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月・帰路・Lost days -3-
拝啓
遠雷の下のあなたへ
こちらでは今、星が見えます。
見えると言っても、少しだけです。
街の灯りというのは、僕らが思うよりずっと明るいようです。僕の住む郊外の住宅街でさえ、目を凝らしてやっと星を数えられるほどです。
だんだん目が慣れて、5つ、6つと数えるうちに、黒い背景が一瞬、白く染まります。まるでリセットするように、カシャッと光って、僕はまた、星を数え直さなければなりません。
イヤホ
月・帰路・Lost days -2-
改札の向こうが眩しい。
瞼が重いのは、朝日が眼球を刺すからではない。
ぼやける視界に目を凝らす。黒い集団は僕に当たるスレスレで上手に避けて、光に背を向けて階段へ流れ込む。僕はただ一人、流れに逆らって光を目指す。
光の世界に到達したとき、青い風が頬をなでた。太陽は、真下に潜り込んでジャンプすれば手が届きそうな高さで左手にあった。
僕は立ち止まって、そして思いきり伸びをした。あくびもした。新芽