッと潮風が鼻腔
カタツムリと呼ばれた友人【ショートショート】
中学生の頃、僕には少し変わった巻野という友人がいた。
彼は家を背負っているのだ。
家というのは何かの比喩ではなく、正真正銘、彼の住む家だ。
学校へ行くときも、公園で遊ぶときも、修学旅行に行ったときだって背負いっぱなしだったのだ。
重くないのかと聞いたときも「自分の家だからね」と笑顔で返された。
そんな風貌だったこともあり、彼のことを「カタツムリ」と呼ぶ心ないクラスメイトもいた。
近くにいながら何も
あの夏にひとまわり成長した友達の話【ショートショート】
あれは僕が中学3年生だったころの夏だ。
そのくらいの年齢と言えばみな性に強い感心をもち、誰が早く大人になれるか、を競っていた時期だった。
そして、それは急に訪れるのだった。
「加藤が真希ちゃんと海に行ったらしい。」
真希ちゃんというのは、わが校のマドンナ的存在の子で、食べ物で例えるならGODIVAを擬人化したような子だ。一方、加藤はTHE普通、チョコバットのような男なのだが、そんな2人がデート